親の介護が始まりました。
仕事を続けられる気がしません。
この記事でわかること
- 介護休業は通算93日を3回まで分割して取れること
- 雇用保険から賃金の67%が出ること
- 申し出れば取れるもので、会社の許可制ではないこと
- 有期契約でも取れる場合があること
結論:辞める前に、93日あります
育児・介護休業法11条に、こう書かれています。
労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。

申し出れば取れます。会社が許可するかどうかの話ではありません。
日数は同じ条文の2項に書かれています。対象家族1人について3回の介護休業をした場合、または介護休業の日数が93日に達した場合は、それ以上は申し出られないという形です。
裏を返せば、そこまでは取れます。
そして雇用保険から給付金が出ます。雇用保険法61条の4の本則は賃金日額の40%ですが、同じ法律の附則12条にこうあります。
介護休業を開始した被保険者に対する第六十一条の四第四項の規定の適用については、当分の間、同項中「百分の四十」とあるのは、「百分の六十七」とする。
当分の間、67%に引き上げられています。

休業中に給与が出ると、その分は減ります
同じ条文の5項に、調整の規定があります。
休業中に会社から賃金が支払われた場合、その賃金と給付金の合計が、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じた額の80%以上になるときは、80%に相当する額から賃金を引いた額が給付金になります。賃金だけで80%以上あるときは、給付金は支給されません。
会社から一部でも給与が出るなら、額を確認してから休業の形を決めてください。
93日は「介護をする期間」ではありません
ここを取り違えると、制度が役に立ちません。

93日で介護が終わるわけがありません。この期間は、自分が介護をするための時間ではなく、介護の態勢を作るための時間です。
やることは、たとえばこうなります。
| 期間 | やること |
|---|---|
| 最初の数週間 | 要介護認定の申請、ケアマネジャーとの面談 |
| 中盤 | サービスの内容と曜日を決める、費用を把握する |
| 終盤 | 自分が仕事を続けられる形になっているか確かめる |
態勢ができれば、仕事は続けられます。逆に、態勢を作らないまま辞めると、介護が終わったあとに収入も職歴も無い状態が残ります。

3回に分けられるのが効きます
同じ条文で、3回まで分割できることになっています。
介護は、状況が動くたびに手が要ります。始まったとき、サービスを組み直すとき、先を決めるとき。その山ごとに分けて使えます。
一度に93日を使い切る必要はありません。

対象家族は、条文に書かれています
「うちの場合は対象になるのか」がまず気になるところです。

育児・介護休業法2条4号に、こうあります。
配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう。
自分の親も、配偶者の親も入っています。事実婚の相手も含まれます。
もう一つ、「要介護状態」の定義も条文にあります。
負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう。
介護保険の要介護認定とは別の概念です。認定が出ていないから取れない、という話ではありません。

入院していなくても取れます
「入院していないと取れないのでは」と考える方がいますが、条文にも判断基準にも、入院という要件はありません。
厚生労働省の常時介護を必要とする状態に関する判断基準では、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態が前提とされたうえで、次のどちらかに当てはまるかで判断するとされています。
| 判断のしかた | |
|---|---|
| (1) | 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること |
| (2) | 座位保持・歩行・排泄・意思の伝達など12項目のうち、「2」が2つ以上または「3」が1つ以上該当し、その状態が継続すると認められること |
(1)か(2)のどちらかです。要介護認定が出ていなくても、(2)で判断されます。
そして同じ資料に、こう書かれています。
この基準に厳密に従うことにとらわれて労働者の介護休業の取得が制限されてしまわないように、介護をしている労働者の個々の事情にあわせて、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるよう、事業主は柔軟に運用することが望まれます。
在宅で介護している場合も、当然この中に入ります。
有期契約でも取れる場合があります
契約社員やパートの方は、ここを見てください。

11条1項のただし書です。
期間を定めて雇用される者にあっては、(中略)介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
読みにくい書き方ですが、「その頃に契約が終わることが決まっている人」以外は申し出られるという意味です。
「有期だから無理」と言われたら、この条文を確認してください。


休んだことを理由に不利益な扱いはできません
言い出せない理由が、たいていここにあります。

育児・介護休業法16条です。
事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
解雇だけではありません。「その他不利益な取扱い」なので、減給、降格、配置転換なども入ります。
言われた日付と内容は、その日のうちにメモしてください。申出の前と後で扱いがどう変わったかが、あとで効きます。

休業まで要らない場合の制度もあります
93日を使うほどではない、という段階もあります。
同じ法律に、こういう制度があります。
| 制度 | 条文 | 中身 |
|---|---|---|
| 介護休暇 | 16条の5 | 1年度に5労働日(対象家族が2人以上なら10労働日)。時間単位でも取れる |
| 所定外労働の制限 | 16条の9 | 請求すれば所定労働時間を超えて働かせてはならない。ただし条件あり |
介護休暇は時間単位で取れます。ケアマネジャーとの面談や、病院の付き添いに使えます。
年度は、会社が別に定めていなければ4月1日から翌年3月31日までです。
所定外労働の制限のほうは、条件が3つ付きます。16条の9が準用している16条の8に、こう書かれています。
- 労使協定で、勤続1年未満の労働者などを対象外と定めることができる
- 事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない
- 請求は制限開始予定日の1か月前まで。期間は1か月以上1年以内
「言えば必ず免除される」ではありません。ただし請求の権利そのものは法律にあります。

それでも辞めることにしたなら
態勢を作っても、続けられないことはあります。
その場合も、辞める順番だけは崩さないでください。在職中にしかできない手続きがあります。
- 介護休業給付金は、休業していることが前提です
- 離職後の手続きは、辞めてからでは間に合わないものがあります
辞めると決めてからでも、93日の休業を先に使うことはできます。その間に手続きを済ませておくほうが、あとが楽になります。


よくある質問
- 介護休業は何日取れますか
-
対象家族1人につき通算93日です。育児・介護休業法11条2項で、その対象家族について3回の介護休業をした場合、または介護休業の日数が93日に達した場合は、それ以上申し出られないとされています。
裏を返せば、そこまでは取れます。3回まで分割できるので、入院、退院、施設の入所といった山ごとに分けて使えます。一度に使い切る必要はありません。
- 会社が認めてくれません
-
介護休業は、申し出ることによって取得するものです。育児・介護休業法11条1項に「労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる」と書かれています。会社の許可制ではありません。
さらに16条で、介護休業を申し出たこと、または取得したことを理由に解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。言われた日付と内容をメモに残してください。
- お金はいくら出ますか
-
雇用保険から介護休業給付金が出ます。雇用保険法61条の4の本則は休業開始時賃金日額の40%ですが、同法附則12条により、当分の間67%に引き上げられています。
支給には雇用保険の被保険者期間などの条件があります。計算の基礎になる賃金日額には上限と下限が定められている(同法17条4項)ので、正確な額はハローワークで確認してください。
休業中に会社から賃金が出た場合は調整されます。賃金と給付金の合計が賃金日額×支給日数の80%以上になると、その分だけ給付金が減り、賃金だけで80%以上あるときは支給されません。また4回目以後の介護休業と、93日に達した日より後の介護休業には支給されません。休業していることが前提なので、辞めてしまうと対象になりません。
- 対象になる家族の範囲は
-
育児・介護休業法2条4号では、配偶者、父母、子、配偶者の父母が挙げられています。配偶者には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある人も含まれます。
自分の親も配偶者の親も対象です。これ以外に、厚生労働省令で定めるものも含まれるとされているので、当てはまるか分からない場合は勤務先か労働局に確認してください。
- 要介護認定が出ていません
-
介護休業でいう「要介護状態」は、介護保険の要介護認定とは別の概念です。育児・介護休業法2条3号では、負傷、疾病、身体上または精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態と定義されています。
厚生労働省の判断基準でも、要介護2以上であることと、12項目による判断のどちらかに当てはまればよいとされています。認定が出ていないから取れない、という話ではありません。むしろ認定の申請そのものが、休業期間中にやることの一つです。
- 入院していないと取れませんか
-
そんなことはありません。条文にも判断基準にも、入院という要件はありません。在宅で介護している場合も対象です。
厚生労働省の判断基準では、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態が前提とされ、要介護2以上であるか、または12項目のうち「2」が2つ以上か「3」が1つ以上該当して継続すると認められるか、のどちらかで判断するとされています。同じ資料には、基準に厳密に従うことにとらわれて取得が制限されないよう、事業主は柔軟に運用することが望まれる、とも書かれています。
- 契約社員ですが取れますか
-
取れる場合があります。育児・介護休業法11条1項のただし書では、介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでない人に限り、申し出ることができるとされています。
つまり「その頃に契約が終わることが決まっている人」以外は申し出られます。「有期だから無理」と言われた場合は、この条文を確認してください。
- 93日で介護が終わるとは思えません
-
終わりません。93日は自分で介護をするための期間ではなく、介護の態勢を作るための期間だと考えてください。
要介護認定の申請、ケアマネジャーとの面談、サービスの内容と曜日を決めること、費用の把握。ここまで進めば、仕事を続けられる形が見えてきます。態勢を作らないまま辞めると、介護が終わったあとに収入も職歴も無い状態が残ります。
- 休むほどではないのですが
-
介護休暇があります。育児・介護休業法16条の5で、1年度に5労働日、対象家族が2人以上なら10労働日を限度として取得できるとされています。時間単位でも取れます。
年度は、会社が別に定めていなければ4月1日から翌年3月31日までです。ケアマネジャーとの面談や病院の付き添いのように、半日で済む用事に向いています。
- 残業を減らすことはできますか
-
請求できます。育児・介護休業法16条の9で、要介護状態の対象家族を介護する労働者について、所定外労働の制限の規定が準用されています。請求すれば、事業主は所定労働時間を超えて働かせてはならないとされています。
ただし条件が3つあります。労使協定で勤続1年未満の労働者などを対象外と定められること、事業の正常な運営を妨げる場合は適用されないこと、請求は制限開始予定日の1か月前までにすることです。「言えば必ず免除される」ではありませんが、請求の権利そのものは法律にあります。
まとめ:辞める前に、条文を確認してください
整理します。
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日、3回まで分割できる(育介法11条)
- 申し出れば取れる。会社の許可制ではない
- 給付金は賃金日額の67%(雇用保険法附則12条による暫定措置)
- 申出や取得を理由とする不利益な取扱いは禁止(同16条)
93日は、介護をする期間ではなく態勢を作る期間です。
辞めてしまうと、給付金の対象からも外れます。順番を変えてください。
