その固定残業代は、何時間ぶんですか。
即答できないなら、求人票を見直してください。
この記事でわかること
- 求人票に書くべき3項目が決まっていること
- 求人票のトラブルで最も多いのが賃金だったこと
- 区別できない固定残業代は、支払ったことにならないこと
- 45時間という数字の意味
結論:3つ全部が書いていないとおかしい
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークが出しているリーフレットに、こう書かれています。

固定残業代制を採用する場合は、募集要項や求人票などに、次の①〜③の内容すべてを明示してください。
① 固定残業代を除いた基本給の額
② 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
③ 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
「基本給25万円(みなし残業代含む)」だけの求人は、この形になっていません。
同じ資料に、記載例も載っています。
① 基本給(××円)(②の手当を除く額)
② □□手当(時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)
③ ○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
時間数と金額の両方が要ります。

求人票のトラブルは、賃金が1位です
これが感覚ではないことを示す数字があります。

同じリーフレットの参考資料です。
ハローワークにおける、求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に対する申出・苦情で、一番多い内容は「賃金に関すること(固定残業代を含む)」です。
厚生労働省職業安定局の平成27年度の調べです。民間の職業紹介を使った人の「求人条件と採用条件が異なっていた」という不満でも、同じく賃金が1位という結果でした(平成28年8月の調査)。
調査で1位ということは、それだけ起きているということです。だから確認の手間を惜しまないでください。

区別できないと、支払ったことになりません
すでに入社している人は、ここを見てください。

同じリーフレットが、裁判例を引いています。最高裁第一小法廷の平成24年3月8日判決です。
基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法第37条第1項の規定する時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することはできない(中略)月額41万円の基本給の支払を受けたとしても、その支払によって(中略)割増賃金が支払われたとすることはできない
もう一つ、東京地裁の平成20年3月21日判決も引かれています。
少なくとも労働者が自分が当月働いた分についてどれだけの時間外労働がなされ、それに対していくらの割増賃金が出ているのかを概算的にでも有効・適切に知ることができなければ、労使の合意に基づいた労働条件の中身としての賃金なり給与条件の合意が成立したことにはならない
給与明細を見て、固定残業代がいくらか分からないなら、そこが問題です。手当の名前が何であっても関係ありません。指針にも「名称のいかんにかかわらず」と書かれています。


45時間という数字の意味
「固定残業45時間」と書かれた求人があります。

これは偶然の数字ではありません。労働基準法36条4項が、限度時間を1か月45時間・1年360時間と定めています。その数字そのものです。
つまり毎月、限度時間いっぱいの残業を見込んでいるということです。年360時間の枠を、12か月で使い切る計算になります。
特別条項を結べばこれを超えられますが、そこにも上限があります。1か月100時間未満、1年720時間を超えない範囲で、45時間を超えられるのは年6か月以内です。
45時間は違法ではありません。ただし「その前提で募集している」という意味です。

超えた分は、必ず追加で払われます
固定残業代を払っていても、その時間を超えた分は別に発生します。
労働基準法37条1項です。
使用者が(中略)労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
さらに同じ項のただし書に、こうあります。
当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
月60時間を超えた部分は5割です。固定残業代の時間数を超えているのに何も足されていないなら、明細を確認してください。

求人票と実際が違ったら
入社してから気づくこともあります。

労働基準法15条2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。
契約期間の途中でも、待たずに辞められます。
ただし、これは辞める話です。払われていない残業代は、辞めても自動では戻りません。

未払いがあるなら、交渉できる相手を選んでください
ここは間違えると意味がありません。
未払い残業代の請求は、会社との交渉になります。退職の意思を伝えるだけの民間企業型では扱えません。
- 労働組合が運営する退職代行なら、団体交渉として扱えます
- 弁護士が対応するものなら、請求そのものを任せられます
「辞めるだけ」か「お金も取り返す」かで、選ぶ相手が変わります。


よくある質問
- 求人票に「みなし残業代含む」としか書いていません
-
3項目のうち2つが欠けています。厚生労働省のリーフレットでは、固定残業代を除いた基本給の額、時間数と金額の計算方法、超えた分は追加で支払う旨の3つすべてを明示するとされています。
応募する前に聞いてください。何時間ぶんでいくらか、超えたらどうなるか。この2点に即答できない求人は、入ってから揉めます。ハローワークへの苦情でも、賃金に関することが1位という調査結果が出ています(厚生労働省職業安定局調べ・平成27年度)。
- 固定残業代は違法ですか
-
制度そのものは違法ではありません。ただし条件があります。通常の労働時間の賃金に当たる部分と、割増賃金に当たる部分が判別できることです。
最高裁第一小法廷の平成24年3月8日判決では、判別できない場合には割増賃金が支払われたとすることはできない、と判断されています。給与明細を見て固定残業代がいくらか分からないなら、そこが問題です。
- 45時間は多すぎませんか
-
労働基準法36条の限度時間が、1か月45時間・1年360時間です。つまり固定残業45時間とは、毎月その上限いっぱいを見込んでいるということになります。
違法ではありません。ただし年360時間の枠を12か月で使い切る計算なので、それ以上働いた月がどう扱われるかを確認しておいてください。特別条項があっても、1か月100時間未満・1年720時間・45時間超は年6か月以内という上限があります。
- 固定残業の時間を超えても何も足されません
-
労働基準法37条1項で、時間外労働には2割5分以上5割以下の範囲で政令で定める率以上の割増賃金を支払わなければならないとされています。固定残業代の時間数を超えた分は、別に発生します。
さらに同項ただし書で、1か月60時間を超えた部分は5割以上とされています。明細に何も足されていないなら、勤怠の記録と給与明細を並べて確認してください。日付が残る形で記録しておくことが先です。
- 手当の名前が「営業手当」です
-
名前は関係ありません。指針では「名称のいかんにかかわらず」一定時間分の時間外労働等に対して定額で支払われる割増賃金を固定残業代として扱うとされています。
逆に、売上に応じて支給される手当のように、割増賃金と同じ性質を持たないものは固定残業代とは認められないと判断された裁判例もあります。何時間ぶんとして支給されているかが説明されているかどうかで見てください。
- 入社してから条件が違うと分かりました
-
労働基準法15条2項により、明示された労働条件が事実と相違する場合は、即時に労働契約を解除できます。契約期間の途中でも待つ必要はありません。
ただし辞めることと、払われていない残業代を取り戻すことは別の話です。求人票、労働条件通知書、給与明細、勤怠の記録をそろえてください。辞めてからだと取り寄せに時間がかかります。
- 未払い分を請求したいのですが
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会社との交渉になります。ここが重要で、退職の意思を伝えるだけの民間企業型の退職代行では扱えません。
労働組合が運営するものなら団体交渉として扱えますし、弁護士が対応するものなら請求そのものを任せられます。「辞めるだけ」なのか「お金も取り返す」のかで、選ぶ相手が変わります。金額が大きいほど、後者を検討する価値があります。
- 証拠になるものは何ですか
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求人票の写し、労働条件通知書や雇用契約書、給与明細、勤怠の記録です。求人サイトの画面を保存しておくのも材料になります。
勤怠の記録が手に入らない場合は、自分でつけたメモでも構いません。出社した時刻と退社した時刻を、日付が残る形で残してください。毎日でなくても、2週間分あれば傾向は見えます。
- 転職先を探すとき、何を見ればいいですか
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3項目が書かれているかを見てください。基本給がいくらか、固定残業代が何時間分でいくらか、超えた分は追加で支払われるか。この3つがそろっている求人は、少なくとも指針どおりの表示をしています。
書かれていない場合は、面接で聞いても構いません。答えられない、はぐらかされるという反応そのものが判断材料になります。
まとめ:3項目がそろっているかを見てください
整理します。
- 求人票には3項目すべてを明示することになっている(厚生労働省のリーフレット)
- 求人票の記載と実際が違うという苦情で、賃金が1位だった
- 通常の賃金と割増賃金が判別できないと、支払ったことにならない(最高裁 平成24年3月8日)
- 45時間は36協定の限度時間そのもの。毎月それを見込んでいるということ
「基本給25万円(みなし残業代含む)」は、そろっていません。
応募の前なら聞けます。入社した後なら、明細と勤怠を並べてください。

