会社が倒産して、給料が支払われないまま終わった。
そのときのために、国が立て替える制度があります。
この記事でわかること
- 立て替えてもらえる金額と上限
- 対象になる「倒産」の範囲
- 退職した時期の条件
- 対象外になる場合
結論:8割が立て替えられます
制度の根拠は法律にあります。

賃金の支払の確保等に関する法律7条が、政府が未払賃金に係る債務の弁済を行うことを定めています。実施しているのは独立行政法人労働者健康安全機構です。
立て替えられるのは、同法施行令4条1項により未払賃金総額の80%です。
ただし上限があります。退職した日の年齢で3つに分かれます。
| 退職日の年齢 | 未払賃金総額の上限 | 立替払の上限(80%) |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
| 30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
| 45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
未払いが上限を超えていても、超えた分は対象になりません。45歳以上で400万円未払いでも、立替払は296万円までです。
年齢で見るのは「基準退職日」です。施行令4条1項は、対象期間内に退職した日を基準退職日とし、複数回あるときは最初の退職の日をいうとしています。誕生日をまたぐ時期に辞めた人は、どちらの区分に入るかで100万円以上変わります。


「倒産」には2つの形があります
言葉の中身が分かれています。

ひとつは法律上の倒産です。施行令2条1項が並べています。
| 事由 | 根拠 |
|---|---|
| 破産手続開始の決定 | 法7条 |
| 特別清算開始の命令 | 施行令2条1項1号 |
| 再生手続開始の決定 | 同2号 |
| 更生手続開始の決定 | 同3号 |
もうひとつは事実上の倒産です。裁判所の手続きを取っていなくても、事業活動に著しい支障が生じて賃金を支払えない状態になったことについて、労働基準監督署長の認定を受けた場合が当たります(施行令2条1項4号)。
この4号は、中小企業事業主に限られます。同条2項が、業種ごとに資本金と労働者数で線を引いています。
| 業種 | 資本金または出資の総額 | 常時使用する労働者数 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| それ以外 | 3億円以下 | 300人以下 |
認定の申請をするのは、退職した労働者側です。会社が動かなくても進められます。


退職した時期に、条件があります
ここで対象から外れる人が出ます。

施行令3条です。対象になるのは、破産手続開始などの申立てがあった日の6か月前の日から2年間に退職した人です。
倒産する半年以上前に辞めていた場合、この期間から外れます。逆に、申立てのあとに退職した人も、2年の範囲内なら含まれます。
自分がいつ辞めたかと、会社の申立てがいつあったかを並べてください。日付だけで決まる部分です。


対象になる賃金と、ならない賃金
施行令4条2項が範囲を定めています。
対象は、基準退職日以前の労働に対する賃金と、退職に係る退職手当です。基準退職日の6か月前の日から請求日の前日までに支払期日が到来し、まだ支払われていないものが入ります。
そして総額が2万円未満のものは、除かれます。少額だと対象外になるということです。
賞与は対象になりません。労働基準法24条2項本文の賃金と退職手当が対象なので、臨時に支払われる賃金は含まれない形になっています。
つまり対象になるのは、毎月の給与と退職金です。未払いが何か月ぶんあるかを数えるときは、この2つだけを拾ってください。

手続きの順番
進め方です。

1つめは、どちらの倒産かを確かめることです。破産などの手続きが取られているなら法律上の倒産で、破産管財人などが証明します。取られていないなら、労働基準監督署に事実上の倒産の認定を申請します。
2つめは、未払額を確定させることです。給与明細、雇用契約書、タイムカードの写しなど、いくら未払いなのかを示せるものを集めます。
3つめは、請求です。証明または確認を受けたうえで、労働者健康安全機構へ請求します。
手元に残っている書類がすべてです。会社が閉まってしまうと、給与明細も出てきません。在職中や退職直後に受け取ったものを、捨てずに取っておいてください。


立替払だけでは足りない場合
正直に書きます。

立て替えられるのは8割で、上限もあります。残りの2割と、上限を超えた分は、立替払では戻りません。
その部分は、会社に対する債権として残ります。破産手続の中で配当を受けられる場合がありますが、金額は財産の状況によります。
破産手続では、労働者の賃金債権は優先的に扱われる位置づけになっています。ただし優先されることと、実際に配当があることは別です。会社に財産が残っていなければ、順位が高くても戻りません。
生活のほうも同時に動きます。失業保険の手続きは、離職票が必要です。会社が倒産して離職票が出てこない場合、ハローワークで相談すれば手続きの方法があります。
倒産による離職は、自己都合ではありません。給付制限がかからず、所定給付日数も変わります。


よくある質問
- いくら立て替えてもらえますか
-
未払賃金総額の80%です。賃金の支払の確保等に関する法律施行令4条1項が定めています。ただし上限があり、退職した日の年齢で3つに分かれます。
30歳未満は未払賃金総額110万円が上限で、その80%の88万円まで。30歳以上45歳未満は220万円が上限で176万円まで。45歳以上は370万円が上限で296万円までです。未払いが上限を超えていても、超えた分は対象になりません。
- どんな場合が「倒産」に当たりますか
-
2つの形があります。ひとつは法律上の倒産で、破産手続開始の決定、特別清算開始の命令、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定が当たります。
もうひとつは事実上の倒産です。裁判所の手続きがなくても、事業活動に著しい支障が生じて賃金を支払えない状態になったことについて、労働基準監督署長の認定を受けた場合が該当します。ただしこちらは中小企業事業主に限られ、業種ごとに資本金と労働者数で線が引かれています。
- いつ辞めた人が対象ですか
-
施行令3条により、破産手続開始などの申立てがあった日の6か月前の日から2年間に退職した人が対象です。
倒産する半年以上前に辞めていた場合は、この期間から外れます。逆に申立てのあとに退職した人も、2年の範囲内であれば含まれます。自分の退職日と、会社の申立てがあった日を並べて確認してください。日付だけで決まる部分です。
- 賞与も対象になりますか
-
なりません。施行令4条2項が対象としているのは、基準退職日以前の労働に対する労働基準法24条2項本文の賃金と、退職に係る退職手当です。
臨時に支払われる賃金や賞与は、この範囲に入りません。また、基準退職日の6か月前の日から請求日の前日までに支払期日が到来したものに限られます。それより前の未払いは、立替払の対象から外れます。
- 金額が少ないと対象外ですか
-
総額が2万円未満だと除かれます。施行令4条2項が、未払賃金総額が2万円未満であるものを除くとしています。
2万円は、対象となる期間内に支払期日が到来した未払いの合計です。1か月ぶんが少額でも、複数月ぶんを合わせて2万円以上になれば対象になります。まず給与明細を並べて、未払いの合計を出してください。
- 会社が手続きをしてくれません
-
事実上の倒産であれば、退職した労働者から申請できます。施行令2条1項4号は、事業主に係る事業を退職した者の申請に基づき労働基準監督署長の認定があったこと、としています。
会社が動かなくても、こちら側から進められる形になっています。申請先は労働基準監督署です。給与明細や雇用契約書など、未払いの事実を示せるものを持っていってください。
- 残りの2割はどうなりますか
-
立替払では戻りません。会社に対する債権として残ります。破産手続の中で配当を受けられる場合がありますが、金額は会社の財産の状況によります。
上限を超えた分も同じ扱いです。45歳以上で400万円の未払いがあっても、立替払は296万円までなので、残りは手続きの中で扱われることになります。配当があるかどうかは、破産管財人からの連絡で分かります。
- 失業保険はどうなりますか
-
倒産による離職は、自己都合ではありません。給付制限がかからず、所定給付日数も自己都合の場合とは変わります。
手続きには離職票が必要ですが、会社が倒産して出てこないことがあります。その場合はハローワークで相談してください。会社を通さずに手続きを進める方法があります。給与明細や雇用契約書を持っていくと、話が早く進みます。
まとめ:日付と金額で決まります
整理します。
- 立て替えられるのは未払賃金総額の80%(賃確法施行令4条1項)
- 上限は退職日の年齢で88万円/176万円/296万円
- 倒産は法律上(破産・特別清算・再生・更生)と事実上(労基署長の認定)の2つ
- 事実上の倒産は中小企業事業主に限られる。認定の申請は退職した労働者から
- 対象は申立日の6か月前から2年間に退職した人。総額2万円未満は対象外
自分の退職日と、会社の申立日を並べてください。そこが最初の分かれ目です。


