9月末で辞める、と決めました。
では、退職日は9月30日でしょうか。それとも9月29日でしょうか。
この記事でわかること
- 1日ずらすと社会保険料が1か月分変わる理由
- 「前日に辞めれば得」が成り立たない場合があること
- 最後の給料が少なくなる仕組み
- そもそも退職日を自分で決められない人がいること
結論:1日で1か月分変わります。ただし得とは限りません
資格を失うのは、退職日の翌日です。

そして資格を失った月の保険料は、かかりません。だから1日の差で、9月分がかかるかかからないかが分かれます。
| 退職日 | 資格喪失日 | 9月分の社会保険料 |
|---|---|---|
| 9月30日 | 10月1日 | かかる |
| 9月29日 | 9月30日 | かからない |
ここまで読んで「じゃあ29日だ」と思った方は、もう少し待ってください。次が決まっているなら、逆に損をします。
そしてこの話には前提があります。退職日を自分で決められること。会社に日付を指定されて動かせない人は、そもそもこの計算ができません。

なぜ1日で変わるのか
社会保険料は日割りになりません。月単位で、その月に被保険者だったかどうかだけで決まります。
だから何日働いたかではなく、何日に辞めたかで1か月分が動きます。根拠になる条文は3つです。
資格を失うのは「退職日の翌日」
健康保険法36条にこうあります。
被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(中略)から、被保険者の資格を喪失する。
二 その事業所に使用されなくなったとき。
厚生年金保険法14条も同じ書き方です。
退職した日ではなく、その翌日。9月30日に辞めれば、資格を失うのは10月1日になります。9月29日に辞めれば9月30日です。
資格を失った月の保険料は、かかりません
健康保険法156条3項です。
前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない
厚生年金も同じ結論です。19条1項で、被保険者期間は「その資格を喪失した月の前月まで」と決められています。
この2つを重ねると、こうなります。
- 9月30日退職 → 喪失は10月 → 9月までが被保険者 → 9月分がかかる
- 9月29日退職 → 喪失は9月 → 8月までが被保険者 → 9月分はかからない
1か月分がいくらか
金額を出します。標準報酬月額30万円・東京都・40歳未満の場合です(2026年8月時点の料率)。
| 本人負担の率 | 月額 | |
|---|---|---|
| 健康保険+子ども・子育て支援金 | 5.04% | 15,120円 |
| 厚生年金 | 9.15% | 27,450円 |
| 合計 | 42,570円 |
厚生年金の18.3%は厚生年金保険法81条4項の表そのものに書かれています。
健康保険料率9.85%と子ども・子育て支援金0.23%は、協会けんぽ東京支部の令和8年度の率です。
保険料は会社と折半なので、その半分が本人負担になります。
40歳以上65歳未満なら、介護保険料率1.62%の半分が上乗せされます。都道府県と標準報酬月額で額は変わるので、自分の給与明細で確かめてください。

「浮く」のではなく「置き換わる」だけです
ここが、多くの記事が書いていないところです。

9月29日に辞めても、9月30日に無保険になるわけではありません。その日から国民健康保険と国民年金の第1号被保険者になります。
そして国民年金は、その月の末日にどの制度にいたかで決まる仕組みです。9月30日に第1号なら、9月分の国民年金保険料がまるごとかかります。
日本年金機構によれば、令和8年度は月17,920円です。
国民健康保険も9月分がかかります。こちらは自治体と前年の所得で変わるので、ここに金額は書けません。市区町村のサイトに試算のページがあるので、そこで出してください。
つまり会社の社会保険が消えるのではなく、国民年金と国保に置き換わるだけです。
切り替えの手続きには期限があります。過ぎた場合の扱いも決まっています。

将来の年金も1か月分減ります
もう一つ、見落とされやすい点があります。
厚生年金の被保険者期間が1か月減ると、将来受け取る老齢厚生年金もその分だけ減ります。国民年金を納めれば老齢基礎年金の月数は埋まりますが、報酬に比例する部分は埋まりません。
1か月なので大きな額ではありません。ただ「単純に得をした」ではない、ということです。加入期間が受給資格の10年ぎりぎりという人は、月数そのものが効いてくるので注意してください。


次が10月1日入社なら、9月30日一択です
ここが結論です。

9月30日に退職すれば、資格喪失は10月1日。同じ日に次の会社で資格を取得します。空白がゼロなので、国保の手続きも国民年金の納付も発生しません。
9月29日に退職すると、9月30日の1日だけ第1号被保険者になります。その1日のために、9月分の国民年金17,920円を納めることになります。国保の加入手続きも要ります。
たった1日のために、1か月分です。
次が決まっていない場合は、比べる話になります。会社の社会保険(試算42,570円)と、国民年金17,920円+国保。国保の額しだいで答えが変わります。

最後の給料が少なくなることがあります
日付とは別に、知っておいたほうがいい仕組みです。

健康保険法167条1項に、こう書かれています。
事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。
ふだんは前月分だけを引いている会社が、退職のときだけ、前月分とその月分をまとめて引けます。
だから最後の給料だけ、手取りが大きく減ることがあります。
ただし必ず2か月分になるわけではありません。当月分をその月に引いている会社なら1か月分です。自分の会社がどちらかは、給与明細を2か月並べれば分かります。
住民税がまとめて引かれる月とも重なりやすいので、最終月は控除欄を全部見ておいてください。

そもそも、その日で決められますか
ここまでは、退職日を自分で決められる人の話です。

実際には、こう言われる人がいます。
- 「9月30日は締めがあるから、9月15日にしてくれ」
- 「繁忙期だから12月まで待ってほしい」
- 「引き継ぎが終わるまで日付は決められない」
日付が決まらないと、保険も次の入社日も動かせません。
民法627条1項では、期間の定めのない雇用は申し入れから2週間で終了します。就業規則に「1か月前」と書いてあっても、法律のほうが優先します。
つまり、日付を決める権利はこちらにあります。

ただし、言えるかどうかは別の問題です。言っても話が終わらないこともありますし、そもそも切り出せないこともあります。そういう場合は、間に入ってもらったほうが早く片づきます。
有給が残っているなら、先に日数を確認してください
退職日は、有給消化の最終日になります。だから残日数を知らないまま日付を伝えると、有給が余ります。
余った分は原則として買い取ってもらえません。順番は、残日数の確認が先です。



よくある質問
- 月末の前日に辞めたほうが得ですか
-
次が決まっていないなら、そうなる場合もあります。9月29日退職なら資格喪失が9月30日になり、健康保険法156条3項により9月分の社会保険料はかかりません。
ただし9月30日から国民健康保険と国民年金の第1号になるので、9月分の国民年金17,920円と国保がかかります。会社の社会保険の本人負担(標準報酬月額30万円・東京・40歳未満で試算42,570円)と比べて、どちらが安いかで決まります。次が10月1日入社なら、9月30日退職のほうが有利です。
- 9月30日と10月1日では何が変わりますか
-
10月1日退職にすると資格喪失は10月2日になり、10月分の社会保険料までかかります。
標準報酬月額30万円・東京・40歳未満なら、試算で42,570円が増える計算です。たった1日で1か月分です。
次が決まっていないなら、月をまたがない9月30日のほうが負担は軽くなります。
次の入社が10月1日でも9月30日退職なら空白はゼロです。どちらの場合も9月30日が基準になります。
- 退職日は自分で決められますか
-
期間の定めのない雇用なら、民法627条1項により申し入れから2週間で終了します。就業規則に「1か月前」と書かれていても法律が優先します。
ただし実務では、締め日や引き継ぎを理由に別の日を提案されることがあります。提案されること自体は問題ありませんが、こちらが決めた日を会社が拒否できるわけではありません。伝えるときに日付を先に出すと、話が早く進みます。9月30日を退職日にしたいなら、8月31日までに申し入れておくと就業規則の1か月前にも間に合います。
- 最後の給料が半分近くになりました
-
社会保険料が2か月分引かれている可能性があります。健康保険法167条1項では、退職の場合に限り前月分とその月分をまとめて控除できるとされています。ふだん前月分だけを引いている会社なら、退職月だけ2か月分です。
標準報酬月額30万円なら、試算42,570円が倍の85,140円になります。給与明細の控除欄を前月と見比べてください。住民税がまとめて引かれている場合もあるので、社会保険料と住民税の両方を確認するのが確実です。
- 有給を消化してから辞める場合、退職日はどこですか
-
有給消化の最終日が退職日です。最終出社日ではありません。だから残日数を確認してから退職日を決める必要があります。
有給が20日残っていれば、土日を挟んでおおむね1か月動きます。9月30日を退職日にするなら、最終出社は9月上旬です。順番を逆にして退職日を先に決めると、有給が余ります。余った分は原則として買い取ってもらえないので、逆算の順番だけは崩さないでください。
- 40歳以上だと金額は変わりますか
-
変わります。40歳から64歳までは介護保険料がかかります。令和8年度は全国一律1.62%で、会社と折半なので本人負担は0.81%です。
標準報酬月額30万円なら月2,430円が上乗せされ、合計は試算45,000円になります。都道府県によって健康保険料率も違うので、正確な額は給与明細か、協会けんぽの保険料額表で確かめてください。65歳になると給与からの控除ではなくなります。
- 会社に9月15日にしてくれと言われました
-
締め日の都合で提案されることがあります。ただし応じる義務はありません。民法627条1項により、申し入れから2週間経てば雇用は終了します。
日付を早められると、9月分の社会保険が国保と国民年金に変わり、次の入社日との間に空白が出ます。困る理由があるなら、そのまま伝えてください。話が平行線になる場合は、間に入ってもらう方法もあります。伝えた日と言われた内容は、メモに1行残しておいてください。
- 国民健康保険の額はどこで分かりますか
-
市区町村のサイトに試算ページがあることが多いです。前年の所得と世帯の人数で決まるので、全国一律の金額はありません。窓口でも計算してもらえます。
退職日を決める前に一度出しておくと、9月29日と9月30日のどちらが有利かを数字で比べられます。任意継続や家族の扶養に入る選択肢もあり、任意継続は退職日の翌日から20日以内という期限があるので、あわせて確認しておいてください。
まとめ:日付を決める順番があります
整理します。
- 資格を失うのは退職日の翌日(健康保険法36条・厚生年金保険法14条)
- 喪失した月の保険料はかからない(健康保険法156条3項)。だから1日で1か月分変わる
- ただし浮くのではなく置き換わる。9月30日に第1号なら国民年金17,920円がかかる
- 次が10月1日入社なら、9月30日退職一択。1日早めると1か月分損をする
そして全部の前提が、退職日を自分で決められることです。
日付が決まらないまま8月が終わると、9月末退職そのものが崩れます。話が進まないなら、先に日付だけ確定させてください。

