面接で「なぜ辞めたのですか」と聞かれます。
本当の理由を、そのまま言えない人がほとんどだと思います。
この記事でわかること
- 実際に辞めた理由の上位は、面接で言いにくいものばかりだということ
- 採用側が処遇を決めるとき、最も重視しているもの
- 嘘をつくことと、言い方を変えることの違い
- そのまま言わないほうがいい2つと、言っていい3つ
結論:辞めた理由より、経験の説明のほうが重く見られています
先に数字を出します。
厚生労働省の転職者実態調査では、転職者の処遇を決めるときに考慮した要素のうち、最も重視されたのは「これまでの経験・能力・知識」で53.7%でした。

退職理由は、この調査の項目に出てきません。
もちろん面接では聞かれます。ただ、そこで落とすためというより、確認のために聞かれていると考えたほうが実態に近いです。
マーキャリ NEXT CAREERのような転職エージェントを使うと、その会社が何を見ているかを事前に聞けます。

何を確認されているのか
聞かれているのは、たぶんこの2つです。
- 同じことが、うちでも起きないか
- 説明が筋の通ったものか
だから理由の中身より、話の筋が通っているかどうかのほうが効きます。
在職中なら、退職前にやることリストと並行して進められます。
実際に辞めた理由は、言いにくいものばかりです
厚生労働省の令和6年雇用動向調査から、転職した人が前職を辞めた理由です。

| 理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| その他の個人的理由 | 20.2% | 24.3% |
| 定年・契約期間の満了 | 14.1% | 10.7% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.6% | 12.8% |
| 給料等収入が少なかった | 10.1% | 8.3% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 9.0% | 11.7% |
| 会社の将来が不安だった | 7.4% | 5.1% |
定年と「その他」を除くと、上位は人間関係・給料・労働条件です。
どれも、面接でそのまま言うと角が立ちます。だからみんな困ります。
なお、この調査は次の勤め先が決まって入職した人が対象です。辞めた人全員の数字ではありません。
嘘をつくことと、言い方を変えることは違います
ここを混同すると、どちらにも転びます。

| 中身 | 判断 | |
|---|---|---|
| 嘘 | 起きていないことを言う。在籍期間や役職を偽る | やらない |
| 言い換え | 起きたことのうち、どこを話すかを選ぶ | 問題ない |
辞めた理由が複数あるのが普通です。そのうちどれを前に出すかは、話す側が決めていいことです。
在籍期間・職務内容・役職・退職日を偽るのは、経歴の詐称になります。そこは動かせません。

そのまま言わないほうがいい2つ
言い換えを勧めるのは、この2つです。

① 前の会社や上司の悪口
事実であっても、聞いている側には確認できません。確認できない話をされると、相手は判断のしようがなくなります。
「うちでも同じことを言われるかもしれない」と思われて終わります。
同じ内容でも、人ではなく仕組みの話にすると通ります。
| そのままだと | 仕組みの話にすると |
|---|---|
| 上司が理不尽だった | 判断の基準が人によって変わる環境でした |
| 何度言っても改善されなかった | 現場から上げた提案が、検討まで進まない状態でした |
| 上が次々に辞めていった | 3年で管理職が入れ替わり、引き継ぎが止まっていました |
| 評価が不公平だった | 評価の基準が開示されていませんでした |
左と右で、起きた事実は同じです。変えているのは、主語を人から仕組みに移しているところだけです。
右の言い方なら、相手は「うちはどうか」と自社に置き換えて考えられます。左だと、置き換える先が人になるので、あなた自身の性格の話に聞こえます。
② 「疲れた」「限界だった」という状態の説明
体調や消耗そのものを前に出すと、続くかどうかの心配に話が移ります。

回復していることが前提なら、そこは短く済ませて構いません。長く説明するほど、そこが論点になります。
言い方としては、状態ではなく条件に寄せます。
| そのままだと | 条件の話にすると |
|---|---|
| 心身の限界だった | 深夜帯を含む勤務が続く体制でした |
| 体を壊しかけた | 荷物の量に対して人員が合っていませんでした |
| もう無理だと思った | この働き方を続ける前提が立たないと判断しました |
「もう無理」は主観ですが、「人員が合っていない」は事実です。同じことを言っていても、後者は確認できます。

そのまま言っていい3つ
逆に、そのまま言って問題にならないものもあります。
① 労働条件(時間・休日)
事実として確認できる話です。残業が月何時間だったか、休みが取れていたかは、数字で言えます。
数字を出すと、感情の話ではなくなります。
言えるものは、だいたいこの4つです。
- 月の残業時間
- 休日の実数(週休2日と書いてあっても、実際に取れていたか)
- 拘束時間(始業前・終業後を含めて何時間、家を出てから帰るまで)
- 連続勤務の日数
「きつかった」ではなく「月◯時間の残業が続いていた」と言えば、相手は判断できます。
数字が手元にないなら、在職中に給与明細とシフト表を控えておいてください。辞めてからでは取り寄せに手間がかかります。
② 会社の将来への不安
令和6年の調査で、この理由は男性で7.4%でした。前年から2.2ポイント上がっていて、「その他の個人的理由」を除けば上昇幅がいちばん大きい項目です。

業績や人員の動きなど、外から見て分かる事実があれば、そのまま話せます。
- 事業所や路線の統廃合
- 募集をかけても人が入らない状態が続いていた
- 取引先や主要な業務の縮小
こうした事実は、会社を悪く言っているのではなく状況の説明になります。だから角が立ちません。
逆に「なんとなく先が見えなかった」だと、根拠のない不安に聞こえます。何を見てそう思ったかを1つ添えてください。

③ やりたいことが変わった
いちばん通しやすい理由です。ただし、次の会社でそれができる根拠が要ります。
「やりたいことが変わった」だけで止めると、また変わるのではと思われます。前職の経験のどこが次につながるかを続けてください。
つなげ方は、この形が分かりやすいです。
前職で◯◯をしていて、その中で△△の部分に時間を使うことが増えました。そこを本業にしたいと思っています。
「前職を否定して次に行く」形にしないことが大事です。前の仕事の中で見つけたもの、という順番にすると、辞めたこと自体が前向きな判断に見えます。
経験の説明が、結局いちばん重い
最初の数字に戻ります。
処遇を決めるときに最も重視されるのは経験・能力・知識で53.7%でした。考慮した要素としては74.7%で、これも1位です。

| 考慮した要素 | 割合 |
|---|---|
| これまでの経験・能力・知識 | 74.7% |
| 年齢 | 45.2% |
| 免許・資格 | 37.3% |
| 前職の賃金 | 25.3% |
| 学歴 | 11.0% |
産業によって差もあります。免許・資格は医療・福祉で62.9%、年齢は建設業で61.4%が最も高くなっています。

退職理由の答えを何時間も練るより、経験をどう説明するかに時間を使うほうが割に合います。書き方は職務経歴書の書き方にまとめました。
なお、この調査は令和2年のものです。コロナ禍の時期に当たるので、いまの状況とは違う部分があります。

運送業では、転職はめずらしくありません
同じ調査で、転職者がいる事業所の割合は「運輸業,郵便業」が44.2%で全産業のうち最も高くなっています。全体では33.0%です。
2つに1つ近い事業所が、転職者を受け入れている業種です。辞めたこと自体を負い目に感じる必要はありません。
よくある質問
- 人間関係が理由でした。正直に言うべきですか?
-
そのままは勧めません。事実であっても、聞いている側には確認できないからです。確認できない話をされると相手は判断できず、うちでも同じことを言われるかもしれないと受け取られます。人ではなく仕組みの話に置き換えてください。上司が理不尽だった、ではなく、判断の基準が人によって変わる環境でした、という形です。嘘ではなく、どこを話すかを選んでいるだけです。
- 給料が安かったのが理由です。言っていいですか?
-
言えますが、それだけで止めないほうがいいです。給料等収入が少なかったは令和6年の調査で男性10.1%、女性8.3%と上位の理由なので、めずらしくはありません。ただ金額の話だけだと、もっと高いところが出たらまた辞めると思われます。仕事の内容や身につけたいものと合わせて話すと筋が通ります。
- 短期間で辞めました。どう説明しますか?
-
期間は変えられないので、そこは正確に言ってください。在籍期間を偽ると経歴詐称になります。そのうえで、短期間でも何をしていたかを具体的に話してください。転職者の処遇を決めるとき、最も重視されているのはこれまでの経験・能力・知識で53.7%です。期間の長さそのものが項目に上がっているわけではありません。
- 退職代行を使ったことは言う必要がありますか?
-
聞かれていないなら、話す必要はありません。履歴書や職務経歴書にも書く欄はありません。辞め方は、離職票の離職理由には反映されますが、そこに手段までは書かれません。ただし前職に在籍していた事実そのものは動かせないので、在籍期間や職務内容は正確に書いてください。
- 「その他の個人的理由」が一番多いのはなぜですか?
-
令和6年の調査では男性20.2%、女性24.3%で最も多い区分です。ただしこれは調査の選択肢の作りによるもので、家庭の事情から言いたくないものまで幅広く含まれます。中身は聞かれていないので、この数字から何が多いかは読み取れません。面接で使える理由という意味ではないので、そのまま真似しないでください。
- 会社の悪いところを聞かれたらどう答えますか?
-
事実を、確認できる形で答えてください。残業が月何時間だったか、休みが何日取れていたかは数字で言えます。数字にすると感情の話ではなくなるので、相手も判断できます。逆に、人格や態度の話は確認できないため、聞いた側は扱いに困ります。
- まだ辞めていません。面接で不利になりますか?
-
在職中の応募は普通のことです。むしろ辞めてから探すより、条件を比べやすくなります。ただし入社可能日は聞かれるので、就業規則の申出期限と有給の残日数から逆算して答えられるようにしておいてください。答えられないと、選考が止まることがあります。
- 転職理由を練習しておくべきですか?
-
丸暗記は勧めません。話が硬くなり、追加で聞かれたときに崩れます。決めておくのは、話す順番と、そのまま言わない部分だけで十分です。時間をかけるなら、退職理由より経験の説明のほうです。処遇を決める場面で最も重視されているのはそちらです。
まとめ:退職理由は、確認のために聞かれています
実際に辞めた理由の上位は、人間関係・給料・労働条件でした。どれも面接でそのまま言いにくいものです。
ただ、処遇を決めるときに最も重視されているのは経験・能力・知識で53.7%です。
- そのまま言わない … 前の会社や上司の悪口、疲れた・限界だったという状態
- そのまま言っていい … 労働条件(数字で)、会社の将来への不安、やりたいことが変わった
- 絶対に変えない … 在籍期間、職務内容、役職、退職日
嘘をつくのと、どこを話すかを選ぶのは違います。起きたことの中から選ぶ分には、問題ありません。
そして、運輸業では転職者がいる事業所が44.2%で全産業のうち最も高くなっています。辞めたこと自体を負い目に感じる必要はありません。

