「来月からもういいです」と、前日に言われた。
6か月以上の契約なら、30日前の予告が要ります。
この記事でわかること
- 発注側に課された義務
- 報酬の支払期日のルール
- 禁止されている7つの行為
- 契約期間で変わる適用範囲
結論:2024年11月から、発注側に義務があります
法律の名前から確認します。

正式には特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)といいます。2024年11月1日に施行されました。
守られる側が「特定受託事業者」、義務を負う側が「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」です。従業員を使わずに働く個人が、前者にあたります。
まず3条が、契約内容の明示を義務づけています。
業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(中略)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
「直ちに」です。口約束で始めて条件が後から動く、という形を封じています。


報酬は、受領日から60日以内です
支払いの期限が決まりました。

4条1項です。
報酬の支払期日は、(中略)特定受託事業者の給付を受領した日(中略)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
検査をするかどうかは関係ありません。条文は「検査をするかどうかを問わず」と書いています。「確認が終わってから」という理由で60日を超えることはできません。
期日を決めなかった場合も、放置にはなりません。
| 状況 | 支払期日とみなされる日 |
|---|---|
| 支払期日を定めなかった | 給付を受領した日 |
| 60日を超える期日を定めた | 受領日から60日を経過する日 |
再委託の場合は別のルールです。元の委託者から受けた仕事を再委託したとき、その報酬の支払期日は元委託支払期日から30日以内になります(4条3項)。ただし再委託である旨などを明示した場合に限られます。


禁止されている行為が7つあります
ここが実務で効きます。

5条1項が5つ、2項が2つを挙げています。対象は1か月以上の継続的な業務委託です(施行令1条)。
1項の5つは、はっきり「してはならない」と書かれています。
| # | 禁止される行為 |
|---|---|
| ① | 責めに帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒む |
| ② | 責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずる |
| ③ | 責めに帰すべき事由がないのに、受領後に物を引き取らせる(返品) |
| ④ | 通常支払われる対価に比し著しく低い報酬を不当に定める(買いたたき) |
| ⑤ | 正当な理由なく、自己の指定する物を強制して購入させ、または役務を強制して利用させる |
2項の2つは、「特定受託事業者の利益を不当に害してはならない」という形です。自己のために金銭・役務その他の経済上の利益を提供させること、責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させたり受領後にやり直させること。
④の買いたたきは、金額の交渉と区別がつきにくい部分です。条文は「同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い」としているので、相場との差が判断の材料になります。


6か月以上なら、解除は30日前の予告が要ります
いちばん大きい保護がこれです。

16条1項です。
特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、(中略)少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。
更新しない場合も含みます。「期間満了だから」という理由で、前日に打ち切ることはできません。
ここでいう「継続的業務委託」は、6か月以上のものです(施行令3条)。5条の禁止行為が1か月以上だったのに対し、こちらは長めに設定されています。
| 契約の期間 | かかる規定 |
|---|---|
| すべての業務委託 | 契約内容の明示(3条)、支払期日(4条)、ハラスメント対策(14条) |
| 1か月以上 | 5つの禁止行為+2つの不当行為(5条) |
| 6か月以上 | 育児介護等への配慮(13条)、解除の30日前予告(16条) |
そして16条2項は、予告された側が請求すれば、解除の理由を開示しなければならないとしています。予告された日から契約が満了する日までの間に請求した場合です。

災害その他やむを得ない事由により予告が困難な場合などは例外になりますが、それは厚生労働省令で定める場合に限られます。


ハラスメントと、育児介護への配慮
働く環境についての定めもあります。
14条1項は、発注側に相談体制の整備その他の必要な措置を義務づけています。対象は3つです。
- 性的な言動への対応により業務委託の条件について不利益を与えること、または性的な言動により就業環境を害すること
- 妊娠・出産に関する言動により就業環境を害すること
- 取引上の優越的な関係を背景とした言動であって、業務の遂行上必要かつ相当な範囲を超えたものにより就業環境を害すること
そして2項が重要です。相談したことを理由に、契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。
13条は育児介護等への配慮です。6か月以上の継続的業務委託なら、申出に応じて必要な配慮をする義務(1項)。それ未満なら努力義務(2項)になります。
どちらも「申出に応じて」です。言わなければ始まりません。


よくある質問
- フリーランス新法はいつから適用されますか
-
2024年11月1日に施行されました。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)です。
守られるのは「特定受託事業者」で、従業員を使わずに働く個人などが該当します。義務を負うのは発注する側の「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」です。契約の名前が業務委託でも請負でも、実態で判断されます。
- 報酬の支払いはいつまでにされますか
-
給付を受領した日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内です(4条1項)。条文は「検査をするかどうかを問わず」としているので、確認作業を理由に60日を超えることはできません。
支払期日を定めなかった場合は受領日が、60日を超える期日を定めた場合は受領日から60日を経過する日が、それぞれ支払期日とみなされます(同2項)。再委託の場合は、元委託支払期日から30日以内です(同3項)。
- 報酬を減らされました
-
1か月以上の継続的な業務委託であれば、5条1項2号が禁止しています。「特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること」と書かれています。
こちらに落ち度がないのに減額されたなら、この条文に当たります。まず契約内容を明示した書面と、実際に納めたものの記録を残してください。3条により、発注側は給付の内容・報酬の額・支払期日を明示する義務があります。
- 前日に契約を切られました
-
6か月以上の継続的業務委託であれば、16条1項により少なくとも30日前までの予告が必要です。契約期間の満了後に更新しない場合も含まれます。
さらに16条2項により、予告された日から契約が満了する日までの間に請求すれば、解除の理由の開示を求められます。災害その他やむを得ない事由がある場合などは例外ですが、それは厚生労働省令で定める場合に限られます。
- 相場よりかなり安い金額を提示されました
-
買いたたきに当たる可能性があります。5条1項4号が「同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること」を禁止しています。
ただし判断の基準は「通常支払われる対価」との差です。単に希望より安いというだけでは当たりません。同種の仕事の相場が分かる資料を集めておくと、交渉の材料になります。対象は1か月以上の継続的な業務委託です。
- 発注元から嫌がらせを受けています
-
14条1項が、発注側に相談体制の整備その他の必要な措置を義務づけています。対象には、取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務の遂行上必要かつ相当な範囲を超えたものによる就業環境の侵害が含まれます。
そして同2項が、相談したことや調査に協力して事実を述べたことを理由として、契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。相談したこと自体を理由に切られる形は、この条文に反します。
- 育児や介護と両立したいのですが
-
6か月以上の継続的業務委託であれば、13条1項により、発注側は申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。妊娠、出産、育児、介護が対象です。
6か月未満の業務委託については、同2項の努力義務になります。どちらも「申出に応じて」という条文なので、こちらから伝えないと始まりません。伝えた内容と日付を記録に残しておいてください。
- 契約書がありません
-
3条1項が、業務委託をした場合は直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日その他の事項を書面または電磁的方法で明示しなければならないと定めています。
メールやチャットでの明示も電磁的方法に当たりますが、同2項により、書面の交付を求めればそれに応じる義務があります(規則で定める例外を除く)。やり取りが口頭だけなら、まず明示を求めてください。あとで条件が食い違ったときの出発点になります。
まとめ:期間で、かかる規定が変わります
整理します。
- 契約内容の明示は直ちに(3条)。すべての業務委託が対象
- 報酬は受領日から60日以内。再委託は元委託支払期日から30日以内(4条)
- 1か月以上なら、受領拒否・減額・返品・買いたたき・購入強制が禁止(5条)
- 6か月以上なら、解除は30日前の予告が必要。更新しない場合も含む(16条)
- 相談したことを理由とする解除や不利益な取扱いは禁止(14条2項)
まず自分の契約が何か月のものかを確かめてください。1か月と6か月が、かかる規定の分かれ目です。


