昇進の話が来たとき、うれしくなかった人がいると思います。
私もそうでした。理由は、給料でも自信のなさでもありません。
この記事でわかること
- 出世が嫌なのではなく、その会社の役職が嫌だという場合があること
- 昇進すると給料が落ちる場合があり、落ちるのは昇進した後ではなく手前だということ
- それでも、断る理由は給料ではないこと
- 断ったあと、その職場で何が起きるか
結論:この会社で出世したくない、と判断したからです
私も、上に行くのを断った側の人間です。
断ったのは、出世そのものが嫌だからではありません。この会社で上に行っても仕方がない、と判断したからです。
※ここに書くのは、私がいた会社での体験談です。給料の下がり方も、断ったあとの扱いも、全部その会社次第です。すべての職場に当てはまるわけではありません。

判断した材料は3つあります。
- 仕事ができて、やる気も十分にあった人が上に行き、辞めていきました
- その人と飲みに行くと、本人から「やらない方がいい」と言われました
- 事務所を任される立場でも、採用も配置も決められません
どれも、その会社の役職がどういうものかを示しています。引き受けるに値する役ではない、という結論になりました。
もっと言えば、会社の方針そのものを、私は理解できませんでした。理解できていない方針を、自分の言葉にして下に伝える。それが役職者の仕事です。できると思えませんでした。
方針が理解できない会社に居続けるかどうかは、出世を断るかどうかとは別の話です。【キャリアパーク就職エージェント】は20代・第二新卒の相談を無料で受けています。
役職が現場を動かせる会社なら、話は違ったはずです。「出世したくない」と「ここの役職が嫌だ」は、別の話です。

その人が我慢していたのは、誰の顔を見るかでした
大変そう、という話ではありません。見る相手が変わります。
宅配のドライバーは、配達に出てしまえば、お客さんの顔しか見ません。ある意味、全然気楽です。


役職者はそうはいきません。上の顔色を見ながらでないと、仕事ができない立場です。
事務所を任されても、人事権はありません
ここが、外から見えにくい部分だと思います。
私がいた会社では、ひとつの事務所を任される立場になっても、採用と配置の決定権はありませんでした。
- 人が足りなくても、自分で採れません
- 誰をどこに付けるかも、自分では決められません
- それでいて、事務所が回らなければ自分の責任になります
責任だけがあって、手札がない状態です。現場から「人を増やしてほしい」と言われても、上に上げて待つしかありません。断られたら、その答えを自分の口から現場に伝えることになります。
これが板挟みの中身です。板挟みは性格の問題ではなく、権限と責任が食い違っている構造から出てきます。
この立場に立たされる前に動く人もいます。
楽になるのは体だけで、その分、精神が削られます
ここは正直に書きます。役職になると現場に出ないので、体力は使いません。
- 荷物を持ちません
- 階段を上りません
- 雨の日に濡れません
- 夏の車内にも、冬の朝の外にもいません
配達は体を使う仕事なので、これは小さくない話です。
ただ、楽になるのは体だけです。その分、削られるものが変わります。
| ドライバー | 役職者 | |
|---|---|---|
| 体 | 使う | 使わない |
| 精神 | 客の顔だけ見ていればいい | 上の顔色をうかがい続ける |
| 権限 | 自分の担当は自分で回す | 責任はあるが採用も配置も決められない |
体力を減らす代わりに、精神を削られる取引です。
私はこの取引に乗りませんでした。ただ、体がもう限界だという人にとっては、成り立つ取引です。年齢的にきつくなってきた人、体を壊しかけている人には、上に行くほうが続けられる場合があります。
どちらが自分にとってきついか。そこで答えは変わります。

「でも昇進したら給料は上がるでしょ」
上がりません。むしろ落ちます。
宅配ドライバーの給料は、歩合でできています
宅配のドライバーには、インセンティブ(歩合)が付きます。そこに残業代と各種手当が乗ります。給料は悪くありません。
昇進すると、ドライバー職ではなくなります。歩合はそこで消えます。
落ちるのは、昇進した後ではなく手前です
ここがいちばん知られていない部分だと思います。
昇進する前に、役職見習いのような段階を経験しないと上がれない会社があります。私がいた会社もそうでしたし、業種の違う友人が勤めている会社も同じ仕組みでした。

第一線から外れるので、歩合はそこで消えます。役職手当はまだ付きません。
つまり、「上がってから考える」ができません。先に下がる道を通らないと、上には行けない構造です。

役職者になると、残業代が出なくなる会社は多いです
私がいた会社もそうでした。
本来は、役職名が付いただけで残業代が消えるものではありません。出なくなるのは労働基準法41条2号の管理監督者に当たる場合だけで、厚生労働省は名称ではなく実態で判断するとしています。
それでも、実際には出ませんでした。建前と現場が食い違っているのは、めずらしいことではありません。
そして深夜(22時から翌5時)の割増賃金は、管理監督者にも支払われます。「管理職だから何も付かない」は事実と違います。
いま管理職扱いで残業代が出ていないなら、未払い賃金の確認から入ってください。
ただ、私が断ったのはこの計算のせいではありません。そこまで計算しなくても、答えは出ていました。

判断の材料になったのは、辞めていく人の背中でした
やる気のあった人が消耗して辞めていくのを、周りの人間は全部見ています。そして「ああはなりたくない」と思います。


ただ、外から見えるのは出勤時間と帰宅時間までです。何を我慢しているかまでは見えないので、普通は「大変そうだな」で止まります。体が先に音を上げる人もいます(体を壊す前に辞める判断)。
中にいた人の言葉が、判断を確かにします
「大変そうだけど、自分なら違うかもしれない」と思う余地がなくなったのは、その人と飲みに行ったときです。
「やらない方がいいよ」

上司でも他人でもなく、実際にその役をやって辞めた本人が言います。外から見た印象は打ち消せますが、中にいた人の言葉は打ち消せません。
これで断ったわけではありません。ただ、自分の見立てが間違っていないことは、これではっきりしました。
自分の会社に、中を見てきた人がいるとは限りません。会社の中がどうなっているかは、いくつも見てきた人に聞くのがいちばん早いです。

断ったあと、その職場で起きること
断る人が増えると、上が中から埋まらなくなります。組織は下からではなく、上から空洞化していきます。

人が減っても、上の仕事は減りません。
厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、令和6年の入職率は14.8%、離職率は14.2%でした。ただしこれは全国の平均です。自分の部署に人が入るかどうかは、この数字とは関係ありません。

断っても、仕事だけ回ってくることがあります
役職は付かないのに、判断だけ求められる状態です。
上が抜けた分の仕事は消えないので、空いた穴の中身だけが、いちばん近くにいる人に流れてきます。手当は付きません。歩合も戻りません。
半年続いたら、それは待遇の問題として交渉してください。交渉できないなら、外で同じ経験がどう評価されるかを見る材料になります。
役職名が付いていなくても、任されていた範囲は職務経歴として書けます。書き方は職務経歴書の書き方にまとめました。
よくある質問
- 出世を断ったら、評価は下がりますか?
-
私の場合は何も変わりませんでした。今まで通り仕事をするだけです。断ったからといって干されるわけでも、話しかけられなくなるわけでもありませんでした。ただしこれは会社によります。人が足りていない職場ほど、断った人にも普通に仕事が回ってくるので、扱いが変わる余地がそもそもありません。気になるなら、先に断った人がその後どう扱われているかを見るのがいちばん確かです。
- 断ったあとに居づらくなりませんでしたか?
-
全然なりませんでした。ただ、これは現場職だからだと思っています。ドライバーは配達に出てしまえば一人で、事務所にいる時間はごくわずかです。顔を合わせる時間が短ければ、空気が残りようがありません。同じ部屋に一日中いる仕事だと、そうもいかないかもしれません。オフィス勤務の人は、周りに断った人がいるかどうかを先に見ておくと判断しやすいと思います。
- 昇進すると、本当に給料は下がるのですか?
-
私がいた会社では、いったん下がりました。宅配ドライバーは歩合が付くので、第一線から外れた時点でそれが止まります。役職見習いのような段階を通る仕組みだと、歩合は消えているのに役職手当はまだ付きません。ここで下がります。上がった先で戻るかどうかは会社によります。歩合や残業代が給料の柱になっている人ほど、差は大きくなります。
- 管理職になると、残業代は出なくなりますか?
-
私がいた会社では出ませんでした。本来は、役職名が付いただけで消えるものではありません。出なくなるのは労働基準法41条2号の管理監督者に当たる場合だけで、厚生労働省は名称ではなく実態で判断するとしています。基準は3つで、経営者と一体的な立場か、出退勤に裁量があるか、地位にふさわしい処遇があるかです。ただ、この3つを満たしていなくても出ない会社は実際にあります。なお深夜業の割増賃金は管理監督者にも支払われ、率は2割5分以上です。
- 給料が下がらないなら、昇進してもいいということですか?
-
私が断った理由は給料ではありませんでした。会社の方針そのものが理解できなかったからです。理解していない方針を、自分の言葉にして下に伝えるのが役職者の仕事です。そこができると思えませんでした。金額が同じでも、この部分は変わりません。逆に言えば、方針に納得できている会社なら、判断はまったく違うものになります。
- 誰も上に行きたがらない職場は、この先どうなりますか?
-
そもそも、誰も行きたがらない時点でその会社がおかしいと思います。役職に就いた人が消耗して辞めていきます。権限がないのに責任だけあります。方針を現場に説明できません。行きたがらない理由は、たいてい会社側にあります。上が中から埋まらなくなれば、外から採るか残った人に仕事が集まるかのどちらかです。順番が後なだけで、下にも影響は来ます。
まとめ:この会社で出世したくない、というだけの話です
出世そのものが嫌なわけではありません。役職が現場を動かせる会社なら、答えは違ったはずです。

私がいた会社の役職は、責任だけがあって、動かせるものを持っていませんでした。方針も理解できないまま、それを自分の言葉で下に伝える役です。引き受ける理由が見つかりませんでした。
体力を取るか、精神を取るか。体がもう限界だという人には、逆の答えが出ます。そこは人によります。
断ったあとに仕事だけ回ってくるなら、それは待遇の問題として扱ってください。半年たっても変わらないなら、外を見る理由としては十分です。
