会社を辞めると決めたあと、最初に手が止まるのがここです。
「退職届と退職願、どっちを書けばいいのか」
結論から書きます。この2つは、名前が似ているだけで法律上の意味がまったく違います。
ただし、書き方を調べている段階で本当に止まる人はほとんどいません。止まるのは、上司に伝えるところです。 そこが理由で何か月も動けていないなら、伝える工程だけ外に出せます。退職代行辞スルは受付が24時間で、料金は正社員が税込22,000円、パート・アルバイトが18,000円です(2026年8月時点)。
この記事でわかること
- 退職願は「お願い」、退職届は「通知」。引っ込められるかどうかが違うこと
- そのまま写して使える文面(縦書き・横書きの両方)
- 就業規則の「1か月前」と民法の「2週間」のどちらが優先するか
- 出したあとに会社が何をしてくるかと、その対処
結論:引っ込められるかどうかが違います
先に表で示します。
| 退職願 | 退職届 | |
|---|---|---|
| 意味 | 辞めさせてくださいというお願い | 辞めますという通知 |
| 法律上の位置 | 合意解約の申込み | 解約の意思表示(民法627条) |
| 撤回 | 会社が承諾するまでは、原則できる | 出した時点で、原則できない |
| 会社の承諾 | 必要 | 不要 |
| 向いている場面 | 円満に相談から入りたい | 話を止めたい、引き止めを断ちたい |

迷ったら「退職届」です。 理由は単純で、退職願は会社が承諾しないかぎり話が動かないからです。
ただし、上司との関係を壊したくない、まずは相談から入りたい、という場合は退職願から始める意味があります。そこは職場との距離感で決めてください。
なお「辞表」という言葉もありますが、これは社長や取締役といった役員、または公務員が使うものです。一般の社員が辞表を出すのは、言葉の使い方としては合っていません。
どちらを出すにしても、書類より先に決まるのは退職日です。 そこを相手と詰められないまま書類だけ用意しても、日付が書けません。日程の話し合いまで頼みたいなら、労働組合が運営する円満退職ユニオンのような形になります。

そのまま使える文面
余計な工夫は要りません。書式が凝っていても、扱いは変わらないからです。
退職届(横書き)
下の形を写して、〇の部分を埋めれば足ります。装飾も定型のあいさつも要りません。
退職届
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇 〇〇 殿
所属 〇〇部
氏名 〇〇 〇〇 印
私事、
このたび一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。
以上
退職願(横書き)
最後の1文だけが変わります。
このたび一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって
退職いたしたく、お願い申し上げます。
「退職いたします」が届、「退職いたしたく、お願い申し上げます」が願です。 ここだけで意味が変わるので、コピーして使うときは末尾を確認してください。
書くときの決まりごと
形式そのもので無効になることは、まずありません。ただし日付だけは間違えると書き直しになります。
| 項目 | どうするか |
|---|---|
| 用紙 | 白のA4かB5。無地。便箋でも可 |
| 筆記具 | 黒のボールペンか万年筆。消えるペンは不可 |
| 日付(右上) | 提出する日を書く |
| 日付(本文) | 退職する日を書く。ここを間違える人が多いです |
| 宛名 | 社長名。自分の上司名ではありません |
| 理由 | 「一身上の都合」で統一。詳しく書く必要はありません |
| 封筒 | 白の二重封筒。表に「退職届」、裏に部署と氏名 |
理由欄を詳しく書かないのは、あとで揉めないためです。 「パワハラのため」などと書くと、会社側がそこに反論して話が長くなります。伝えたいことがあるなら、書類ではなく別の場で出してください。

「1か月前」と「2週間」はどちらが優先するか
就業規則に「退職の申し出は1か月前まで」と書かれている会社は多いです。一方で民法にはこうあります。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
(民法第627条第1項)
条文の全文はe-Gov法令検索で読めます。
つまり、期間の定めのない雇用なら、申し入れの日から2週間で契約は終わります。 就業規則で会社が定められるのは、あくまで社内のルールです。
| 中身 | 効き方 | |
|---|---|---|
| 民法627条 | 申し入れから2週間で終了 | 法律。会社が短くも長くもできない |
| 就業規則 | 1か月前など | 社内ルール。守るのが望ましいが、法律を上書きはしない |
労働基準法89条は、就業規則に「退職に関する事項」を必ず書くよう求めています。だから会社にはたいてい定めがあります。あるのは当然で、問題はそれが法律より強いかどうかです。
実務としては、就業規則に合わせるのが無難です
法律の話と、実際にどうするかは別です。
引き継ぎがあり、有給も使いたいなら、1か月前に出すほうが結果的に自分の得になります。 2週間で押し切ると、有給が消化しきれずに残ることが多いからです。
2週間を持ち出すのは、話が止まったときです。 「代わりが見つかるまで」「繁忙期を越えてから」と延ばされ続ける場合、条文が期限を作ってくれます。
出し方の順番を間違えないでください
書類ができたら、次は出し方です。ここで失敗する人がいます。
| 順番 | やること | よくある失敗 |
|---|---|---|
| 1 | 直属の上司に口頭で伝える | いきなり人事へ出して、上司の顔を潰す |
| 2 | 退職日を相談して決める | 決めないまま書類を出し、日付を書き直すことになる |
| 3 | 退職届を出す | 手渡しできずメールで送り、受け取っていないと言われる |
| 4 | 引き継ぎと有給の消化 | 有給の申請を口頭で済ませ、記録が残らない |
書類は、話が決まってから出すものです。 順番を飛ばすと、書き直しになります。
ただし、辞めたいのに言い出せない状態が続いているなら、1番の口頭が最大の壁です。そこで何か月も止まっているなら、書類の書き方を調べても前へは進みません。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
受け取ってもらえないときは、内容証明があります
「受け取れない」「預かれない」と言われることがあります。受け取り拒否をされても、意思表示が届いていれば効力は生じます。 問題は「届いたことを証明できるか」です。
| 方法 | 証明できること |
|---|---|
| 手渡し | 何も残らない。あとで「もらっていない」と言われる |
| 郵便(普通) | 出したことも届いたことも残らない |
| 内容証明郵便+配達証明 | いつ・誰が・どんな内容を出し、いつ届いたか |
内容証明は郵便局の窓口かe内容証明で出せます。「言った・言わない」を消せるのが最大の効果です。
それでも社内に持って行けない事情があるなら、外に頼む方法があります。円満退職ユニオンは労働組合が運営しているので、退職日や有給の話し合いまで扱えます。

書式で悩むより、出した後に何が来るかを知っておくほうが役に立ちます。

出したあとに起きること
書類を出して終わり、ではありません。むしろここからが本番です。
引き止めと、条件の提示
出した直後に、給料や部署の話が出ることがあります。
引き止めで出た条件は、書面にならないかぎり実現しないことが多いです。 口頭で「来期に上げる」と言われて残り、上がらないまま次の年を迎えた、という話は珍しくありません。
判断の基準は3つです。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| いつから、いくら | 「来期」「そのうち」は期限になりません |
| 誰の決裁か | 直属の上司に給与の決定権がないことがあります |
| 書面になるか | 辞令や労働条件通知書の形で出るかどうか |
3つとも埋まらないなら、それは条件の提示ではなく引き止めです。なお期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間で契約は終わります。返事を待つ義務はありません。
有給の消化
退職日が決まったら、残っている有給を数えます。在職中の有給は繁忙期を理由に別の日へ回されますが、辞めるときは回す先がないので断れません。
会社の側は退職日を前へ寄せたがるため、そこは話し合いになります。この話し合いに入れるのは労働組合型と弁護士型だけで、民間企業型は伝えるところで止まります。

会社から受け取るもの
退職日が来たら、書類が出てきます。出てこないことがあるので、何が来るはずなのかを先に知っておいてください。
| 書類 | いつ | 使いみち |
|---|---|---|
| 離職票 | 退職日の10日前後 | 失業保険の申請に必須 |
| 源泉徴収票 | 退職後1か月以内 | 転職先か確定申告で使う |
| 雇用保険被保険者証 | 退職時 | 転職先に提出 |
| 年金手帳(預けている場合) | 退職時 | 国民年金や転職先で使う |
労働基準法22条では、退職の際に使用期間や退職の事由について証明書を求めれば、会社は遅滞なく交付しなければならないと定められています。もらえないものがあるなら、この条文を根拠に請求できます。
離職票が届かない場合の動き方は別記事にまとめました。

会社に返すもの、持って出るもの
最後の日に慌てないよう、先に分けておきます。
| 返すもの | 持って出るもの |
|---|---|
| 健康保険証(扶養家族の分も) | 雇用契約書・労働条件通知書の控え |
| 社員証・入館証・制服 | 給与明細(直近1年分あると安心) |
| 名刺(自分の分と、預かった取引先の分) | 就業規則の写し(退職金や有給の根拠) |
| 貸与のパソコン・携帯・鍵 | 資格の証明書 |
就業規則の写しを持って出るのを忘れる人が多いです。 退職金の計算や有給の日数で揉めたとき、手元に根拠がないと確認できなくなります。
ここまでが流れです。受け取ってもらえない段階で止まっているなら、外に出せます。

よくある質問
書類まわりでよく出る疑問に答えます。
- 退職届は手書きとパソコン、どちらがいいですか?
-
どちらでも効力は同じです。文字が読めて、必要な項目(宛名・退職日・所属・氏名)が入っていれば足ります。手書きのほうが丁寧に見えるという慣習はありますが、法律上の要件ではありません。氏名の横に押印する欄を作る例が多いものの、これも必須ではありません。迷うなら、社内に前例があるかを総務に聞くのがいちばん早いです。前例がなければ、パソコンで作って印刷し、署名だけ手書きにすれば十分です。
- 退職届を出したあと、やっぱり撤回できますか?
-
原則できません。退職届は「辞めます」という一方的な意思表示なので、会社に届いた時点で効力が生じます。一方、退職願は「辞めさせてください」という申込みなので、会社が承諾するまでは撤回できるとされています。ただし承諾の有無は、実務では人事権を持つ人が受け取った時点などで判断されるため、あとから争いになりやすい部分です。迷いがあるうちは、どちらも出さないでください。
- 就業規則に「3か月前」と書かれています。従う必要がありますか?
-
法律の上では、期間の定めのない雇用なら民法627条により申し入れから2週間で契約が終わります。就業規則は社内のルールなので、これを上書きすることはできません。ただし実務としては、引き継ぎや有給の消化を考えると、規則に沿って早めに出すほうが自分の得になります。2週間を持ち出すのは、話が止まって延ばされ続けているときだと考えてください。
- 退職理由は「一身上の都合」でいいですか?
-
書類にはそれで十分です。労働基準法22条は、退職の事由について証明書を請求できると定めていますが、労働者の側が理由を詳しく書く義務はありません。むしろ書類にパワハラや待遇への不満を書くと、会社がそこへ反論して話が長引きます。伝えたいことがあるなら、書類とは別の場で出してください。なお失業保険の会社都合・自己都合の判定は、退職届の文言だけでなく実際の事情で判断されます。
- 退職日はいつにするのが得ですか?
-
社会保険料の負担が変わります。健康保険と厚生年金の資格は退職日の翌日に失われ、保険料はその前の月まで発生します。月末退職だとその月の保険料まで会社と折半で払い、月末の前日までに辞めるとその月は発生しません。ただし退職日が早いぶん給与も減るので、単純にどちらが得とは言えません。有給の残り日数と合わせて、手取りベースで計算してください。
- 直属の上司が受け取ってくれません
-
受け取り拒否をされても、意思表示が会社に届いていれば効力は生じます。問題は届いたことを証明できるかどうかです。内容証明郵便に配達証明を付ければ、いつ・誰が・どんな内容を出し、いつ届いたかが記録として残ります。郵便局の窓口かe内容証明から出せます。上司を飛ばして人事へ直接送る形になりますが、受け取ってもらえない状況ではやむを得ません。
- メールやLINEで退職届を出しても有効ですか?
-
意思表示が会社に到達していれば、形式そのもので無効になるわけではありません。ただし「見ていない」「本人が送ったか分からない」と言われる余地が残ります。会社がメールでの提出を認めているなら問題ありませんが、そうでないなら書面を郵送するほうが確実です。どうしても連絡を取りたくない事情があるなら、退職代行を使って伝える工程を外に出す方法もあります。
- 退職届を出したのに、退職日を先延ばしにされます
-
期間の定めのない雇用なら、申し入れの日から2週間で契約は終わります。会社の承諾は要りません。ただし引き継ぎや有給の話が絡むと、実際には話し合いになります。有給を全部使ってから辞めたいなら、その交渉に入れるのは労働組合型か弁護士型です。民間企業型は意思を伝えるところまでで、日程の交渉には入れません。頼む前に、運営元がどれなのかを確認してください。
退職日と有給をまとめて話せるのは、労働組合型と弁護士型だけです。

まとめ:書式より、順番です
要点を整理します。
- 退職願は撤回できる「お願い」、退職届は撤回できない「通知」です
- 文面は「一身上の都合」で十分。理由を詳しく書くと揉めます
- 就業規則の「1か月前」は社内ルール。民法627条の2週間を上書きはしません
- 実務では規則に沿うのが得。2週間を出すのは話が止まったときです
- 受け取ってもらえないなら、内容証明+配達証明で届いた記録を残します
書式で悩んでいる時間は、ほとんど結果に影響しません。 決めるべきは、いつ誰に言うかと、そのあと有給をどう使うかです。


