契約を更新しないと言われた|断るには「客観的に合理的な理由」が要ります

「次の更新はありません」と言われた。

そのまま受け入れるしかない、とは限りません。

この記事でわかること

  • 雇止めに歯止めがかかる2つの場合
  • 「更新を申し込む」が必要なこと
  • 期間の途中で切られる場合との違い
  • 受け入れる場合に確認しておくこと
目次

結論:会社が断るには、理由が要ります

条文を見ます。

雇止めに労働契約法19条の歯止めがかかる仕組みを示した図解

労働契約法19条です。

有期労働契約であつて次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であつて、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

長いので、分けて読みます。

# 何が必要か
① 19条1号か2号のどちらかに当たること
② 労働者が更新の申込みをすること
③ 会社が断ることに、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上も相当でないこと

この3つが揃うと、同じ労働条件で承諾したものとみなされます。契約が続くということです。

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歯止めがかかるのは、2つの場合です

19条の1号と2号です。

労働契約法19条1号と2号の違いを示した図解

1号は、こう書かれています。

当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであつて、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

何度も更新してきて、実質的に無期契約と同じになっている場合です。更新のたびに手続きらしい手続きがなく、自動的に続いてきたようなケースが当たります。

2号は、更新されると期待することについて合理的な理由がある場合です。上司から「来年も頼む」と言われていた、更新を前提とした業務を任されていた、といった事情が判断材料になります。

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2024年4月から、上限が明示されるようになりました

期待が生まれるかどうかに関わる変更です。

労働基準法施行規則5条1項1号の2により、有期契約を更新する場合の基準に加えて、通算契約期間や更新回数の上限がある場合は、その上限も明示事項になりました。

契約の時点で「更新は3回まで」と示されていれば、4回目を期待する合理的な理由は立ちにくくなります。逆に何も示されていなければ、そこは争点になります。

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「申し込む」ことが要ります

ここを落とすと、19条が使えません。

契約更新の通知を受け取って考え込んでいる様子

条文は「労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合」または「当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合」としています。

つまり、黙っていると19条は動きません。更新してほしいという意思を、会社に伝える必要があります。

期限は2つあります。契約期間が満了する日までに申し込むか、満了後であれば遅滞なく申し込むか。満了してから何か月も経ってからでは、遅滞なくとは言えなくなります。

伝え方に決まった形式はありませんが、いつ伝えたかが後で問題になります。メールなど、日付が残る方法を選んでください。

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期間の途中で切られる場合は、別の条文です

混ざりやすいので分けます。

期間途中の解雇と期間満了の雇止めの違いを示した図解
いつ 何と呼ぶか 根拠 会社に必要なもの
契約期間の途中 解雇 労働契約法17条1項 やむを得ない事由
契約期間の満了時 雇止め 労働契約法19条 客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性

17条1項は、こう定めています。

使用者は、期間の定めのある労働契約(中略)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

期間の途中のほうが、会社に求められるものは重くなります。「やむを得ない事由」は、無期契約の解雇に必要な理由よりも厳しいとされています。

いま何月何日で、契約期間がいつまでなのか。まず日付を確認してください。どちらの話かで、当たる条文が変わります。

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受け入れる場合に、確認しておくこと

争わない選択もあります。

雇止めを受け入れる場合に確認する4つを示した図解

そのまま次に移るなら、先に4つ確認してください。

1つめは離職理由です。雇止めは、自己都合ではありません。離職票にどう書かれるかで、失業保険の給付制限や所定給付日数が変わります。

2つめは有給の残日数です。契約が終わる日を過ぎると、権利は消えます。買い取りは原則できません。

3つめは、契約期間中の未消化分です。有給を取る日を指定するのは労働基準法39条により労働者側で、会社にあるのは事業の正常な運営を妨げる場合に他の日へ変えてもらう時季変更権だけです。契約満了日を越えて変更する先がないため、満了間際はこの権利が働きにくくなります。

4つめは、通算契約期間です。5年を超えていれば、無期転換の申込権が発生している可能性があります。

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よくある質問

更新しないと言われたら、受け入れるしかないですか

そうとは限りません。労働契約法19条は、1号か2号に当たる場合に労働者が更新の申込みをしたとき、使用者がそれを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、従前と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなすと定めています。

1号は過去に反復して更新され、無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合。2号は更新されると期待することに合理的な理由がある場合です。どちらにも当たらなければ、19条の歯止めは働きません。

何回更新していれば1号に当たりますか

回数だけでは決まりません。19条1号は「過去に反復して更新されたことがある」ことに加えて、更新しないことが無期契約の労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められることを求めています。

判断材料になるのは、更新の手続きが実際に行われていたか、契約書を毎回取り交わしていたか、業務の内容が臨時的なものか恒常的なものかといった事情です。3回だから当たる、5回だから当たる、という線引きにはなっていません。

「更新の申込み」は何をすればいいですか

更新してほしいという意思を会社に伝えることです。19条は、契約期間が満了する日までに更新の申込みをした場合か、満了後遅滞なく締結の申込みをした場合を対象にしています。

黙っていると条文が動きません。形式に決まりはありませんが、いつ伝えたかが後で問題になるため、メールなど日付が残る方法を選んでください。満了後の場合は「遅滞なく」なので、何か月も経ってからでは条件を満たさなくなります。

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契約期間の途中で辞めさせられそうです

別の条文になります。労働契約法17条1項は、有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間に労働者を解雇することができないと定めています。

期間満了時の雇止めが19条、期間途中の解雇が17条1項です。17条1項の「やむを得ない事由」は、無期契約の解雇に必要な理由よりも厳しいとされています。まず契約期間がいつまでかを確認して、どちらの話かを分けてください。

5年を超えて働いています

無期転換の申込権が発生している可能性があります。労働契約法18条により、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は無期労働契約への転換を申し込むことができます。

申し込めば会社は断れません。ただし申込みは労働者からする必要があり、黙っていると転換しません。通算の数え方には空白期間の扱いなど細かい決まりがあるので、契約書を並べて期間を確認してください。

雇止めされたら失業保険はどうなりますか

自己都合ではありません。契約期間の満了により離職した場合は、自分から辞めた場合とは扱いが変わります。更新を希望していたのに更新されなかったのか、自分から更新を希望しなかったのかで、さらに区分が分かれます。

判断するのはハローワークなので、離職票に書かれた離職理由を必ず確認してください。事実と違うと思う場合は異議を申し立てることができます。そのとき材料になるのが、更新の申込みをした記録です。

更新の上限が契約書に書いてありました

期待の合理性に影響します。2024年4月から、労働基準法施行規則5条1項1号の2により、有期契約を更新する場合の基準に加えて、通算契約期間や更新回数の上限がある場合はその上限も明示事項になりました。

契約の時点で上限が示されていれば、それを超える更新を期待する合理的な理由は立ちにくくなります。逆に何も示されないまま更新を重ねてきた場合は、19条2号の判断で有利に働く材料になります。契約書を最初のものから並べて確認してください。

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争うか、次を探すか迷っています

両方を同時に進めることができます。19条を使うには更新の申込みが要りますが、申し込んだうえで次を探すこと自体は妨げられません。

判断の材料になるのは、契約書と更新の履歴、上司とのやり取りの記録です。これらは在職中のほうが集めやすくなります。そのうえで、雇止めの効力を争うところまで行くなら法律事件になるため、扱えるのは弁護士だけです。労働組合が運営する退職代行では扱えません。

まとめ:黙っていると、条文が動きません

整理します。

  • 会社が更新を断るには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要る(労契法19条)
  • 対象は、反復更新で無期と同視できる場合(1号)か、更新の期待に合理性がある場合(2号)
  • ただし労働者からの更新の申込みが必要。満了日までか、満了後遅滞なく
  • 期間の途中で切られるのは別の話で、会社にはやむを得ない事由が要る(労契法17条1項)
  • 2024年4月から、更新回数の上限も明示事項になった

まず、契約期間の満了日と、契約書の枚数を確認してください。申し込む期限は、その日で決まります。

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この記事を書いた人

元営業職・運送会社勤務を経て、現在フリーランスとして独立。

20代で営業職を経験しました。辞めると決めてから上司に伝えるまで、3ヶ月かかって無駄な時間をすごしました。自分で退職を切り出す難しさを経験した立場から、辞めたい人が損をしないための情報をまとめています。労働問題の専門家ではないため、法律の解釈が関わる部分については、公的機関や専門家の情報を必ず併記するようにしています。

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