有給が20日残っているのに、消化する時間がありません。
「買い取ってもらえないか」と考える人がいます。
この記事でわかること
- 買い取りが原則できない理由
- 例外として認められる場合の範囲
- 退職直前は会社が「別の日にして」と言えないこと
- 使い切るための順番
結論:買い取りは、原則できません
まず理由から書きます。
東京労働局の回答に、こうあります。
原則として年休を買い上げることはできません。その理由は、もともとの年休の目的は、日ごろの業務からはなれて休むことであり、買い上げる代わりに休めなくなってしまっては、意味がないからです。

年休は「休むための制度」です。だから金銭で代えると、制度の目的そのものが果たされません。
労働局の説明はこう続きます。
労働基準法では、「有給休暇を与えなければならない」と規定されており、金銭を支給しても与えたことにはなりません。また、買上げの予約をして請求できる年次有給休暇日数を減らしたり、請求された日数を与えないことはできません。
「買い取るから休むな」は、はっきり禁止されています。

例外は、法定を超える分だけです
同じ説明に、但し書きがあります。
法を上回る日数の年次有給休暇についてはこの限りではありません。
会社が独自に上乗せしている分なら、買い上げても違反になりません。
だから「うちは買い取ってくれる」という会社が実在しても、矛盾ではありません。上乗せ分か、退職時の取り扱いである可能性があります。

退職日を過ぎたら、権利は消えます
ここを取り違えている人が多いところです。

年次有給休暇の請求権は、労働基準法115条により2年で時効にかかります。厚生労働省の年次有給休暇の説明にもそう書かれています。
ただし、これは在職中に持ち越せる期間の話です。
同じページに、こうあります。
労働者が会社を退職した場合、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅します。
「辞めてから2年は請求できる」ではありません。退職日で消えます。
だから在職中に使い切るしかない、という結論になります。

退職直前は、会社が「別の日に」と言えません
ここが実務でいちばん効く部分です。

労働基準法39条には、こう書かれています。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
この但し書きが、いわゆる時季変更権です。
「他の時季」が無ければ、使えません
条文をよく読んでください。「他の時季にこれを与えることができる」と書いてあります。
つまり、他の時季が存在することが前提です。
退職日が決まっていて、その直前に有給を請求した場合、会社には「他の時季」がありません。だから変更のしようがない、ということになります。
厚生労働省の説明でも、退職間近に残った年休を使い切りたい場合について、こうされています。
使用者は時季変更権を行使しえず、同年休取得を認めるほかありません
「忙しいから別の日にして」は、退職直前には通りません。

使い切るための順番
買い取りを期待するより、使い切る段取りを組むほうが確実です。

順番はこうなります。
| # | やること |
|---|---|
| ① | 残日数を確認する(給与明細か勤怠システム、分からなければ総務に聞く) |
| ② | 申出期限を確認する(就業規則。1か月前などと書かれている) |
| ③ | 退職日を、残日数から逆算して決める |
| ④ | 退職の意思を伝えるとき、日付を先に出す |
③がいちばん大事です。退職日を先に決めてしまうと、残った有給が入らなくなります。

付与日数は勤続年数で決まっています
自分が何日持っているか分からない人が多いので、載せておきます。
| 勤続年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
※所定労働日数が少ない場合は、比例付与といって日数が変わります。
前年の繰越がある場合は、これに足されます。6年半以上勤めていて繰越もあるなら、30日を超えていることもあります。
20日残っているなら、1か月動きます
有給20日は、土日を挟むとおおむね1か月になります。
だから「9月末に辞めたい」なら、最終出社は9月上旬です。ここを見落として退職日を決めると、有給が余ります。

引き継ぎとは両立します
「引き継ぎがあるから休めない」と言われることがあります。
引き継ぎは必要ですが、有給を消す理由にはなりません。日程を組み直せば両方できます。最終出社日までに引き継ぎを終える形にすれば、そのあとを消化に充てられます。
それでも使い切れないとき
日程がどうしても合わないこともあります。

その場合に確認できるのは、この2つです。
- 会社に買い取りの制度があるか(法定を超える分についてなら可能)
- 退職日を後ろにずらせるか(有給の消化期間を確保する)
どちらも会社の判断です。買い取りに応じる義務はありませんし、退職日の変更も交渉になります。

実務では、退職時に買い取る会社もあります
原則としてできない、と書きました。ただ現実には、退職時に残った分を精算する会社もあります。
これは、もう休ませることができない場面での取り扱いとして行われているものです。禁止されているのは「買い取るから休むな」という形で取得を妨げることであって、使い切れなかった分をどうするかは別の話という整理です。
ただし会社に応じる義務はありません。制度として就業規則に書かれていなければ、交渉になります。
期待して日程を組まないでください。買い取ってもらえる前提で退職日を決めると、断られたときに戻せません。
だから、そもそも余らせない組み方をするのがいちばん確実です。

よくある質問
- 残った有給を買い取ってもらえますか
-
原則としてできません。東京労働局の回答では、年休の目的は日ごろの業務からはなれて休むことであり、買い上げる代わりに休めなくなっては意味がないため、原則として買い上げはできないとされています。ただし法を上回る日数、つまり会社が独自に上乗せしている分については例外とされています。まず就業規則で、法定日数を超える付与があるかを確認してください。
- 「買い取るから休むな」と言われました
-
それははっきり禁止されています。労働局の説明では、買上げの予約をして請求できる年次有給休暇日数を減らしたり、請求された日数を与えないことはできないとされています。金銭を支給しても、有給休暇を与えたことにはなりません。言われた日付と内容をメモに残したうえで、改めて取得を申し出てください。
- 有給は2年で時効と聞きました。辞めてからでも使えますか
-
使えません。2年というのは在職中に持ち越せる期間の話です。厚生労働省の説明でも、労働者が会社を退職した場合、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅するとされています。辞めてから2年間請求できるという意味ではないので、在職中に使い切るしかありません。
- 退職前に有給を申請したら、別の日にしてと言われました
-
退職直前なら、その主張は通りにくいはずです。労働基準法39条の時季変更権は「他の時季にこれを与えることができる」という書き方になっていて、他の時季が存在することが前提だからです。退職日が決まっていれば、会社に他の時季はありません。厚生労働省の説明でも、退職間近の場合は使用者は時季変更権を行使しえないとされています。
- 引き継ぎがあるから休めないと言われました
-
引き継ぎ自体は必要ですが、有給を消す理由にはなりません。最終出社日までに引き継ぎを終える形で日程を組めば、両方できます。逆に言えば、引き継ぎの期間も含めて逆算する必要があるので、退職日を決める前に残日数を確認しておいてください。
- 何日残っているか分かりません
-
給与明細か勤怠システムに表示されていることが多いです。載っていない場合は総務に聞いてください。付与日数は勤続年数によって決まっていて、6か月継続勤務で10日、そこから1年ごとに増えていきます。前年からの繰越があれば、それも足された日数になります。
- 退職日を決めてから有給が余ることに気づきました
-
退職日を後ろにずらせないか交渉することになります。ただし一度伝えた日付を動かすのは、伝える前に決めるより難しくなります。だから順番としては、残日数を確認してから退職日を決めるのが正解です。すでに伝えたあとなら、最終出社日と退職日を分ける形で調整できないか聞いてみてください。
- パートやアルバイトでも有給はありますか
-
あります。年次有給休暇は雇用形態で区別されません。所定労働日数が少ない場合は比例付与という形で日数が変わりますが、条件を満たせば付与されます。買い取りの扱いも同じで、原則としてできません。
まとめ:買い取りより、使い切る段取りです
残った有給の扱いを整理します。
- 買い取りは原則できない。年休の目的は休むことだから
- 例外は、法を上回る日数の分だけ
- 退職日をもって権利は消滅する。2年の時効は在職中の話
- 退職直前は、会社は時季変更権を使えない。「他の時季」が存在しないから
だから、余らせない組み方をするのがいちばん確実です。
残日数を確認し、申出期限を確認し、そこから退職日を逆算します。この順番を変えないでください。退職日を先に決めると、有給が入らなくなります。

