同じ85日でも、違法な会社と合法な会社があります。分かれ目は労働時間制度と、1日の所定労働時間です。
まず「85日」という数字がどこから出てきたのかを見ます。
この記事でわかること
- 「年間休日85日」という数字の出どころ
- 1日の所定労働時間ごとの、年間休日の下限
- 85日が全体のどのあたりにいるのか
- 違法だった場合に何ができるか
結論:制度で答えが変わります
先に全体を出します。

| 制度 | 年間休日の下限 | 85日は |
|---|---|---|
| 通常・1日8時間 | 105日 | 違法 |
| 通常・1日7時間30分 | 87日 | 違法 |
| 通常・1日7時間20分 | 81日 | 合法 |
| 1年単位の変形労働時間制 | 85日 | ちょうど下限 |
「年間休日85日は違法ですか」に、はい・いいえで答えられません。自分の会社がどの行にいるかを先に確かめる必要があります。

「85日」は、制度から逆算された数字です
偶然の数字ではありません。
労働基準法施行規則12条の4第3項に、1年単位の変形労働時間制の労働日数の限度が書かれています。
法第三十二条の四第三項の厚生労働省令で定める労働日数の限度は、同条第一項第二号の対象期間(以下この条において「対象期間」という。)が三箇月を超える場合は対象期間について一年当たり二百八十日とする。(後略)
1年間に働かせられるのは280日までです。365日から引くと、85日になります。
つまり年間休日85日という求人は、この制度の下限ちょうどを取っているということです。1日も減らせないところまで来ています。

なお、この280日が効くのは対象期間が3か月を超える場合です。1か月単位の変形労働時間制や、対象期間が3か月以内の1年単位では、この限度はかかりません。

通常の制度なら、1日の所定労働時間で変わります
ここが誤解されやすいところです。

労働基準法32条1項は、週40時間を超えて労働させてはならないと定めています。これを1年に引き直すと、365日 ÷ 7 × 40時間 = 2,085.7時間です。この枠を、1日の所定労働時間で割ると、出勤できる最大日数が出ます。
| 1日の所定労働時間 | 出勤できる最大日数 | 年間休日の下限 |
|---|---|---|
| 8時間00分 | 260日 | 105日 |
| 7時間45分 | 269日 | 96日 |
| 7時間30分 | 278日 | 87日 |
| 7時間20分 | 284日 | 81日 |
| 7時間00分 | 297日 | 68日 |
計算を1つ確かめます。1日8時間なら、260日 × 8時間 = 2,080時間で枠に収まります。261日にすると2,088時間になって超えます。だから最大260日、年間休日は105日です。
よく見る「年間休日105日が下限」は、1日8時間の会社の話です。1日7時間の会社なら、年間休日68日でも週40時間の枠には収まります。

そのうえで、休日そのものにも下限があります。労働基準法35条は、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないと定めています。年52週なので、どんな制度でも年52日から53日が絶対の下限です。
なお、週40時間は本来「週」ごとの規制なので、この年間の枠は目安です。実務では年間の所定労働時間がこの枠に収まるかで判断します。

85日は、全体のどこにいるのか
合法かどうかとは、別の話です。

厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査の概況」(令和7年12月19日公表・有効回答3,820社)が、令和6年1年間の年間休日総数を集計しています。
| 年間休日総数 | 企業割合 |
|---|---|
| 69日以下 | 1.1% |
| 70〜79日 | 1.8% |
| 80〜89日 | 3.0% |
| 90〜99日 | 5.2% |
| 100〜109日 | 27.9% |
| 110〜119日 | 21.4% |
| 120〜129日 | 37.3% |
| 130日以上 | 2.0% |
85日は「80〜89日」の帯です。この帯は3.0%。89日以下を全部足しても5.9%しかありません。
反対の端を見ると、120日以上が39.3%です。割合が高い帯は120〜129日の37.3%で、そこに4割近くが集まっています。
平均も出ています。1企業平均が112.4日(前年調査112.1日)、労働者1人平均が116.6日(同116.4日)。厚生労働省は、どちらも昭和60(1985)年以降で過去最多だとしています。

企業規模別に見ると、1,000人以上が117.7日、300〜999人が116.2日、100〜299人が114.5日、30〜99人が111.2日です。小さい会社でも111日を超えています。
「うちは中小だから」は、数字では説明になりません。
なお求人票の休日の書き方によっても、実際の日数は20日以上変わります。


自分の会社を確かめる順番
見る場所は3つです。

1つめは就業規則です。労働基準法89条1号により、休日は就業規則に必ず書かなければならない事項です。常時10人以上の労働者がいる会社なら、就業規則があり、労働者が見られる状態にしておく義務があります。
2つめは労使協定です。1年単位の変形労働時間制を使っている会社は、労使協定を結んで労働基準監督署へ届け出ています。対象期間、労働日、特定期間の有無が書かれています。
3つめは年間カレンダーです。1年単位の変形労働時間制では、あらかじめ労働日を特定しておく必要があります。年度初めに配られるカレンダーがそれにあたります。
この3つを突き合わせると、自分の会社が上の表のどの行にいるかが分かります。


違法だった場合にできること
罰則があります。労働基準法119条1号により、32条や35条に違反した者は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
申告先は労働基準監督署です。労働基準法104条1項で、事業場に違反の事実があるときは監督署に申告できると定められています。同条2項は、申告したことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています。
ただし、監督署が動くのは法令違反があるときだけです。合法だが少ない、という場合は対象になりません。

合法でも、辞める判断はできます
ここを分けて考えてください。

年間休日85日は、1日の所定労働時間が7時間20分なら合法です。1年単位の変形労働時間制でも合法です。でも、平均より27日少ないという事実は変わりません。
27日は、1年で4週間近くです。10年で270日、およそ9か月分になります。
法律に違反していないことと、その働き方を続けられることは、別の話です。監督署は前者しか扱いません。後者は自分で決めるしかありません。


辞めると決めたら、有給が残っているかを見ます
順番の話です。
年間休日が少ない会社ほど、有給が残りやすくなります。休みの日数が少ないので、消化する機会が回ってこないからです。
退職日までに使い切れるかどうかは、残日数と退職日で決まります。有給を取る日を指定するのは労働基準法39条により労働者側で、会社にあるのは事業の正常な運営を妨げる場合に他の日へ変えてもらう時季変更権だけです。退職日を越えて変更する先がないので、退職間際はこの権利が働きにくくなります。
自分で言い出せない場合は、交渉ができる相手に任せる方法があります。退職日や有給の交渉まで扱えるのは、労働組合が運営している場合と、弁護士が対応する場合だけです。民間企業が運営している場合は、辞めると伝えるところまでになります。


よくある質問
- 年間休日85日は違法ですか
-
制度によって変わります。1年単位の変形労働時間制なら、労働日数の限度が1年当たり280日(労働基準法施行規則12条の4第3項)なので、365日から引いた85日がちょうど下限です。違法ではありません。
通常の労働時間制度なら、1日の所定労働時間で決まります。1日8時間なら年間休日105日が下限なので、85日は違法です。1日7時間30分なら87日が下限なので、やはり違法です。1日7時間20分まで短ければ81日が下限になるので、85日は合法です。
- 年間休日105日が下限だと聞きました
-
1日8時間の会社の話です。労働基準法32条1項の週40時間を1年に引き直すと2,085.7時間で、これを8時間で割ると260.7日。365日から260日を引いて105日になります。
1日の所定労働時間が短ければ、下限も下がります。7時間45分なら96日、7時間30分なら87日、7時間なら68日です。求人票で年間休日だけを見ても足りないのは、この理由です。就業時間の欄と合わせて見てください。
- 年間休日の平均はどれくらいですか
-
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、令和6年1年間の年間休日総数は1企業平均112.4日、労働者1人平均116.6日です。前年調査はそれぞれ112.1日と116.4日で、どちらも昭和60(1985)年以降の過去最多を更新しています。
階級別で見ると、120〜129日が37.3%、100〜109日が27.9%、110〜119日が21.4%です。89日以下は合計5.9%です。
- 中小企業なら少なくても仕方ないのでは
-
規模別の数字が出ています。1企業平均の年間休日総数は、1,000人以上が117.7日、300〜999人が116.2日、100〜299人が114.5日、30〜99人が111.2日です。
最も規模の小さい30〜99人の区分でも111.2日あります。1,000人以上との差は6.5日です。規模で説明できるのはこの6.5日までで、85日との27日の差は説明できません。
- 会社の年間休日はどこで確認できますか
-
3つあります。1つめは就業規則です。労働基準法89条1号により休日は必ず記載する事項なので、常時10人以上の労働者がいる会社なら書かれています。
2つめは労使協定です。1年単位の変形労働時間制を採用している会社は、労働基準監督署に届け出ています。3つめは年度初めに配られる年間カレンダーです。この制度では労働日をあらかじめ特定する必要があるため、カレンダーが実質的な労働日の一覧になります。
- 違法だったら誰に言えばいいですか
-
労働基準監督署です。労働基準法104条1項により、事業場に法令違反の事実があるときは監督署に申告できます。同条2項は、申告したことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています。
罰則は119条1号にあり、32条や35条の違反は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。ただし監督署が動くのは法令違反があるときだけで、合法だが少ないという相談は扱えません。
- 祝日が休みでないのは違法ですか
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違法ではありません。労働基準法は祝日を休日にすることを求めていません。35条が定めているのは毎週少なくとも1回の休日、または4週間を通じて4日以上の休日だけです。
日本の祝日は年16日前後あるので、これが休みかどうかで年間休日は大きく変わります。年間休日120日の会社の多くは、土日104日に祝日16日を足した形です。85日の会社は、この16日が入っていないことがほとんどです。
- 休みが少なくて限界です
-
法律に違反していなくても、続けられないなら別の問題です。年間休日85日は1企業平均112.4日より27日少なく、1年で4週間近い差になります。
先に確かめるのは有給の残日数です。休日が少ない会社ほど有給が残りやすく、退職日までに使い切れるかで手取りが変わります。有給を取る日を指定するのは労働基準法39条により労働者側です。自分で言い出せないなら、交渉まで扱える相手に任せる方法があります。
まとめ:先に、自分がどの行にいるかを確かめます
整理します。
- 年間休日85日は、1年単位の変形労働時間制の下限そのもの(365日 − 280日)
- 通常の制度なら、下限は1日の所定労働時間で変わる。8時間なら105日、7時間30分なら87日
- どんな制度でも、毎週1回の休日は必要。年52日から53日が絶対の下限
- 実態は1企業平均112.4日。89日以下は5.9%、120日以上は39.3%
- 違法なら監督署に申告できる。合法なら、続けるかどうかは自分で決める
合法かどうかと、続けられるかどうかは別の問いです。先に自分の会社がどの行にいるかを確かめて、そのうえで決めてください。

