「このまま運送を続けるのか」で止まっている人に、先に事実をひとつ置いておきます。
私がいた現場から辞めていった人たちは、以前もお伝えしましたが、別の業界へは、あまり出ていきませんでした。 あくまで私が見た範囲の話です。
この記事でわかること
- 1個あたりの単価と、1日の個数から見た実際の報酬
- 軽自動車税は営業用のほうが安いこと
- 初期費用でいちばん大きいのは車両。借りる形や、立て替えてもらって返す形もあること
- 自分で買えば資産として残り、借りると何も残らないこと
- 駐車場代が毎月の固定費になること
- 手続きは許可ではなく届出だが、ナンバー代は別途かかること
- 契約が委託でも、実態によっては労働者と判断される事例があること
- 労災は原則対象外だが、特別加入という制度があること
- 個人では大手と直接契約できず、元請けの下に入る形になること
- 独立して合わなくても、失業保険の枠を残せる特例があること
結論:単純に、稼げます
私がいた現場で委託になった人たちを見ていて、いちばんはっきりしているのはここです。独立して年収が上がった人のほうが多かった。
配達そのものは会社員のときと変わりません。夏の暑さも同じです。それでも収入が上がるのは、やった分がそのまま報酬になるからです。
| 1日の個数 | 1日の報酬(単価150〜200円) |
|---|---|
| 100個 | 15,000〜20,000円 |
| 200個 | 30,000〜40,000円 |
| 300個 | 45,000〜60,000円 |
繁忙期に300個を毎日こなす人もいました。月収100万円は、狙いやすい部類の仕事です。
始めると決めているなら、先に保険の見積もりだけ取っておいてください。 どの形で車両を用意しても、軽貨物専用の任意保険は必ず要ります。金額が分からないと、収支の計算が最後まで詰められません。
そして、進路は大きく4つに分かれます。

| 進路 | 実際 |
|---|---|
| ① 委託になる | 個人事業主として、運送会社から1個いくらで受ける |
| ② 部署異動で内勤 | 体力の問題だけの人。ただし給料は落ちます |
| ③ 運送会社を立ち上げる | 融資と設備が要ります。ただし人を雇えます |
| ④ 別業界へ | 私の周りでは、あまり見ませんでした |
4つの全体像は運送業界を辞めたいにまとめました。この記事では①だけを掘ります。
先に、いちばん引っかかる不安から消します
「独立して合わなかったら、失業保険はどうなるのか」。ここで止まる人がいます。
消えません。 ハローワークに特例があります。
離職日の翌日以後に事業を開始等した方(事業を開始した方・事業に専念し始めた方・事業の準備に専念し始めた方)が事業を行っている期間等は、下記の要件を満たす場合、最大3年間受給期間に算入しない特例を申請できます。
事業をやっている期間は、受給期間のカウントから外せるという意味です。合わなかったときに、失業保険の枠が残っています。
ただし申請期限は、事業を開始した日などの翌日から2か月以内です。開業してから走り出すと、あっという間に過ぎます。自分の受給日数と金額を先に知っておくと、この判断が早くなります。日本退職サポートセンターなら、受給額の診断を費用なしで受けられます。
条件は他にもあります。
| 内容 | |
|---|---|
| 事業の実施期間 | 30日以上であること |
| 対象 | 離職日の翌日以後に開始した事業であること |
| 除外 | 就業手当・再就職手当を受けていないこと |
| 申請期限 | 事業を開始した日などの翌日から2か月以内 |

0→1が早いのは、集客をしなくていいからです
独立でいちばん時間がかかるのは、たいてい客を見つけるところです。委託には、そこがありません。

| 独立の形 | 最初の1円までに立ちはだかるもの |
|---|---|
| 委託ドライバー | 受け入れ先との契約だけ。1個配れば売上が立ちます |
| YouTube | 収益化の条件を満たすまで1円になりません。届くかどうかも読めません |
| SNS | 同じく。フォロワーが集まるかは出してみないと分かりません |
| ブログ・アフィリエイト | 検索に評価されるまで数か月。0円のまま終わることもあります |
| 飲食店 | 物件・内装・保健所の営業許可。初期投資が数百万円 |
| キッチンカー | 車両と改造と営業許可。飲食より安くても数百万円 |
| 物販・せどり | 仕入れ資金と在庫リスク。売れるかは出してみるまで不明 |
| Web制作・デザイン | 技術の習得に数か月から年単位。そのうえで案件を取る営業が要ります |
| コンサル・講師 | 実績と集客が前提。実績がないと始まりません |

違いは2つです
① 客を自分で探さなくていい
上のほとんどは、客が来るかどうかが最大の未知数です。作ったあとに「誰か来てくれるか」を待ちます。
委託は元請けが客を持っています。「個人では大手と直接契約できない」という制約は、裏返すと「集客をしなくていい」ということです。
② やることが最初から決まっています
他は「何をすれば売れるのか」を探す期間があります。何を撮るか、何を書くか、何を仕入れるか。正解が分からないまま時間が過ぎます。
委託は決まっています。荷物を配る。1個配れば売上です。
| 流れ | |
|---|---|
| 多くの独立 | 何が売れるか分からない → 試す → 客が来るか分からない → 待つ |
| 委託 | 契約する → 配る → 売上 |
そのうえで、「誰でも」には条件がひとつあります。受け入れ先が決まることです。 ここが埋まらないと始まりません。だから記事の後半で、どこの下に入るかで条件が全部変わるという話をします。
そしてもうひとつ、在職中のままでは面談も契約も進めにくいという現実があります。運送は人手が足りないので、辞めると言った時点で引き延ばされます。伝える工程だけなら外に出せるので、準備と並行して進められます。
月にいくら残るのか
冒頭の額は売上です。手元にいくら残るかは、経費を引いた後で見ます。

1日100個・単価175円・月25日で計算してみます。
| 売上 | 175円 × 100個 × 25日 = 437,500円 |
| 駐車場 | 自宅にあれば0円。借りるなら地域差が大きい |
| ガソリン | 月25〜50L |
| 任意保険 | 軽貨物専用 |
| 軽自動車税 | 年3,800円(月あたり約320円) |
| 車検・整備の積立 | 走る距離が多いぶん、消耗も早い |
駐車場が自宅にあるかどうかで、残る額がいちばん変わります。 そこさえ埋まっていれば、月の経費は数万円の世界です。
そして200個の日を作れば売上は倍になりますが、経費はそこまで倍になりません。 車も保険も駐車場も同じ1台分だからです。個数を増やすほど、手元に残る比率が上がります。
ただし誰でも毎日300個運べるわけではありません。ここから先は、条件の話になります。
会社によっては、個数に制限があります
「たくさん運べば運ぶだけ」という単純な話にはならない場合があります。運送会社によっては、1人あたりの個数に上限を置いているところがあります。
配りたくても回してもらえない、という状況は実際にあります。契約する前に、ここは必ず聞いてください。上限があるかどうかで、月の見込みがまったく変わります。
エリアの広さで、同じ個数でも疲れ方が変わります
走行距離は1日あたり20〜40kmくらいでした。ただしこれは配達エリアの広さによります。
| 団地やマンションが密集したエリア | 走行距離は短い。台車で回れる |
| 戸建てが散らばったエリア | 同じ個数でも走行距離が伸びる |
そして、持つエリアは運送会社によって全然変わります。 同じ「1個180円」でも、エリアが違えば1日の疲れ方が変わります。単価だけで比べると、後で合わなくなります。
比べるときに必要なのは、単価と個数だけではありません。経費を引いた後の数字です。そのうちいちばん読めないのが保険料なので、先に見積もりだけ取っておくと、会社ごとの条件を同じ土俵で比べられます。軽貨物専門で扱っているのが箱バン.com保険です。
初期費用でいちばん大きいのは、車両です
先に、始めるまでにかかるものを並べます。
| 車両 | いちばん大きい。中古から新車までピンキリです |
| ナンバープレート代 | 地域と関係団体で変わります |
| 任意保険(軽貨物専用) | 加入が必要です |
| 運輸支局への届出 | 届出そのものの手数料はかかりません |
車両の用意のしかたは、元請けによって違います
ここが分かれ目です。自分で買う以外の形もあります。
| 形 | 初期費用 | 辞めたとき | あとから効いてくること |
|---|---|---|---|
| 自分で用意する | 車両代がまるごと乗ります | 手元に残ります | 消えた金ではなく資産。売ることもできます |
| 元請けが貸してくれる | ほぼゼロ | 返します | 何も残りません |
| 元請けが買って、毎月返済 | ほぼゼロ | 返済が残ると面倒になります | 返済が終わるまで、その元請けから動きにくくなります |
「車両代が高い」は、そのまま損ではありません。 自分で買えば資産として残り、辞めるときに売れます。借りる形は初期費用がゼロでも、辞めたときに何も残りません。
3つ目は始めるハードルがいちばん低い形ですが、返済が残っている間は、条件が悪くても他へ移りにくくなります。 単価を下げられても、返済が終わるまでは我慢することになりがちです。
「初期費用ゼロ」という言葉だけで選ばず、それがどの形なのかを確認してください。
だから、契約前に聞く項目がもうひとつ増えます。
単価はいくらか
エリアはどこか
個数に上限はあるか
車両はどうなるか(自分で買う/借りる/立て替えてもらって返済) ← ここ
車両を自分で買う場合は、箱バン.comのようにビジネス用の箱バンを専門に扱う業者もあります。中古なら、走行距離と車検の残りで金額が大きく変わります。
そしてどの形を選んでも、任意保険だけは自分で入り直します。 借りている車でも、立て替えてもらった車でも、仕事で使う以上は軽貨物専用の保険が要ります。ここは元請けが用意してくれるとは限らないので、契約前に見積もりを取っておいてください。
走り出したあとの経費は、軽い部類です
車両さえ用意できれば、そこから先の固定費は思ったより軽くなります。
税金はむしろ下がります
意外に思われるところです。黒ナンバー(営業用)にすると、軽自動車税は自家用より安くなります。
| 四輪以上・貨物用(660cc以下)の年税額 | 初度検査 平成27年4月以後 |
|---|---|
| 営業用(黒ナンバー) | 3,800円 |
| 自家用(黄ナンバー) | 5,000円 |
出典は軽自動車税について(横浜市)です。金額は自治体の案内で確認できます。
ガソリンも、走行距離から計算できます
1日20〜40kmで月に25日走れば、月500〜1,000kmです。軽自動車の燃費を20km/Lとすれば、月25〜50Lという計算になります。長距離のトラックとは桁が違います。
毎月かかるものを、並べておきます
見落とされやすいのが駐車場です。自宅に駐車場がなければ、毎月そのまま固定費になります。
| 駐車場代 | 地域差がいちばん大きい部分。都市部と地方で桁が変わります |
| ガソリン | 月25〜50L程度 |
| 任意保険 | 軽貨物専用。月払いか年払い |
| 車両の返済 | 元請けに立て替えてもらった場合 |
| 軽自動車税 | 年3,800円(月あたり約320円) |
| 車検・整備 | 走る距離が多いぶん、消耗も早くなります |
売上から引くのは、この合計です。 1日15,000円で月25日なら375,000円ですが、ここから上の全部が引かれます。自宅に駐車場があるかどうかだけで、手元に残る額が変わります。
ただし、保険だけは入り直しになります
ここが唯一、見落とすと痛い部分です。
黒ナンバーは自家用と扱いが違うので、自家用の任意保険のままでは仕事中の事故が対象外になります。 国土交通省のハンドブックにも、貨物の運送に関する損害賠償に対応できる任意保険等(軽貨物事業専用)に加入するよう書かれています。
軽貨物専門で扱っているのが箱バン.com保険です。始めると決める前に、見積もりだけ取っておいてください。 保険料が分からないままだと、収支の計算ができません。

始めるだけなら、思っているより早く終わります。 止まるのは、いまの会社を辞めるところです。
手続きは、許可ではなく届出です
参入のハードルという意味では軽い部類です。ただし「無料で始められる」わけではありません。

| やること | |
|---|---|
| ① | 運輸支局に「貨物軽自動車運送事業経営届出書」を出す |
| ② | 併せて運賃料金設定届出書・運賃料金表・事業用自動車等連絡書・車検証を提出 |
| ③ | 発行された連絡票を持って、軽自動車検査協会で黒ナンバーの交付を受ける |
書類はどれも正・控の2部が要ります。詳しい様式は貨物軽自動車運送事業 申請書様式(国土交通省)にあります。
届出を出しただけでは走れません
黒ナンバーの交付を受けて、はじめて事業用として使えます。 そしてここには費用がかかります。
軽自動車検査協会の案内です。
ナンバープレート代、関係団体での諸手続きにおける費用が必要となります。詳しくは当協会事務所・支所近隣の関係団体にお問い合わせください。
金額は地域と関係団体で変わるので、一律の額は公表されていません。 事務所の近隣に確認する形になります。
なお事業用は希望ナンバーの対象外です。番号は選べませんし、字光式にもできません。
出典は番号変更(ナンバープレートの番号変更)|軽自動車検査協会です。
始めたあとに、守るものがあります
届出が軽いぶん、走り出してからのルールは決まっています。
| 内容 | |
|---|---|
| 積載 | 軽乗用車で運転者だけが乗る場合は165kgまで |
| 乗務前 | アルコールチェッカーで酒気帯びの有無、疾病・疲労、車両の点検を確認して記録する |
| 表示 | 車両に名称・氏名または記号を見やすく表示する |
出典は貨物軽自動車運送事業者ハンドブック(国土交通省 東京運輸支局)です。
ここが唯一のデメリットです。 先に知っておけば、備えられます。

会社員でなくなると、こう変わります
いちばん見落とされるのがここです。売上が上がっても、手取りが同じという事態が起きます。
| 会社員 | 委託(個人事業主) | |
|---|---|---|
| 健康保険 | 会社と折半 | 国民健康保険。全額自己負担 |
| 年金 | 厚生年金を会社と折半 | 国民年金。月17,920円を全額自己負担 |
| 労災 | 自動的に対象 | 原則、対象外 |
| 雇用保険 | 対象 | 対象外。失業給付はありません |
| 税金 | 会社が年末調整 | 確定申告を自分でやります |
国民年金保険料は令和8年度で月17,920円です(日本年金機構)。これに国民健康保険が乗ります。厚生年金の折半分がなくなるぶん、月の固定費は確実に増えます。
単価と個数から出した売上で判断すると、ここで狂います。
労災だけは、入る方法があります
配達中に事故を起こしても、委託には労災がありません。 ここを知らないまま走っている人がいます。
ただし制度があります。貨物軽自動車運送事業を行う個人事業主は、労災保険に特別加入できます。
| 制度 | 労災保険の特別加入。労働者以外で、労働者に準じて保護すべき人が対象 |
| 対象 | 令和3年9月1日から貨物運送事業の範囲が拡大。令和6年11月1日からはフリーランスも対象 |
| 入り方 | 特別加入団体を通じて加入します。個人で直接は入れません |
出典は労災保険への特別加入(厚生労働省)です。
固定給がないうえに労災もない状態は、事故が一度でも起きると終わります。 始める前に、加入できる団体を探しておいてください。
そして労災とは別に、車両の任意保険も自家用のままでは使えません。 事故は「自分の体」と「荷物と相手」の両方に起きます。片方だけ備えても意味がないので、両方そろえてから走り出してください。箱バン.com保険は軽貨物専門なので、この用途の見積もりが出せます。
「委託」でも、労働者と判断されることがあります
ここは、募集を見ているだけでは絶対に出てこない話です。
厚生労働省が、契約上は個人事業主とされていた配送員が「労働基準法上の労働者」に該当すると判断された事例を公表しています。
労働基準法上の「労働者」に該当するか否かは、契約の形式や名称にかかわらず、「労働者性の判断基準」に基づき、実態を勘案して総合的に判断されます。
実際の事例では、こう判断されています。
| 見られた点 | 実態 |
|---|---|
| 仕事を断れるか | アプリで割り当てられた荷物は配送を拒否できない |
| 指示があるか | 配送状況をアプリで把握され、随時連絡と指示が行われていた |
| 拘束性 | 1日12時間以内を前提に、1日の荷物量が定められていた |
| 代替性 | 契約書で第三者への再委託が禁止されていた |
| 報酬 | 日給制(18,000円)。労務対償性が強いと判断された |
結果は、労働基準法9条の労働者に該当する、というものでした。
これは読者にとって不利な話ではありません。 労働者と判断されれば、労災も最低賃金も適用されます。逆に言えば、「委託だから自由」と言われながら実態は指示だらけ、という契約に当たる可能性があるということです。
判断されるのは労働基準監督署です。事故や報酬の不払いで相談したときに、そこで判定されます。
なおいま在職中の人は、順番として先に会社を離れる必要があります。 契約の話を進めながら退職交渉も抱えると、どちらも中途半端になります。運送の現場で引き止めがどう起きるかは、運送業界を辞めたいで書きました。伝える工程だけなら外に出せます。
出典は貨物軽自動車運送事業の自動車運転者に係る労働者性の判断事例について(厚生労働省)です。
契約前なら聞けます。始めた後では変えられません。
消費税の扱いを、契約前に確認してください
2023年10月からインボイス制度が始まっています。委託ドライバーは直撃する側です。
売上1,000万円以下なら消費税の免税事業者でいられます。ただし免税事業者のままだと、元請けは仕入税額控除ができません。そこで「課税事業者になってほしい」あるいは「消費税分を単価から引く」と言われることがあります。
ここには線があります。公正取引委員会の見解です。
発注事業者が、免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上問題となるおそれがあります。
一方的な通告は問題になりえます。 公正取引委員会は、実際に注意を行った事例も公表しています。
契約前に、単価が税込なのか税別なのか、免税事業者のままで条件が変わるのかを、必ず確認してください。ここを曖昧にしたまま始めると、あとから単価が下がります。
なお辞めてすぐ開業しない場合は、失業保険を受けながら準備できます。 情報を集めてから開業届を出すという順番も取れます。何日分・いくら受け取れるかを先に知っておくと、準備に使える期間が見えます。
出典は免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A(公正取引委員会)です。
ここから先は、稼げる話ではありません。 ただ、知らずに始めると必ずつまずくところです。
いちばん大事な前提を書いておきます
ここを知らないまま準備を始める人がいます。
個人で大手の運送会社と直接契約することは、基本的にできません。
黒ナンバーを取れば大手から直接仕事がもらえる、という形にはなっていません。実際は、どこかの会社にぶら下がる形になります。 元請けの下に入って、そこから配達を回してもらう仕組みです。
| よくある誤解 | 独立したら大手と直接取引できる |
| 実際 | 元請けの下に入る。仕事量も単価もその会社次第 |
だから、どの会社の下に入るかで条件が決まります。 単価、エリア、個数の上限。この3つは会社ごとに違うので、複数の話を聞いてから決めてください。
きつさの正体は、肉体労働ではありませんでした
委託になった人を見ていて、いちばん不思議だったのはここです。
配達そのものは変わりません。夏の暑さも同じです。それなのに、表情が変わります。
理由を聞くと、出てくるのは3つでした。
| 縛られない | ルールだけ守れば、あとは自分の裁量 |
| 成果が見える | やった分がそのままお金で返ってくる |
| 覚えることがない | 基本は配達だけ |
同じ体を使って、同じ暑さの中にいて、それでも違います。つまり、消耗させていたのは仕事そのものではなく、会社の体制のほうでした。
この構造は運送業界を辞めたいと体を壊す前に辞めたいでも書いています。
やった分が返ってくる形が合うかどうか。 ここだけは先に決めておいてください。

向き不向きは、はっきりしています
ここまで条件と制度の話を並べてきましたが、それは全部、始める前に潰しておける項目です。潰せないのは、性格のほうです。
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| やった分が返ってくるほうが燃える | 指示がないと動けない |
| 自分のペースで組み立てたい | 決まった時間に決まった量が安心 |
| 体調の管理を自分でできる | 休んだ日に収入がゼロになるのが不安 |
| 数字を自分で見る気がある | 確定申告を考えると気が重い |
左に寄る人なら、この仕事はかなり相性がいいです。
私が見てきた範囲では、委託になった人は表情が変わりました。配達そのものは変わっていないのに、です。縛られないこと、成果が見えること、覚えることが少ないこと。この3つが効いています。
そして、独立して年収が上がった人のほうが多かった。これが実感です。
誰でも始められて、やった分だけ返ってきて、月100万も見えてくる。 元手をかけずに会社員から抜けるのに、これほど分かりやすい形は他にあまりありません。
止まるとしたら、たいてい「辞める」ところです
準備の話をしてきましたが、実際に多いのは、その手前で止まる形です。
運送は慢性的に人が足りません。辞めると言った瞬間に、繁忙期を理由に引き延ばされます。独立の準備が整っているのに、退職日が決まらないという状態は珍しくありません。
伝える工程だけなら、外に出せます。退職代行辞スルは24時間受け付けていて、申し込んだ日から会社に行かずに済みます。料金は正社員が税込22,000円、パート・アルバイトが18,000円です(2026年8月時点)。

有給が残っているなら話が変わります。在職中は繁忙期を理由にずらされますが、退職時はずらす先がないので断れません。 ただし会社は退職日を早めたがるので、そこは交渉になります。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
交渉まで扱えるのは労働組合型と弁護士型です。円満退職ユニオンは労働組合が運営していて、退職日をいつにするかと有給の残り日数を、条件として持ち出せます。

ここまでが実務です。踏み出せない理由が「いまの会社を辞められないこと」なら、そこは外に出せます。
よくある質問
委託を考えている人からよく出る疑問に答えます。
- 委託になると、いくらくらいになりますか?
-
1個あたり150〜200円が目安です。1日100個で15,000〜20,000円、200個ならその倍になります。繁忙期に300個を毎日こなす人もいて、その水準なら月100万円も見えます。ただしこれは売上で、ここから車両・保険・ガソリン・税金が引かれます。そして会社によっては1人あたりの個数に上限があるので、契約前に必ず確認してください。
- 初期費用はどのくらいかかりますか?
-
車両、ナンバープレート代、軽貨物専用の任意保険が要ります。ナンバープレート代は地域と関係団体で変わるので、軽自動車検査協会の事務所近隣に確認してください。事業用は希望ナンバーの対象外なので番号は選べません。一方で軽自動車税はむしろ下がり、営業用の黒ナンバーは年3,800円で自家用の5,000円より安くなります。走行距離も1日20〜40km程度なので、長距離のトラックとは燃料費の桁が違います。
- 普通免許で始められますか?
-
軽貨物であれば普通免許で運転できます。運行管理者などの資格も、軽貨物の届出には求められていません。手続きは届出制で、書類は経営届出書・運賃料金設定届出書・運賃料金表・事業用自動車等連絡書・車検証です。
- 大手の運送会社と直接契約できますか?
-
基本的にできません。個人では受け入れてもらえないので、どこかの会社にぶら下がる形になります。 元請けの下に入って配達を回してもらう仕組みです。だから単価もエリアも個数の上限も、その会社次第で変わります。1社だけ見て決めず、複数の条件を聞いてから選んでください。
- 独立して合わなかったら、失業保険はどうなりますか?
-
消えません。離職日の翌日以後に事業を開始した場合、事業をやっている期間を受給期間に算入しない特例があり、最大3年間まで枠を残せます。ただし申請期限は事業を開始した日などの翌日から2か月以内で、事業の実施期間が30日以上であることなどの条件があります。開業の準備と並行して、ハローワークで手続きしてください。
- 自家用の保険のままでは駄目ですか?
-
駄目です。黒ナンバーは自家用と扱いが違うため、自家用の任意保険のままでは仕事中の事故が対象外になります。国土交通省のハンドブックでも、貨物の運送に関する損害賠償に対応できる軽貨物事業専用の任意保険に加入するよう案内されています。始める前に見積もりを取って、収支に入れておいてください。
- 会社を辞めるのを引き止められています
-
運送は人手が足りないので、繁忙期を理由に引き延ばされることがあります。ただし期間の定めのない雇用なら、申入れから2週間で契約は終わります。有給が残っているなら、退職時はずらす先がないため会社は断れません。ここを交渉できるのは労働組合型と弁護士型で、民間企業型は伝えるところまでです。
- 体力に自信がありません
-
配達そのものは会社員時代と変わりません。楽になるわけではないので、体に不調が出ている状態で始めるのは勧められません。固定給がないぶん、休んだ日は収入がゼロになります。まず受診して、動ける状態かどうかを確かめてからにしてください。
まとめ:やった分が返ってくる仕事です
要点を整理します。
- 単価は1個150〜200円。100個で15,000〜20,000円、300個なら月100万円も見えます
- 独立して年収が上がった人のほうが多かったというのが、私が見てきた範囲での実感です
- 個数を増やすほど、車も保険も駐車場も同じ1台分なので手元に残る比率が上がります
- 手続きは許可ではなく届出。資格も要りません
- 軽自動車税はむしろ下がり、営業用は年3,800円です
- 車両は借りる形や、立て替えてもらって返す形もあります
- 決まるのはどこの下に入るか。単価・エリア・個数の上限・車両を、複数聞いてから選んでください
きつさの正体は肉体労働ではなく、会社の体制のほうでした。同じ配達を続けているのに表情が変わるなら、原因はそちらにあります。
準備するものはこの記事に全部書きました。あとは、受け入れ先を決めるだけです。


