「貯金がないから、辞められない」と考えている人は多いです。ただ、この形で考えているかぎり、いくら貯まっても踏み切れません。 十分かどうかを判断する基準がないからです。
必要なのは、金額そのものではありません。
無収入の日数 × 毎月出ていく額。 これだけです。
この記事でわかること
- 失業保険が最初に振り込まれるまで、実際に何日かかるか
- 辞めた翌月から出ていくお金の内訳(国民年金は月17,920円)
- 自分の必要額を出す計算式
- 貯金を増やすより早い、無収入の日数を短くする方法
いま止まっているのが「お金」ではなく「言い出せないこと」なら、計算の前にそちらが先です。退職代行辞スルは受付が24時間で、料金は正社員が税込22,000円、パート・アルバイトが18,000円です(2026年8月時点)。
結論:日数を数えれば、金額が出ます
必要額の出し方はこうです。
必要額 = 毎月出ていく額 × 無収入の月数 + 予備の1か月分
この式のうち、自分で短くできるのは「無収入の月数」のほうです。 貯金を増やすには何か月もかかりますが、日数は動かし方によって半分以下になります。

まず、その日数を数えます。
失業保険は、辞めた翌日には入りません
いちばん誤解されているのがここです。辞めた翌月から失業保険が入ると思っている人がいますが、そうはなりません。
| 段階 | かかる日数 | 中身 |
|---|---|---|
| 離職票が届く | 退職日から10日前後 | 会社がハローワークに手続きしてから発行されます |
| ハローワークで申請 | 届いた日以降 | 離職票がないと受付されません |
| 待期期間 | 7日 | 自己都合でも会社都合でも共通です |
| 給付制限 | 自己都合は1か月/会社都合はなし | 2025年4月から2か月→1か月に短縮されました |
| 初回の認定日 | 申請からおよそ4週間後 | 以降は28日ごとです |
| 振込 | 認定日から1週間程度 | 認定された日数分がまとめて入ります |
積み上げると、こうなります。
| 最初の振込まで | |
|---|---|
| 会社都合で辞めた場合 | おおむね1か月半 |
| 自己都合で辞めた場合 | おおむね2か月半 |
つまり自己都合なら、収入がゼロの月が2回か3回あります。 必要額の話は、ここから始まります。
なお離職票が届かないと、この時計はそもそも動き始めません。離職票が届かないときの動き方は別記事にまとめました。

この2か月半を1か月に縮められるかどうかは、有給を全部使えるかと、離職理由がどちらになるかで決まります。どちらも会社との話し合いです。円満退職ユニオンは労働組合が運営しているので、そこまで扱えます。
辞めた翌月から、出ていくお金が増えます
もうひとつの見落としがこれです。収入がゼロになるだけではなく、支出のほうは増えます。

会社員のときは給料から引かれていたものを、自分で払うようになるからです。
| 項目 | 会社員のとき | 辞めたあと |
|---|---|---|
| 年金 | 厚生年金。会社と折半 | 国民年金。全額自己負担で月17,920円(令和8年度) |
| 健康保険 | 会社と折半 | 国保か任意継続。折半がなくなります |
| 住民税 | 毎月の給料から天引き | 自分で納付書で払います |
| 雇用保険料 | 天引き | なくなります |
国民年金の月額は日本年金機構のページに出ています。令和8年度は月17,920円で、全国一律です。
払えない場合は免除の制度があります。失業を理由にするなら、前年の所得は見られません。

住民税が、いちばん効きます
住民税は前年の所得に対してかかります。辞めて収入がゼロになっても、去年の分の請求は来ます。
| 辞めた月 | どうなるか |
|---|---|
| 1月〜5月 | 5月分までが最後の給与から一括で天引きされます |
| 6月〜12月 | 残りが納付書で自宅に届きます。年4回払い |
手取りが減った状態で、去年の稼ぎに対する税金を払うことになります。 ここを計算に入れていない人が多いです。

健康保険は、選び方で金額が変わります
国民健康保険と任意継続では、計算方法がまったく違います。同じ人でも金額が数万円変わることがあります。
期限も違います。任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は14日以内です。過ぎると選べなくなるので、辞める前に両方の金額を聞いておいてください。

貯金の額より、無収入で持つ月数のほうが大事です。 先に日数を出してください。

自分の必要額を出す
数字がそろったら、当てはめます。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 家賃・光熱費・食費・通信費・保険を足す(いまの生活費) |
| 2 | 国民年金17,920円を足す |
| 3 | 健康保険の見込み額を足す(窓口で試算してもらう) |
| 4 | 住民税の月割りを足す(去年の課税通知書に年額があります) |
| 5 | 合計に、無収入の月数を掛ける |
無収入の月数は、自己都合なら3、会社都合なら2で計算してください。振込が遅れる場合に備えて、そこへ1か月分を足します。
この式で出た額に届いていないなら、足りないのは貯金ではなく日数です。

日数を短くするほうが、貯金より早い
ここからが本題です。必要額は、無収入の月数で決まります。 そこを削れば、必要な貯金も減ります。
① 有給を全部使ってから辞める
いちばん効きます。有給を消化している間は、まだ給料が出ているからです。
20日残っていれば、給料が出る期間が約1か月伸びます。同時に、無収入の期間が1か月縮みます。 必要額でいえば2か月分が動く計算です。
在職中の有給は繁忙期を理由に別の日へ回されますが、辞めるときは回す先がないので断れません。ただし会社は退職日を前へ寄せたがるので、そこは話し合いになります。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
この話し合いに入れるのは労働組合型と弁護士型だけです。 民間企業型は意思を伝えるところまでで、有給や退職日の交渉には入れません。
円満退職ユニオンは労働組合が運営しているので、有給や退職日の話し合いまで扱えます。

② 会社都合になるかを確認する
自己都合と会社都合では、給付制限1か月の有無と、もらえる日数そのものが変わります。
自分では自己都合だと思っていても、残業時間や賃金の未払い、パワハラなどの事情があれば、特定受給資格者や特定理由離職者として扱われることがあります。 これはハローワークが判断するので、事情があるなら記録を持って相談してください。
③ 次を決めてから辞める
無収入の期間をゼロにする方法です。前の2つが日数を1か月ずつ削るのに対し、これは2か月半をまるごとゼロにします。
ただし、在職中に探すと時間が取れません。そこで妥協した転職先で、また同じことを繰り返す人がいます。
| 無収入の期間 | 代わりに起きること | |
|---|---|---|
| 次を決めてから辞める | 0か月 | 在職中に面接の時間を作る必要があります |
| 辞めてから探す | 自己都合で約2.5か月 | 時間はできますが、焦って決めやすくなります |
ゼロイチ転職は20代で未経験の業界も含めて無料で面談が受けられます。自分の経験が外でいくらになるかが分かると、必要額の計算そのものが変わります。


それでも足りないなら、支出側を下げます
貯金がゼロでも、出ていくお金を下げる制度があります。
| 制度 | 何が下がるか |
|---|---|
| 国民健康保険の軽減 | 会社都合で辞めた人は、前年所得を30%として計算されます |
| 国民年金の免除・納付猶予 | 所得が下がった年は、申請で全額または一部が免除されます |
| 住居確保給付金 | 家賃相当額が原則3か月支給されます |
| 求職者支援制度 | 雇用保険が使えない人向け。月10万円の給付があります |
どれも申請しないと動きません。 黙っていて自動的に適用されるものはありません。
免除された期間も年金の受給資格期間には入りますが、将来もらえる額は減ります。 未納のまま放置するのとは扱いが違うので、払えないなら必ず申請してください。

ここまでが計算です。足りないのは貯金ではなく日数なので、有給の消化が効きます。

よくある質問
お金の不安でよく出る疑問に答えます。
- 貯金ゼロで辞めるのは無謀ですか?
-
無謀かどうかは、貯金額ではなく無収入の月数で決まります。自己都合で辞めて有給も残っていない場合、最初の失業保険が振り込まれるまでおおむね2か月半かかります。その間の生活費と、国民年金の月17,920円、健康保険、去年の所得に対する住民税を払える見込みがあるかどうかです。逆に有給が20日残っていて会社都合になるなら、無収入の期間は1か月を切ることもあります。同じ「貯金ゼロ」でも、条件でまったく違います。
- 失業保険は辞めてすぐもらえないのですか?
-
すぐには入りません。まず離職票が届くのに退職日から10日前後かかり、それを持ってハローワークで申請します。そこから待期期間が7日あり、自己都合ならさらに給付制限が1か月つきます。初回の認定日は申請からおよそ4週間後で、振込はその1週間程度あとです。会社都合なら給付制限がないぶん短く、おおむね1か月半で最初の振込に届きます。
- 有給を使いきってから辞めるのは可能ですか?
-
可能です。有給は労働者の権利で、辞めるときは会社に時季変更する先がないため断れません。ただし会社が退職日を前に寄せようとすることがあり、そこは話し合いになります。この話し合いに入れるのは労働組合型と弁護士型の退職代行だけで、民間企業型は意思を伝えるところまでです。有給20日は給料が出る期間が約1か月伸びるということなので、必要額でいえば2か月分が動きます。
- 住民税はどのくらい来ますか?
-
去年の課税通知書に年額が書かれているので、推測する必要はありません。住民税は所得割10%と均等割5,000円が基本の形で、前年の所得に対してかかります。会社員のうちは12回に分けて給料から天引きされていますが、辞めると年4回の納付書に変わります。1月から5月に辞めた場合は5月分までが最後の給与から一括で引かれるため、最後の手取りが大きく減ります。6月から12月に辞めた場合は、残りが納付書で自宅に届きます。
- 国民健康保険と任意継続、どちらが安いですか?
-
人によって逆転します。任意継続はいまの標準報酬月額をもとに計算し、会社が負担していた分も自分が払います。国民健康保険は前年の所得と自治体ごとの料率で決まり、会社都合で辞めた人には前年所得を30%として計算する軽減があります。両方の金額は聞けば教えてもらえるので、辞める前に協会けんぽや健康保険組合と、市区町村の窓口の両方に確認してください。任意継続の期限は退職日の翌日から20日以内です。
- 国民年金は払わなくてもいいですか?
-
未納のまま放置するのは避けてください。所得が下がった年は申請すれば全額免除や一部免除、納付猶予が受けられます。免除された期間も年金の受給資格期間には算入されるため、未納とは扱いが違います。ただし将来受け取る額は減ります。令和8年度の保険料は月17,920円で全国一律なので、免除申請が通るかどうかで年間20万円以上の差になります。
- 次が決まっていないと辞められませんか?
-
決まっていなくても辞められます。ただし自己都合ならおよそ2か月半、会社都合でも1か月半の無収入期間が発生するので、その日数と月々の支出を先に出しておいてください。次を決めてから辞めれば無収入の期間はゼロになりますが、在職中は時間が取れず、条件を落とした先に決めてしまう人もいます。どちらが正しいということはなく、自分の必要額が出ていれば選べます。出ていないと、不安のまま先延ばしになります。
- 借金がある状態で辞めるのは危険ですか?
-
返済額を「毎月出ていく額」に入れて計算してください。危険かどうかは、自己都合ならおよそ2か月半、会社都合なら1か月半という無収入期間を、返済を続けながら越えられるかどうかです。国民年金の月17,920円と住民税も同時に来ます。越えられないなら、有給を全部使って無収入の期間を縮める、次を決めてから辞める、といった手で日数のほうを削ります。返済が止まると信用情報に残るので、辞める前に貸している側へ相談しておくほうが安全です。
まとめ:足りないのは貯金ではなく日数です
要点を整理します。
- 必要額は毎月出ていく額 × 無収入の月数 + 予備1か月で出ます
- 失業保険の最初の振込は、自己都合でおおむね2か月半、会社都合で1か月半
- 辞めた翌月から国民年金17,920円と住民税と健康保険が自己負担になります
- 有給20日は、必要額を2か月分動かします
- 支出側を下げる制度は、どれも申請しないと動きません
貯金が貯まるのを待っている間も、住民税は去年の稼ぎに対してかかり続けます。 数字を出せば、いつなら辞められるかが日付で分かります。


