2026年10月1日からです。会社が対策を取ることが、義務になります。
いま我慢していることの多くに、名前が付きました。
この記事でわかること
- いつから、何が義務になるのか
- 玄関先も道中も「職場」に含まれること
- 宅配業で名指しされている行為
- 会社が必ずやらなければならない10項目
結論:3つそろうと、カスタマーハラスメントです
まず、いつからかをはっきりさせます。

改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)は令和7年6月11日に公布され、カスタマーハラスメント対策の義務化は令和8年(2026年)10月1日から施行されます。指針も令和8年2月26日に公布済みです。
厚生労働省のリーフレットに、定義が書かれています。
職場における「カスタマーハラスメント」とは、職場において行われる
①顧客等の言動であって、
②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの
であり、①~③の要素を全て満たすものをいいます。
3つそろって、はじめて該当します。ここは030で書いたパワハラの構造と同じです。
そして同じリーフレットに、こう添えられています。
※電話やSNS等のインターネット上において行われるものも含まれます。

「顧客等」の範囲も定義されていて、今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある者も含むとされています。まだ客ではない人も入ります。

玄関先も、道中も「職場」です
ここが宅配で働く人にとって、いちばん大きいところだと思います。

厚生労働省の宅配業向けの資料に、こう書かれています。
宅配業においては、荷受けをする営業所だけではなく、集配先の個人宅や法人の事務所、集配先の道中等も業務を遂行する場所であり、職場に含まれます。
営業所の中だけの話ではありません。玄関先で言われたことも、道中で言われたことも、対象になります。
「顧客等」の範囲も、宅配に合わせて具体化されています。荷主、受取人、その家族、そして集配において訪問する個人宅や企業の近隣住民まで含まれるとされています。


宅配で名指しされている行為があります
一般論ではなく、宅配業の例として資料に挙がっているものです。

| 類型 | 資料に挙げられている宅配業での例 |
|---|---|
| そもそも要求に理由がない | 性的な要求、従業員のプライバシーに関わる要求 |
| 約款を著しく超える要求 | 荷受けができない商品の荷受け強要、分単位での時間指定、指定場所以外への再配達の要求 |
| 対応が著しく困難 | 運賃の著しい減額の要求 |
| 不当な損害賠償要求 | 精神的苦痛を理由とした慰謝料請求、対応に費やした時間を理由にした迷惑料の請求 |
| 精神的な攻撃 | 営業所の物を壊すことをほのめかす、SNS等への悪評投稿をほのめかす、盗撮や無断での撮影 |
| 威圧的な言動 | 大きな声をあげて従業員や周囲を威圧する、反社会的な言動 |
| 継続的・執拗な言動 | 同様の質問を執拗に繰り返す、当初の話からのすり替え、揚げ足取り |
| 拘束的な言動 | 長時間に渡る居座り、電話で従業員を拘束する |
「分単位での時間指定」と「指定場所以外への再配達の要求」が名指しで載っています。現場では日常だったものが、資料に例として書かれました。


ドライバーの3人に1人が経験しています
数字も出ています。

令和7年度に厚生労働省が実施した宅配業の実態把握調査(回答者18,715人)の結果です。
| 職種 | 過去3年間に受けた |
|---|---|
| 全体 | 42.6% |
| ドライバー | 32.2% |
| 営業職 | 40.1% |
| 対面窓口 | 64.1% |
| 管理職 | 67.6% |
| 電話窓口 | 73.9% |
そして受けたあとの影響です。
| 影響 | 割合 |
|---|---|
| 怒りや不満、不安などを感じた | 79.7% |
| 仕事に対する意欲が減退した | 59.2% |
| 強い心身への影響(不眠、通院・入院、欠勤等) | 15.8% |
| 特に影響はなかった | 10.5% |
6人に1人近くが、不眠や通院、欠勤に至っています。

現場では、こうなっています
同じ調査の、対応についての数字です。
- 謝り続けた … 57.1%
- 受けたあと何もしなかった … 24.0%
- 判断基準がわからない … 40.4%
資料はこの状態をこう説明しています。
宅配業において、現場ではカスタマーハラスメントの判断基準がわからず、結果的に謝り続けたり、適切に対応できていないと想定されます。
判断基準がないから、謝るしかありませんでした。今回の義務化は、その基準を会社に決めさせるものです。

会社が必ずやることが、10個あります
義務を負うのは会社です。労働者ではありません。

リーフレットには「事業主は、以下の措置を必ず講じなければなりません」として、10項目が挙げられています。
| 分類 | 措置 |
|---|---|
| 方針の明確化 | ① 毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること |
| ② カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知すること | |
| 相談体制 | ③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること |
| ④ 相談窓口担当者が適切に対応できるようにすること | |
| 事後の対応 | ⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること |
| ⑥ 被害者に対する配慮のための措置を行うこと | |
| ⑦ 再発防止に向けた措置を講ずること | |
| 抑止のための措置 | ⑧ 特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針を定め、周知し、対処できる体制を整備すること |
| そのほか | ⑨ 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること |
| ⑩ 相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること |
②の対処の例として、こう書かれています。
管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐ、可能な限り労働者を一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、本社・本部等へ情報共有を行い指示を仰ぐ 等
「一人で対応させない」が例として入っています。
そして⑩があるので、相談したこと自体を理由に不利に扱うことは認められません。


正当なクレームとは、別のものです
ここを混ぜると、話が通らなくなります。

宅配業の資料は、判断の出発点をこう書いています。
まずは事実関係を確認し、自社に過失があるか、運送約款の内容等から根拠のある要求がなされているかを確認し、顧客等の要求が正当なクレームに当たるのかカスタマーハラスメントに当たるのかを判断します。
過失がこちらにあるなら、それは正当なクレームです。カスハラかどうかは、その次の話になります。
手段や態様についても基準が示されています。
例えば、長時間に及ぶクレームは、業務の遂行に支障が生じるという観点から社会通念上相当性を欠くと考えられます。
内容が正当でも、やり方が度を超えれば別ということです。
そしてリーフレットには、会社側への留意事項も書かれています。
対策を講ずる際には、消費者の権利や、障害者差別解消法における、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。
「毅然と対応」が、誰にでも強く出ていいという意味ではありません。


よくある質問
- いつから義務になりますか
-
2026年10月1日からです。改正労働施策総合推進法は令和7年法律第63号として令和7年6月11日に公布され、カスタマーハラスメント対策の義務化はこの日から施行されます。指針も令和8年2月26日に公布されています。
つまり現時点ではまだ施行されていません。会社に体制がなくても、それ自体が今すぐ違反になるわけではありません。準備期間として使われている時期です。
- 何がカスハラに当たりますか
-
厚生労働省のリーフレットでは、①顧客等の言動であって、②業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、の3要素をすべて満たすものとされています。
電話やSNS等のインターネット上で行われるものも含まれます。顧客等には、今後商品の購入やサービスの利用をする可能性がある者も含まれます。
- 玄関先で言われたことも入りますか
-
入ります。宅配業向けの資料に、荷受けをする営業所だけでなく、集配先の個人宅や法人の事務所、集配先の道中等も業務を遂行する場所であり職場に含まれる、と書かれています。
顧客等の範囲も、荷主や受取人だけでなく、その家族や、集配で訪問する個人宅や企業の近隣住民まで含まれるとされています。
- どんな行為が例に挙がっていますか
-
宅配業では、荷受けができない商品の荷受け強要、分単位での時間指定、指定場所以外への再配達の要求、運賃の著しい減額の要求が挙げられています。
手段の面では、SNS等への悪評投稿をほのめかす発言、盗撮や無断での撮影、長時間の居座り、電話で従業員を拘束することなどが例示されています。
- どれくらいの人が経験していますか
-
令和7年度の厚生労働省の実態把握調査では、回答者18,715人のうち42.6%が過去3年間にカスハラを受けたと回答しています。職種別ではドライバーが32.2%、対面窓口が64.1%、電話窓口が73.9%です。
影響としては79.7%が怒りや不満、不安などを感じたと回答し、15.8%が不眠や通院・入院、欠勤といった強い心身への影響があったと答えています。
- 会社は何をしなければなりませんか
-
リーフレットに10項目が挙げられています。毅然とした態度で対応し労働者を保護する方針の明確化と周知、相談窓口の設置、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止、悪質な事案への対処方針の整備などです。
対処の例として、可能な限り労働者を一人で対応させないこと、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報することが挙げられています。相談したことを理由に不利益な取扱いをされない旨を定めることも含まれます。
- 相談したら不利になりませんか
-
10項目の最後に、相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発することが挙げられています。相談したこと自体を理由に不利に扱うことは、この方針に反します。
現在すでに施行されているパワハラの規定でも、労働施策総合推進法30条の2第2項が、相談を行ったことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止しています。構造は同じです。
- 正当なクレームとの違いは何ですか
-
宅配業の資料では、まず事実関係を確認し、自社に過失があるか、運送約款の内容等から根拠のある要求がなされているかを確認して、正当なクレームかカスハラかを判断するとされています。
内容が正当でも、手段や態様が度を超えれば別です。長時間に及ぶクレームは、業務の遂行に支障が生じるという観点から社会通念上相当性を欠くと考えられる、とも書かれています。
まとめ:判断基準は、会社が決めることになります
整理します。
- 2026年10月1日から、事業主に対策が義務づけられる(令和7年法律第63号)
- 該当するのは3要素をすべて満たすもの。電話やSNSも含む
- 宅配業では集配先の個人宅も道中も「職場」
- ドライバーの32.2%が過去3年間に経験。15.8%が不眠・通院・欠勤に至っている
- 会社が講じる措置は10項目。相談を理由とする不利益取扱いの禁止も含む
いま現場にないのは、基準です。40.4%が判断基準がわからないと答え、57.1%が謝り続けています。
10月からは、その基準を会社が決めて、周知することになります。決まっていないなら、いつ決まるのかを聞いてください。
