辞めると決めたあと、次に止まるのがここです。
誰に言えばいいのか。
この記事でわかること
- 原則は直属の上司。その理由
- 上司を飛ばしてよい場合と、飛ばすとどうなるか
- いつ・どこで・何と言うか
- 同僚に先に言うと何が起きるか
結論:直属の上司です。ただし例外があります
先に順番を出します。
| 状況 | 最初に言う相手 |
|---|---|
| 通常 | 直属の上司 |
| 上司がハラスメントの当事者 | その上の役職者、または人事 |
| 上司が長期不在 | 上司の代行者。いなければ人事 |
| 会社が小さく、上司=社長 | 社長 |
| 出社できない状態 | 誰にも直接言わずに進める方法があります |
辞めると決まっているなら、この表のどれに当たるかを先に決めてください。 相手が決まらないまま日が過ぎるのが、いちばん時間を使います。
法律には「誰に言うか」の定めがありません。 民法627条は「各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる」としか書いていないので、会社に意思が届けばそれで成立します。
役所に出す書類と同じだと考えてください。
窓口を間違えても、受け取ってもらえれば手続きは進みます。ただし正しい窓口へ持っていったほうが、早く終わります。 間違えた窓口では「そこはうちじゃない」と言われて戻され、そのぶん日数を損します。
つまり順番は法律の問題ではなく、話をこじらせないための実務です。
伝えるところで止まっているなら、その工程だけ外に出せます。退職代行辞スルは24時間受付で、料金は正社員が税込22,000円、パート・アルバイトが18,000円です(2026年8月時点)。


なぜ直属の上司が先なのか
理由は3つあります。どれも「あなたのため」ではなく「話を短くするため」です。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 手続きを動かせる人だから | 退職届の受理も、人員の調整も、まず現場の長が動きます |
| 飛ばされると態度が硬くなるから | 「自分は聞いていない」が引き止めの理由になります |
| 就業規則がそう書いてあることが多いから | 「所属長に申し出る」といった条文が入っています |
2つ目が実務では一番効きます。筋を通したかどうかで、その後の1か月が変わります。
ただし、これは相手が普通に話を聞く人である場合の話です。

上司を飛ばしてよい場合
原則には例外があります。
① 上司がハラスメントの当事者
その人に相談させる制度設計になっていません。 パワハラ防止法(労働施策総合推進法30条の2)で、事業主には相談窓口を整える義務があります。
窓口があるなら、そこか人事です。上司の上の役職者でも構いません。このとき、なぜ直属を飛ばしたのかを一言添えてください。 「直属の上司との間で相談しにくい事情があるため」で足ります。
② 上司が長期不在
出張、休職、退職などで数週間つかまらないことがあります。待っている間も、退職日から逆算した締切は動きません。
代行者がいればその人、いなければ人事へ。「上司が不在のため、先に人事へお伝えします」と言えば筋は通ります。
③ 出社できない状態
体調で出社できないなら、そもそも直接会って言う前提が成り立ちません。
この場合、電話でもメールでも構いません。記録が残る形のほうが、あとで有利になります。


いつ、どこで言うか
相手が決まったら、次は場面です。

いつ … 就業時間内。始業直後と終業間際は避ける
どこ … 会議室など、他の人に聞こえない場所
長さ … 5分で足ります。長く話すほど引き止めの材料が増える
「少しお時間よろしいですか」で始めてください。 立ち話で切り出すと、その場で「考え直せ」と言われて終わります。
繁忙期の真っ最中を避けるかどうかは、自分の締切と相談です。避けられるなら避けたほうが穏便ですが、締切のほうが優先します。
何と言うか
短くて構いません。説明を足すほど、反論の余地が増えます。
「退職させていただきたく、ご相談に参りました。
退職日は○月○日を考えています」
日付を先に出すのが効きます。 「辞めたいのですが」だけだと相談として扱われ、話が延びます。日付が入ると、そこから逆算する話に変わります。
理由は「一身上の都合」で足ります。労働基準法22条で退職時の証明書を請求できますが、そこに書く事項は労働者が請求したものだけです(同条3項)。会社に理由を説明する義務はありません。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
引き止められたときに、その場で答えないでください
伝えた直後に、条件の話が出ることがあります。
| 出てくる話 | 実際に確かめること |
|---|---|
| 「給料を上げる」 | いつから、いくら、書面で出るのか |
| 「異動させる」 | 時期と行き先が決まっているのか |
| 「あと3か月だけ」 | その3か月で何が変わるのか |
その場で「考えます」と答えて、持ち帰ってください。 即答すると、条件の中身を確かめないまま話が進みます。
そして、口頭の約束は残りません。 給料や異動の話が出たなら、書面で出してもらってください。出せないなら、実行される見込みは低いと考えたほうが確実です。
引き止めが理由で止まっているなら、そこは外に出せます。

同僚に先に言うと、順番が壊れます
これはよく起きます。
同僚に相談した内容は、上司に伝わると考えてください。 悪意がなくても伝わります。
| 先に同僚へ言った場合 | 起きること |
|---|---|
| 上司が別ルートで知る | 「なぜ直接言わない」が引き止めの材料になる |
| 話が広がる | 辞める前提で扱われ、居づらくなる |
| 引き止めの準備をされる | 上司が先手を打ってくる |
言うなら、上司に伝えたあとです。 順番を守るだけで、余計な摩擦が減ります。
言っても取り合ってもらえないとき
伝えたのに話が進まないことがあります。ここからは実務です。
| 状態 | 次にやること |
|---|---|
| 「考え直せ」で終わった | 書面で出します。 口頭は記録が残りません |
| 受け取ってもらえない | 内容証明郵便で送ります。到達した日が記録されます |
| 何度言っても流される | 人事へ直接。それでも動かなければ外に出します |
書面にすると扱いが変わります。 口頭だと「まだ相談の段階」として処理されますが、退職届が出ていると会社は手続きを止められません。
法律の側は単純です。期間の定めのない雇用なら、申入れの日から2週間で契約が終わります(民法627条1項)。就業規則に「1か月前」と書かれていても、民法が優先します。

有給や退職日の話し合いまで必要なら、扱えるのは労働組合型と弁護士型だけです。民間企業型は伝えるところで止まります。


誰にも言えないまま日が過ぎているなら
ここで止まる人を、私は現場で何人も見ました。
相手を決めても、口が動かないことがあります。 これは順番の問題ではありません。
私も営業をしていた頃、辞めると決めてから実際に言うまでに時間がかかりました。辞めると決めることと、言うことは別の作業です。
伝える工程だけを外に出す方法があります。申し込んだ日から出社せずに進められるので、「明日また言えなかった」を繰り返さずに済みます。

よくある質問
退職を誰に伝えるかについて、よく出る疑問に答えます。
- 法律で「誰に言う」と決まっていますか?
-
決まっていません。民法627条1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」としか定めておらず、相手を指定していません。会社に意思が届けば成立します。ただし就業規則で「所属長に申し出る」と定められていることが多く、順番を外すと手続きが遅れます。法律の問題ではなく、話を短くするための実務だと考えてください。
- 直属の上司を飛ばして人事に言ってもいいですか?
-
構いませんが、理由を添えてください。上司がハラスメントの当事者である場合、長期不在の場合、体調で出社できない場合は、飛ばす理由が成り立ちます。何も言わずに飛ばすと「自分は聞いていない」が引き止めの材料になります。「直属の上司との間で相談しにくい事情があるため」の一言で足ります。
- メールやLINEで伝えても有効ですか?
-
有効です。民法627条は伝え方を指定していないので、会社に意思が届けば成立します。むしろ記録が残る点では有利です。ただし就業規則で書面の提出が定められている場合は、あとから退職届を出すことになります。会社が「受け取っていない」と言い出す状況が想定されるなら、内容証明郵便を使ってください。到達した日が記録に残ります。
- 何ヶ月前に言えばいいですか?
-
法律上は2週間前です。期間の定めのない雇用なら、申入れの日から2週間で契約が終わります(民法627条1項)。就業規則に「1か月前」「3か月前」と書かれていても、民法が優先します。ただし有給が残っているなら、その日数分を上乗せして逆算してください。20日残っていれば、申入れから退職日まで1か月以上を見ておくことになります。
- 退職理由を詳しく聞かれます
-
「一身上の都合」で足ります。会社に理由を説明する義務を定めた規定はありません。労働基準法22条で退職時の証明書を請求できますが、同条3項で「労働者の請求しない事項を記入してはならない」とされており、書く内容も労働者側が決めます。詳しく話すほど反論の材料が増えるので、短く済ませるほうが実務としては有利です。
- 同僚には言わないほうがいいですか?
-
上司に伝えたあとにしてください。先に同僚へ相談すると、悪意がなくても上司に伝わります。別ルートで知った上司は「なぜ直接言わない」と受け取り、それ自体が引き止めの材料になります。また辞める前提で扱われて居づらくなることもあります。順番を守るだけで、余計な摩擦が減ります。
- 引き止められて話が進みません
-
書面で出してください。口頭だと「まだ相談の段階」として処理されます。退職届が出ていれば、会社は手続きを止められません。受け取ってもらえない場合は内容証明郵便で送ります。到達した日が記録に残るので、そこから2週間で契約が終わることを主張できます。有給の消化まで交渉したいなら、労働組合型か弁護士型に頼むことになります。
- 社長に直接言ってもいいですか?
-
会社の規模によります。従業員が数人で、社長が直接指揮している職場なら、社長が直属の上司にあたるので問題ありません。組織が大きい会社で階層を飛ばすと、現場の長が「聞いていない」となって話が戻されます。まず直属の上司、動かなければ人事、という順番のほうが早く終わります。
まとめ:順番は法律ではなく、話を短くするための実務です
要点を整理します。
- 原則は直属の上司。法律に定めはないが、就業規則と実務がそうなっている
- 飛ばしてよいのは、ハラスメントの当事者・長期不在・出社できない状態の3つ
- 飛ばすときは理由を一言添える
- 言い方は短く。日付を先に出すと、相談ではなく逆算の話になる
- 理由は「一身上の都合」で足りる
- 同僚に先に言わない。 上司に伝えたあとにする
- 進まないなら書面。 口頭は記録が残らない
辞めると決めることと、言うことは別の作業です。 決めたのに言えていないなら、そこは順番の問題ではありません。


