運送を辞めた同僚で、業界の外に出た人を、私はほとんど見ていません。
私は長く運送の現場にいました。辞めていく人は何人も見てきましたが、行き先は不思議と「運送業」という同じ道でした。
どの進路が多いのかは、統計を見ないと分かりません。ここに書くのは、私が実際に見てきた4つの形です。一般論の「体を使わない仕事へ」より、現場に近い話だと思います。
この記事でわかること
- 運送を辞めた人が実際に選んだ4つの進路
- 「委託」になった人の表情が変わる理由
- 内勤に移ると給料がどのくらい落ちるか
- 自分がどれに向いているかの判断軸
結論:外に出るより、業界の中で形を変える人が多い
先に全体を出します。

| 進路 | 何が変わるか |
|---|---|
| ① 委託になる | 会社員をやめて個人事業主になる。配達そのものは続ける |
| ② 部署異動で内勤へ | 体は楽になる。給料は落ちる |
| ③ 運送会社を立ち上げる | 雇う側になる。資金と許認可が要る |
| ④ 別業界へ移る | 経験を持ち込める職種を選ぶ |
「辞める=業界を出る」ではありません。 ここを知らないまま転職サイトだけ見ると、選択肢が1つしか見えなくなります。
4つのどれを選ぶにしても、先に自分の経験が外でいくらになるかを知っておくと比べられます。 ゼロイチ転職は20代なら無料で面談が受けられます。
① 委託になる
会社員をやめて個人事業主になり、大手の運送会社から仕事を受ける形です。報酬は1個いくら、1件いくらで計算されます。
配達そのものは変わりません。きついときはきついし、夏の暑さも会社員時代と同じです。
それなのに、みんな表情が変わります
ここが不思議な部分です。委託になった人は、前よりやる気に満ちています。
「辞めてよかった」と言う人に理由を聞くと、まず出てくるのは会社の体制への不満です。仕事がきつかったから、ではありません。
洗車をしろと言われても、その時間はどこにもありません。決まりだけが増えていきます。現場の実情と噛み合わないルールの中で動き続けることに、消耗していたわけです。
委託になると、その体制から外れます。残るのは配達そのものだけです。
そのうえで、口をそろえて挙がるのが次の3つです。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 縛られない | ルールだけ守れば、あとは自分の裁量 |
| 成果が見える | やった分がそのままお金で返ってくる |
| 覚えることがない | 基本は配達だけ。端末も社内手続きも増えない |
辞めていった同僚は、ほとんどが「辞めてよかった」と言っています。
同じ体を使う仕事で、同じ暑さの中にいて、それでも違うわけです。つまり、きつさの正体は肉体労働そのものではありませんでした。
会社の体制のほうが、人を消耗させていたということです。配達は変わっていないのに表情が変わるなら、原因はそちらにあります。
ただし、失うものもあります
固定給がありません。体調を崩した日は、そのまま収入がゼロになります。
車両、保険、ガソリン。経費も自分持ちです。ここは会社員のときと決定的に違います。
始めるときに必ず要るもの
委託は「明日から」とはいきません。軽貨物で運ぶには、黒ナンバーの車両が要ります。
そして見落とされやすいのが保険です。黒ナンバーは自家用とは扱いが違うので、専用の自動車保険に入り直すことになります。自家用の保険のままでは、仕事中の事故が対象外になります。
軽貨物専門で扱っているのが箱バン.com保険です。始める前に見積もりだけ取っておくと、収支の計算に入れられます。

車両そのものを用意する必要があるなら、箱バン.comのようにビジネス用の箱バンを専門にしている業者もあります。
そのうえで、始める前に必ず出しておきたい数字があります。1個あたりの単価と、1日に何個運べるか。この2つに、車両・保険・ガソリンの経費を差し引いて、はじめて会社員時代と比べられます。
募集の条件だけを見て「月◯万円」と受け取ると、後で合わなくなります。
委託を選ぶなら、開業と保険の手続きが先に来ます。軽自動車で始めるなら、任意保険は事業用の契約が必要です。
② 部署異動で内勤へ
体力の問題だけなら、これがいちばん現実的です。会社を辞めずに済みます。

仕事の中身は、半分が事故処理です
私の周りでは、運行管理・顧客対応・荷物事故の処理が大半でした。
そして、電話でのクレーム対応が多いです。体を使うきつさと引き換えに、人の怒りを受ける仕事になります。電話が無理な人は、体が楽になっても続きません。
事故の中身も書いておきます。内勤に移るというのは、この処理を毎日やるということです。
目立つのは破損。原因は落下より梱包です
受け取った側からすれば、怒るのは当然です。ただ現場から見ると、梱包の不備によるものがかなりあります。
私自身、通販で10万円以上するスマートフォンを買ったとき、段ボールに緩衝材もなく、本体がコロンと一つだけ入っていたことがあります。これでは何かあっても不思議ではありません。
送れば届く、と思われがちですが、実際は梱包がすべてです。
輸送中は必ず振動があります。しかも何人もの人間を経由して運ばれます。その過程で中身が動くのは、避けようがありません。
もちろん、落として割ってしまうヒューマンエラーもあります。ただ極論を言えば、ワインを落としても割れない梱包は存在します。段ボールの中で商品が浮いていればいいだけで、そういう方法も資材もあります。
本当にやっかいなのは「代わりが用意できないもの」
事故が起きたら、基本は謝罪と代品の手配で終わります。終わらないのは、代わりが手に入らないものです。
たとえば直筆のサイン色紙。折れ曲がって「弁償してほしい」と言われても、買ってくることができません。
各社の約款では、こうした再生が困難なものは、そもそも引き受けの対象外とされているのが一般的です。現金、有価証券、貴金属、美術品や骨董品、原稿や設計図、写真のフィルム、位牌のような代替のきかないもの。
送る側がそれを知らないまま出してしまい、事故が起きたときに揉めます。内勤はその場面に立ち会う側です。
誤配はペナルティが厳しくなりました
個人情報の扱いが厳しくなったので、誤配を出した人へのペナルティは、どの運送会社も厳しいはずです。
紛失・盗難はごくまれ
置き忘れなどで起きることがあります。昔は車ごと盗まれたというニュースもありました。当時は鍵をつけたまま、エンジンをかけたまま配達に行くことがあったからです。
給料は落ちます
ここは正直に書きます。体感で、2/3から半分になります。
歩合や残業がなくなる分がそのまま消えるので、「体が楽になるなら」で簡単に決められる差ではありません。
生活が回るかどうかを先に計算してください。落ちた収入で暮らせないなら、この選択は続きません。
倉庫などの作業職について
私の周りでは、作業職へ移った人はあまりいませんでした。
理由は交代制です。作業になると夜勤が入ります。私自身、夜勤は嫌だったので最初から選択肢に入れていませんでした。
昼夜が固定されているかどうかは、体への負担がまったく違います。異動先を選べるなら、シフトの形を先に確認してください。

③ 運送会社を立ち上げる
ごく少数ですが、実際にいました。
その人はマンションを抵当に入れて、2,000万円ほどの融資を受けていました。資本金のほか、事業所や駐車場、車両にあてる分です。資金力がないと、入口にすら立てません。
必要な額は、取得する免許によって変わります。軽貨物なのか、一般の貨物運送なのかで、要件がまったく違うためです。
そして、いちばん伝えたいのはここです。その人は、いまめちゃくちゃうまくいっています。
会社の規模は小さいままです。それでも立ち上げてからの本人は、見るからにはつらつとしています。委託になった人たちと同じで、自分で決められる立場になったことのほうが大きいのだと思います。
必要な要件は、営業所や車庫、車両の台数まで法令で決まっています。金額は免許の種類と規模でまったく変わるので、始める段階で運輸支局に直接確認してください。ここを人づてで済ませると、あとで要件を満たせずに止まります。
会社を変えるだけ、という選択肢もあります
業界を出る前に、もうひとつ道があります。運送を続けたまま、会社だけ変えるという手です。
同じドライバー職でも、担当エリアの広さ、物量、シフト、歩合の比率は会社ごとに違います。 「運送がきつい」ではなく「いまの会社がきつい」なら、これで解決することがあります。
物流のドライバーに絞って扱っているのがDriver Boost(ドライバーブースト)です。業界の中の求人なので、経験がそのまま評価されます。

④ 別業界へ移る
最後が、業界の外に出る道です。私はこの形を、あまり見ていません。
ただ、選べないわけではありません。運送で身につくものは、職種の名前が変わっても評価されます。

| 持ち込めるもの | 向く先 |
|---|---|
| 担当エリアを持って顔なじみを作る | 法人向けの営業・ルート営業 |
| 段取りと時間の配分 | 生産管理・工程管理 |
| 現場を知っていること | 物流系の管理職・倉庫管理 |
| 体力の使い方を知っている | 施工管理・設備 |
現場で身についたものは、名前が変わるだけで他の職種にもあります。一日の配分を組み立てる力、担当先との関係を切らさない力。求人票の言葉に置き換えられれば、そのまま経歴になります。
置き換え方が分からない場合は、20代の未経験転職を扱うゼロイチ転職で、経歴の書き方から相談できます。地方も含めて探すなら転職支援サービスが扱っています。
4つのどれを選ぶかが決まっていないうちは、求人を見ても比べられません。キャリアに特化したコーチング・サービス【POSIWILL CAREER(ポジウィルキャリア)】は求人を出さずに、その判断そのものを扱います。

どれを選ぶかの判断軸
4つを、こう分けてください。
| いまの状況 | 向く進路 |
|---|---|
| 配達自体は嫌ではない。会社の縛りがきつい | ① 委託 |
| 体が限界。配達を続けられない | ② 内勤(給料減を受け入れられるなら) |
| 資金があり、雇う側に回りたい | ③ 会社を立ち上げる |
| 運送そのものから離れたい | ④ 別業界へ |
よくある取り違えは、①を知らないまま④だけを考えることです。
「辞めたい」の中身が会社の縛りなら、業界を出なくても解決します。逆に体が限界なら、委託になっても同じことが起きます。
体に出ているなら、進路の話より先に確認することがあります。

それでも辞められないなら
運送の現場は、人手が足りないほど辞めにくくなります。
担当エリア制だと代わりがいません。「繁忙期を越えてから」と言われて、そのまま1年経つことがあります。こちらが日付を出すまで、この話は毎回ふりだしに戻ります。
伝える工程だけを外に出す方法があります。ただし業者によってできることが違います。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
担当エリアの引き継ぎを理由に退職日を延ばされるなら、そこを交渉できる相手が要ります。円満退職ユニオンは労働組合が運営していて、有給と退職日の調整まで扱えます。

引き継ぎの話がなく、伝えるところだけ止まっているなら、退職代行辞スルなら当日の朝の申し込みでも間に合います。

事故の補償や未払いが絡むなら、弁護士型でないと請求できません。心当たりがあるなら最初から弁護士法人ガイアの退職代行サービスです。


よくある質問
- 委託になると収入は増えますか?
-
増える人もいれば、減る人もいます。1個いくらの世界なので、こなした量がそのまま反映されます。ただし車両・保険・ガソリンが自分持ちになるため、額面だけで比べると実態がずれます。手取りではなく、経費を引いた後で比べてください。
- 内勤に異動したいと言えば通りますか?
-
会社と時期によります。空きがなければ動けません。ただ、体調の問題を伝えていない状態では検討すらされないので、まず上司や産業医に状況を共有するところからです。
- 運行管理の資格は必要ですか?
-
運行管理者は国家資格ですが、異動時点で必須とは限りません。会社によっては配属後に取得を求められます。異動を希望するなら、資格の扱いを先に確認してください。
- 夜勤のない部署はありますか?
-
事務や運行管理は日中が中心のことが多く、倉庫の作業は交代制で夜勤が入りやすい傾向があります。部署ごとにシフトの形が違うので、異動前に必ず確認してください。
- 経験は他の業界で評価されますか?
-
されます。ただし「配達をしていた」ではなく、何を担当していたかで書いてください。担当エリアの管理、時間の配分、顧客対応。この形にすると、営業や管理の職種で評価されます。
- 会社を立ち上げるにはいくら必要ですか?
-
規模によります。私の周りにいた人は、マンションを抵当に入れて2,000万円ほどの融資を受けていました。車両・事業所・台数の要件があるため、思いつきで始められる業種ではありません。
- 辞めたいと言ったら強く引き止められました
-
担当制の職場では珍しくありません。「◯月末で退職します」と日付を出してください。日付を出さない限り、話は先延ばしになり続けます。
まとめ:辞めたいの中身によって、行き先が変わります
要点を整理します。
- 私が見てきた範囲では、辞めた人の行き先は業界の中だった
- 委託になった人は、同じきつさなのに前より生き生きしている
- 「辞めてよかった」の理由の筆頭は、仕事のきつさではなく会社の体制への不満
- その理由は縛られない・成果が見える・覚えることがないの3つ
- 内勤は体が楽になるが、給料は体感2/3〜半分。クレーム対応が中心
- 会社を立ち上げるには資金と許認可が要る
- 別業界へ移る形は、私はあまり見ていない。ただし経験は持ち込める
いちばん伝えたいのはここです。委託になった同僚は、配達を続けているのに「辞めてよかった」と言います。
つまり、きつさの正体は肉体労働そのものではなかったということです。会社の体制のほうが、人を消耗させていました。
自分が何に消耗しているのかを見分けてください。それが分かれば、4つのうちどれを選ぶかも決まります。


