落ちるほうが多くなるのは、55歳からでした。私はそれを確かめないまま、転職活動を1回もしませんでした。
会社を辞めたとき、求人を見ることさえしていません。
この記事でわかること
- 動かない理由には、計算のものと気持ちのものがあること
- 「年齢で条件が落ちる」を統計に当てるとどうなるか
- 「周りに転職した人がいない」は事実だと確かめられること
- 自分の理由がどちらなのかを見分ける方法
結論:性質の違う2つが、混ざっていました
動かなかった理由は2つありました。片方は数字で確かめられて、もう片方は確かめようがないものでした。

1つ目は、年齢と勤続年数から考えて、転職しても条件が落ちると思っていたことです。
2つ目は、いまさら誰かに雇われるのが嫌だったことです。
並べて書くと似て見えますが、性質がまったく違います。
1つ目は計算です。だから外に数字があって、確かめられます。2つ目は気持ちです。確かめようがありません。
私は当時、この2つを分けていませんでした。「もう年齢的に無理だから」と自分に説明していましたが、正直なところ、後者のほうが大きかったと思います。


「年齢で条件が落ちる」を数字に当てました
書くにあたって、当時の自分の思い込みを確かめました。

厚生労働省の令和6年 雇用動向調査に、転職した人の賃金がどう変わったかが、年齢階級別に載っています。
| 年齢 | 増加 | 減少 | 増加−減少 |
|---|---|---|---|
| 25〜29歳 | 46.3% | 29.2% | +17.1 |
| 30〜34歳 | 46.1% | 24.2% | +21.9 |
| 35〜39歳 | 45.5% | 24.3% | +21.2 |
| 40〜44歳 | 45.9% | 29.0% | +16.9 |
| 45〜49歳 | 46.4% | 23.8% | +22.6 |
| 50〜54歳 | 39.0% | 28.2% | +10.8 |
| 55〜59歳 | 27.4% | 36.6% | −9.2 |
| 60〜64歳 | 13.6% | 60.9% | −47.3 |
逆転するのは55歳です。54歳までは、すべての年齢階級で「増加」が「減少」を上回っています。
そして45〜49歳の+22.6は、25〜29歳の+17.1より大きいという結果でした。若いほど上がりやすい、という形にはなっていません。

ただし、3割は下がっています
数字を出したので、反対側も書きます。
全体では増加40.5%に対して減少29.4%です。差はありますが、3割の人は下がっています。「転職すれば上がる」という話ではありません。
内訳を見ると、1割以上の増加が29.4%、1割以上の減少が21.7%です。上がる人も下がる人も、動くときは大きく動いています。

10年で、この数字は動いています
私が「落ちる」と思っていた頃の相場とも、比べる必要があります。

同じ調査の推移です。
| 平成27年(2015年) | 令和6年(2024年) | |
|---|---|---|
| 増加した割合 | 35.6% | 40.5% |
| 減少した割合 | 33.5% | 29.4% |
増加が約5ポイント上がり、減少が約4ポイント下がりました。2015年はほぼ拮抗していたのが、いまは11.1ポイントの差がついています。
前年からの1年だけ見ても、「増加」が3.3ポイント、「1割以上の増加」が3.8ポイント上がっています。
古い相場で判断していると、ずれます。これは自分への反省でもあります。私が思っていた「年齢で落ちる」は、少なくとも当時よりは当てはまりにくくなっています。


「周りに転職した人がいない」は、事実でした
もう1つ、思い込みだと思っていたことが事実だったところもあります。

同じ調査に、1年間で何%の人が転職したかという数字もあります。男性の年齢階級別です。
| 年齢 | 転職入職率 |
|---|---|
| 25〜29歳 | 15.1% |
| 30〜34歳 | 10.3% |
| 35〜39歳 | 7.9% |
| 40〜44歳 | 6.8% |
| 45〜49歳 | 6.0% |
| 50〜54歳 | 5.1% |
| 55〜59歳 | 5.4% |
45〜54歳では、1年に5〜6%しか動いていません。20人に1人です。しかも私がいたのは運送で、周りは体力の限界か、委託になるかで辞めていきました。転職して条件が上がった人の話は、耳に入ってきません。
だから「周りに転職した人がいない」という感覚は、正しかったことになります。
ですが、ここが分かれ目です。見えないことと、損することは別です。5%の人が動いていて、その中では上がった人のほうが多かったというのが、さっきの表でした。


もう1つの理由は、数字では動きません
ここまで書いておいて、私自身の判断は変わりません。

2つ目の理由が残るからです。「いまさら誰かに雇われるのが嫌だった」という気持ちです。
これは統計で覆せるものではありません。条件が上がると分かっても、雇われたくないなら、上がる転職に意味がありません。数字が答えを出せる質問ではないからです。
そして、この気持ちを軽く見ないほうがいいと思っています。長く働いた場所を辞めるとき、私は「キャリアを捨てる」感覚があって、なかなか踏ん切りがつきませんでした。行き先は決まっていたのに、辞められませんでした。
決めていないから動けないのではなく、決まっていても動けないことがあります。


自分の理由が、どちらなのか
やることは1つです。

「なぜ動かないのか」を書き出して、確かめられるものと、確かめられないものに分けてください。
「条件が落ちる」「年齢的に無理」「この業界では潰しがきかない」は、全部、確かめられる側です。求人を見るだけなら辞めなくてもできますし、この記事の表で自分の年齢の欄も見られます。
「やりたくない」「雇われたくない」「あの働き方に戻りたくない」は、確かめようがない側です。そして確かめる必要もありません。
分けたあとが本題です。
確かめられる側だけで止まっているなら、確かめれば済みます。確かめずに諦めているなら、それはもったいない話です。
確かめられない側が理由なら、数字をいくら見ても動きません。そのときは、雇われない形を考えるほうが早いです。


よくある質問
- 年齢が上がると転職で給料は下がりますか
-
令和6年の雇用動向調査では、55歳から「減少」が「増加」を上回ります。55〜59歳は増加27.4%に対して減少36.6%、60〜64歳は増加13.6%に対して減少60.9%です。
一方で54歳までは全階級で増加が減少を上回っており、45〜49歳は+22.6ポイントと、25〜29歳の+17.1ポイントより大きくなっています。年齢だけで一律に下がる、という形ではありません。
- 転職すれば給料は上がりますか
-
上がるとは言えません。全体で増加が40.5%、減少が29.4%、変わらないが28.4%です。差はありますが、約3割の人は下がっています。
内訳では1割以上の増加が29.4%、1割以上の減少が21.7%です。動くときは、上下どちらにも大きく動いています。上がる前提で計画を立てるのは危険です。
- 昔と比べて変わっていますか
-
変わっています。増加した割合は平成27年の35.6%から令和6年の40.5%へ、減少した割合は33.5%から29.4%へ動きました。10年で増加が約5ポイント上がり、減少が約4ポイント下がっています。
前年からの1年だけでも、増加が3.3ポイント、1割以上の増加が3.8ポイント上昇しています。数年前の相場で判断すると、ずれる可能性があります。
- 周りに転職した人がいません
-
それは事実である可能性が高いです。同じ調査の年齢階級別転職入職率は、男性の45〜49歳が6.0%、50〜54歳が5.1%です。1年で20人に1人ほどしか動いていません。
ただし見えないことと、損することは別です。動いている5%の中では、賃金が増えた人のほうが多いという結果になっています。周りにいないことは、条件が悪いことの証明にはなりません。
- この数字はどう読めばいいですか
-
対象は転職入職者、つまり実際に転職した人です。転職しなかった人は入っていません。また注記により、自営業からの転職入職者は含まれていません。
だから「転職すれば誰でもこうなる」という数字ではありません。動いた人の中での内訳です。自分に当てはめるときは、この前提を外さないでください。
- 辞める前に条件を調べられますか
-
調べられます。求人を見ることも、エージェントに登録して話を聞くことも、在職中にできます。辞めてから調べる決まりはありません。
順番としては、条件を確かめてから辞めるかどうかを決めるほうが安全です。無収入で何か月暮らせるかを先に数字にしておくのも、同じ理由です。
- 行き先が決まっているのに動けません
-
私がそうでした。独立すると決めていて、勉強も始めていたのに、辞めると言い出すまでに時間がかかりました。長く働いた分、「キャリアを捨てる」感覚があったからです。
決まっていないから動けないのではなく、決まっていても動けないことがあります。動けない理由が手続きの問題なのか、気持ちの問題なのかを分けると、次にやることが見えます。
- 雇われたくない、は理由になりますか
-
なります。ただし、それが本当の理由なのかを確かめてください。条件が落ちるという計算のほうを表向きの理由にしていて、実際は雇われたくないだけ、ということがあります。私がそうでした。
理由が気持ちの側にあるなら、統計を見ても判断は変わりません。そのときは条件を比べる時間ではなく、雇われない形を調べる時間に使うほうが早いです。
まとめ:確かめられる側と、そうでない側に分ける
整理します。
- 動かない理由には計算のものと気持ちのものがある
- 「年齢で条件が落ちる」は、54歳までは増加が減少を上回っている
- ただし全体でも約3割は下がっている。上がる前提では考えない
- 10年で増加35.6%→40.5%、減少33.5%→29.4%と動いている
- 45〜54歳の転職入職率は5〜6%。周りにいないのは事実。ただし損とは別
やることは、書き出して分けることです。
確かめられる側で止まっているなら、確かめれば済みます。確かめられない側が理由なら、数字を見ても動きません。どちらなのかが分かれば、次にやることが変わります。
私は後者でした。だから転職活動を1回もしないまま、独立を選びました。
