相談したい。でも会社に伝わったら、いまより悪くなりそうです。
その心配で止まっている人がいます。
この記事でわかること
- 「相談」と「申告」はまったく別物だということ
- 相談だけなら匿名でできること
- 申告すると調査が入るので、気づかれる可能性はあること
- それでも不利益な扱いは法律で禁止されていること
結論:相談と申告は、別物です
ここを分けないと話が進みません。

| 中身 | 会社に伝わるか | |
|---|---|---|
| 相談 | 話を聞いてもらう。助言を受ける | 匿名でできる |
| 申告 | 法令違反を申し出て、行政指導を求める | 調査が入るので、気づかれる可能性がある |
怖がられているのは「申告」のほうです。でも最初にやるのは相談で、そこは匿名で構いません。
相談だけなら、名乗らなくていい
総合労働相談コーナーは、匿名での相談を受け付けています。
厚生労働省の案内でも、大阪労働局の案内でも、匿名で相談できるとされています。
名乗らなければ、会社に伝わりようがありません。
「これは違法なのか」「自分のケースはどう扱われるのか」を聞くだけなら、ここで足ります。

申告すると、調査が入ります
正直に書きます。申告すれば、会社は「誰かが言った」と気づく可能性があります。

労働基準法104条に、こう書いてあります。
事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる
申告を受けると、労働基準監督官が事業場で使用者や関係者に聞き取りをして事実を確認します。違反が確認されれば、是正の指導が入ります。
調査そのものは、会社に分かります。これは隠せません。

ただし、監督官には守秘義務があります
同じ労働基準法の105条です。
労働基準監督官は、職務上知り得た秘密を漏してはならない。労働基準監督官を退官した後においても同様である。
誰が申告したかを、監督官が会社に伝えることはありません。退官したあとも同じです。
調査が入ったことは分かっても、誰が言ったかまでは伝わりません。ここが分かれ目です。

それでも気づかれたら、どうなるか
小さい事業所だと、内容から誰か推測されることはあります。

そこで効くのが104条の2項です。
使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
申告したことを理由に、解雇したり不利益な扱いをすることは禁止されています。
「解雇その他不利益な取扱」なので、辞めさせることだけではありません。配置転換、減給、仕事を回さない、といった扱いも含まれます。

どこまでが「不利益な取扱」か
条文は「解雇その他不利益な取扱」としか書いていません。中身は書かれていないので、実際にはこういうものが当たると考えられます。
| 起きたこと | 見るところ |
|---|---|
| 配置転換 | 申告の前後で、業務内容や勤務地が変わったか |
| 減給・降格 | 評価の理由が説明されたか |
| シフトを減らされた | 申告前の平均と比べて何時間減ったか |
| 仕事を回されなくなった | 担当の件数が変わったか |
共通しているのは「申告の前と後で比べられるか」です。だから前の状態が分かる記録が要ります。
記録は残しておいてください
法律で禁止されていても、実際に起きることはあります。
起きたときに必要なのは記録です。
- 申告した日
- そのあと扱いが変わった日
- 誰に何を言われたか
日付と、誰が何をしたか。この2つで足ります。スマホのメモで構いません。

窓口は3つあります
どこに行けばいいか分からない、という声が多いので分けておきます。

| 窓口 | 扱うもの |
|---|---|
| 総合労働相談コーナー | 労働問題全般。いじめ・嫌がらせ、解雇、雇止めなど。匿名可 |
| 労働基準監督署 | 労働基準法違反。残業代の未払い、違法な長時間労働など。申告できる |
| 労働基準関係情報メール窓口 | 労働基準関係法令違反の情報提供 |
出典は労働基準行政の相談窓口です。
監督署は「取り締まる場所」ではありません
労働基準監督署に行くと会社が罰せられる、と思っている人がいます。
まず入るのは是正の指導です。違反が確認されれば直すよう指導があり、それで改善すれば終わります。
いきなり刑事罰になるわけではないので、「大ごとにしたくない」という理由で行かないのは、もったいないと思います。
それに、申告があったからといって、その場ですぐ会社へ乗り込むわけでもありません。定期的な調査のタイミングに合わせて入ることもあります。そうなると、いつの申告によるものかは会社にも分かりません。

迷ったら総合労働相談コーナーから
労働基準法違反かどうかを、自分で判断する必要はありません。
総合労働相談コーナーで話せば、監督署に行くべき話なのか、別の手続きが要る話なのかを教えてもらえます。匿名で聞けるので、そこで止めても構いません。

相談する前に、そろえておくもの
手ぶらで行っても話は聞いてもらえます。ただ、あると話が早くなります。

- 給与明細(何か月分か)
- 雇用契約書か労働条件通知書
- 勤務時間が分かるもの(タイムカードの写し、シフト表、自分でつけた記録)
- 言われたことのメモ(日付つき)
在職中なら、どれも手に入ります。辞めてからだと、取り寄せに時間がかかります。
タイムカードが手に入らない場合は、自分でつけた記録でも構いません。
- 出社した時刻と、退社した時刻
- 休憩が取れたかどうか
- その日の担当や、荷物の量
毎日でなくて構いません。2週間ぶんでも、傾向は見えます。手帳でもスマホのメモでも、日付が残る形なら足ります。

よくある質問
- 匿名で相談できますか
-
総合労働相談コーナーは匿名での相談を受け付けています。厚生労働省と各労働局の案内にそう書かれています。名乗らずに「こういう状況なのですが違法ですか」と聞くだけなら、会社に伝わりようがありません。ただし匿名だと、具体的な調査には進めません。会社を動かしたいなら、どこかの段階で名乗る必要が出てきます。まず匿名で聞いて、そのうえで決めれば十分です。
- 申告したら会社にバレますか
-
申告すると労働基準監督官が事業場で聞き取りをするので、調査が入ったこと自体は会社に分かります。ただし誰が申告したかは伝わりません。労働基準法105条で、労働基準監督官は職務上知り得た秘密を漏らしてはならないと定められていて、これは退官した後も続きます。小さい事業所だと内容から推測されることはありますが、名前が伝えられることはありません。
- バレて不利益な扱いを受けたら
-
労働基準法104条2項で、申告したことを理由に解雇その他不利益な取扱をすることは禁止されています。解雇だけでなく、配置転換や減給、仕事を回さないといった扱いも含まれます。ただし禁止されていても実際に起きることはあるので、記録を残してください。申告した日、扱いが変わった日、誰に何を言われたか。この3つで足ります。
- 相談したら、必ず申告することになりますか
-
なりません。相談は話を聞いてもらう段階で、そこで終えても構いません。違法かどうかを確かめるだけ、どんな選択肢があるかを聞くだけ、という使い方ができます。申告するかどうかは、聞いたあとで自分が決めることです。相談員から強制されることはありません。
- どの窓口に行けばいいか分かりません
-
総合労働相談コーナーから始めてください。労働問題全般を扱っていて、労働基準法違反かどうかの判断も含めて相談できます。そこで話せば、労働基準監督署に行くべき話なのか、別の手続きが要る話なのかを教えてもらえます。自分で振り分ける必要はありません。
- もう辞めたあとでも相談できますか
-
できます。未払い賃金や、離職票が出ないといった問題は、辞めたあとに出てくることが多いものです。ただし証拠は在職中のほうが集めやすいので、辞める前に給与明細やシフト表を控えておくほうが有利です。辞めたあとに取り寄せようとすると、会社が応じないことがあります。
- 何を持っていけばいいですか
-
給与明細、雇用契約書か労働条件通知書、勤務時間が分かるもの、言われたことのメモ。この4つがあれば話が早く進みます。手ぶらでも相談自体はできますが、実際の時間や金額が分からないと、相談員も判断のしようがありません。タイムカードが手に入らないなら、自分でつけた記録でも構いません。
- 電話でも相談できますか
-
できます。総合労働相談コーナーは全国の労働局と労働基準監督署内に設置されていて、電話でも受け付けています。窓口に行く時間が取れない人でも使えます。まず電話で聞いて、必要なら窓口に行く形で構いません。
まとめ:相談だけなら、匿名でできます
会社に伝わるのが怖くて止まっている人へ、整理します。
- 相談は匿名でできる。名乗らなければ伝わりようがない
- 申告すると調査が入るので、調査自体は会社に分かる
- ただし監督官には守秘義務がある(労働基準法105条)。誰が言ったかは伝わらない
- 仮に気づかれても、申告を理由とした不利益な取扱いは禁止(同104条2項)
「絶対にバレない」とは書けません。でも、バレたときに備えた条文が用意されているというのが正確なところです。
迷ったら総合労働相談コーナーです。匿名で聞いて、そこで止めても構いません。

