従業員持株会は、辞めれば自動で戻ってくるものではありません。社内預金も同じです。どちらも自分から手続きをして、はじめて手元に来ます。
しかも会社を辞めたあとは、聞ける相手がいなくなります。在職中に確認しておくかどうかで、手間がまったく変わります。
この記事でわかること
- 持株会と社内預金で、扱いがどう違うのか
- 社内預金が法律で守られている範囲
- 持株会の株が単元に満たない場合どうなるか
- 退職前に確認しておく3つのこと
結論:性質がまったく違います
まず違いを押さえてください。

| 社内預金 | 従業員持株会 | |
|---|---|---|
| 正体 | 会社に預けたお金 | 会社の株を共同で買う仕組み |
| ルールの出どころ | 労働基準法 | 会社ごとの規約 |
| 退職時 | 請求すれば返還される | 退会して株か現金を受け取る |
| 元本 | 減りません | 株価で増減します |
| 受け取りの手間 | 比較的かんたん | 証券口座が必要になることがある |
社内預金は法律で守られています。持株会は会社ごとのルールで動きます。ここが最大の違いです。
同じ「給料から天引きされていたもの」でも、扱いは別物になります。
共通しているのは、請求しないと動かないことです
そして、辞めたあとに「請求しないと動かないもの」は、この2つだけではありません。
| 放置すると | |
|---|---|
| 社内預金 | 会社に残ったまま |
| 持株会 | 手続きが止まったまま |
| 確定拠出年金 | 退職から6ヶ月で自動移換 |
| 失業保険 | 1円も出ません。受給期間は原則1年 |
金額でいうと、桁が違うのは失業保険です。 日額の上限9,110円に給付日数の上限360日を掛けると、条件が揃った場合の上限は約328万円になります。持株会の数万円を取り戻すより先に、こちらを確認する価値があります。
日本退職サポートセンターは受給額の診断を無料で受けられます。自分がどの区分で何日分なのかは、離職票が届く前でも分かります。

社内預金は労働基準法に定めがあります
会社にお金を預けていた人向けの話です。
そもそも会社は、勝手に貯金させられません
労働基準法第18条は、賃金の全部または一部を強制的に貯蓄させること(強制貯金)を禁止しています。そのうえで、労働者が委託した場合に限り、一定の制約のもとで会社が貯蓄金を管理することを認めています。
会社が直接預かる形が社内預金です。この場合、厚生労働省が定める利率以上の利子をつけなければなりません。
出典は社内預金とは何ですか(厚生労働省)です。
利率には下限があります
下限利率は年0.5%(5厘)です。
そして重要なのがここです。下限利率を下回る利率を労使協定で定めても無効になり、その場合は下限利率を付けたものとみなされます。
下限利率は市中金利の実勢を考慮して毎年見直されるため、自分の会社の利率が現在の下限を下回っていないかは確認する価値があります。
出典は社内預金の下限利率は何%ですか(厚生労働省)です。(2026年8月時点。制度は変更されます。最新の内容は公式サイトでご確認ください)
条文そのものは労働基準法(e-Gov法令検索)の第18条で読めます。
退職金が本当に出るのかも、同時に不安になります
社内預金を確認していると、次の疑問が出てきます。「そもそも退職金はちゃんと支払われるのか」です。
退職金は就業規則や退職金規程で定めがある場合に支払い義務が生じます。まず規程を確認してください。
規程があるのに支払われない、金額が明らかに違う。こうした場合は請求できます。ただし請求まで対応できるのは弁護士型だけです。
弁護士法人ガイアの退職代行サービスは弁護士法人が運営していて、有給消化・最後の給料・未払い残業代・退職金の請求まで対応範囲に入っています。

ただし、黙っていても振り込まれません
守られているのは「返してもらえる権利」であって、手続きまで自動で進むわけではありません。
退職時の書類に、社内預金の払い戻し先を書く欄があることが多いところです。ここを空欄のまま出すと、そのまま止まります。
社内預金は法律、持株会は規約。 根拠が違うので、確認する先も変わります。
持株会は会社ごとの規約で決まります
こちらは法律ではなく、勤めていた会社の持株会規約が基準になります。

退職すると、原則として退会になります
従業員持株会は、その会社で働いている人が入る仕組みです。退職すれば会員ではなくなるため、退会の手続きに進みます。
受け取り方は2通りです
積み立てた株の扱いは、単元に届いているかどうかで変わります。
| 状態 | 扱い |
|---|---|
| 単元株に届いている | 自分の証券口座へ移します |
| 単元に満たない端数 | 売却して現金で受け取ることが一般的 |
ここでつまずく人が多いのは、証券口座を持っていないと株を受け取れないという点です。
口座開設には日数がかかります。退職してから慌てて申し込むと、そのぶん手続きが止まります。
会社ごとに違う部分
規約次第で変わる部分があります。
- 退会後、いつまでに手続きするか
- 端数の株を売るか、買い増して単元にするか
- 奨励金の扱い
「一般的にはこう」ではなく、自分の会社の規約を見る必要があります。退職前なら、総務に聞けば教えてもらえます。
社内預金も持株会も、会社は代わりに手続きしてくれません。 退職日が決まったところから逆算してください。
社内預金は、請求すれば返ってきます
ここは条文がはっきりしています。
使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない
— 労働基準法18条5項
「遅滞なく」なので、待たされる理由がありません。 退職の何か月前かも関係ありません。請求した時点で返す義務が発生します。
さらに、返さない会社に対しては行政が動けます。同条6項で、貯蓄金の管理を続けることが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁が管理の中止を命じられると決まっています。中止を命じられた会社は、遅滞なく返さなければなりません。
つまり返ってこないという事態は、制度上は想定されていません。 止まっているとしたら、請求していないか、請求が担当者で止まっているかのどちらかです。
放置すると、どちらも止まったままになります
期限の考え方が違います。
| 放置した場合 | |
|---|---|
| 社内預金 | 会社に残ったまま。請求すれば返還されます |
| 持株会 | 手続きが止まったまま。株価が下がっても動かせません |
社内預金は減りません。ただし利子がついていても、手元にない限り使えません。
持株会のほうが厄介です。株価は動き続けるのに、自分では売れない状態が続きます。下がっていくのを見ているしかない期間が生まれます。
確定拠出年金だけは、期限があります
同じ「辞めたあとに残るもの」でも、確定拠出年金は別です。退職から6ヶ月で自動的に移され、運用が止まります。
3つを並べると、急ぐ順番がはっきりします。
| 期限 | 放置するとどうなるか | |
|---|---|---|
| 確定拠出年金 | 退職から6ヶ月 | 自動移換。運用が止まり、手数料が引かれ続ける |
| 社内預金 | 期限の定めなし | 請求すれば戻る。ただし請求しないと動かない |
| 持株会 | 規約による | 退会の手続きをしないと、名義が残ったままになる |
急ぐのは確定拠出年金だけです。 ただし残り2つも、自分から動かないと止まったままです。

社内預金と持株会には、そこまで厳しい期限はありません。ただし放置していい理由にもなりません。
奨励金がついていた分はどうなるか
持株会には、積み立てた額に会社が上乗せしてくれる奨励金の制度があることがあります。
この扱いも規約で決まります。そのまま自分の持ち分になる会社もあれば、条件が付く会社もあります。「うちはどうなっていますか」と事務局に聞くのが確実です。
聞くときは、この3つを一度に出してください。
1. 奨励金は、退職しても自分の持ち分として残りますか
2. 残らない場合、返還の条件はどこに書かれていますか
3. 規約のその条文を見せてもらえますか
3つ目が効きます。 口頭の説明だけだと、あとで食い違ったときに確かめようがありません。規約は書面で存在しているので、見せてもらえます。
金額としては小さくない場合があるので、受け取れるものを知らずに手放さないでください。
財形貯蓄は、また別の制度です
給与天引きで積み立てるものには、財形貯蓄もあります。社内預金とは別の仕組みです。
こちらは会社と取扱金融機関の組み合わせで運用されているため、退職時の扱いも取扱金融機関に確認する必要があります。通帳や取引報告書に金融機関名が書かれています。
天引きされているものが何なのか分からない場合は、給与明細の控除欄を一度並べて見てください。社内預金、持株会、財形、確定拠出年金。名前が違えば、手続きも違います。
どちらも退職日が決まらないと手続きが始まりません。 日程で止まっているなら、そこが先です。

私が退職したときに面倒だったこと
自分の話をします。
辞めるときに面倒だったことを並べると、会社との話し合い、引き止め、退職金が本当に出るのかという不安、健康保険の切り替え、そして社内預金と持株会でした。
このうち社内預金と持株会は、辞める直前まで存在を忘れていました。毎月自動で引かれているものなので、普段は意識しません。
気づいたのは、書類を書いている最中でした
退職の手続きで渡された書類に欄があって、そこで初めて「これも処理するのか」と気づきました。
辞めることで頭がいっぱいだと、こういうものは全部後回しになります。
引き止められている最中や、次の仕事を探している最中に、証券口座の話まで考えられる人は多くありません。
だから、在職中に一度だけ確認してほしいです
必要なのは10分です。その10分を惜しむと、辞めたあとに何時間もかかります。
辞めた会社に電話して「持株会の件で」と切り出すのは、想像以上に気が重い作業です。
そして、その10分を作れない理由がはっきりしている人もいます。辞めると決めたのに切り出せず、確認どころではないという状態です。
伝える工程だけなら、外に出せます。退職代行辞スルはLINEで完結し、申し込んだ日から出社せずに進められます。料金は正社員が税込22,000円、パート・アルバイトが18,000円です(2026年8月時点)。在職中に代行へ依頼すれば、確認と退職の連絡を同じタイミングで済ませられます。

退職前に確認する3つ
順番に並べます。

1. 社内預金の残高と利率
給与明細か、社内の福利厚生のページで確認できます。利率が年0.5%を下回っていないかも見ておいてください。
2. 持株会の口数と、単元に届いているか
持株会の事務局か総務に聞きます。「退職したら株はどうなりますか」と聞けば済みます。
3. 証券口座を持っているか
持株会に入っているなら、退職前に証券口座を作っておくと手続きが早く済みます。
口座開設は無料でできる金融機関がほとんどです。辞めてから作ると、そのぶん待ち時間が増えます。
ついでに、転職先の制度も確認しておいてください
社内預金や持株会があるかどうかは、会社によってまったく違います。次の会社で同じ制度があるとは限りません。
転職先を探している段階なら、福利厚生の中身も条件に入れられます。求人票に書かれていないことが多いので、エージェント経由なら確認してもらえます。
20代で未経験の業界も見ておきたいならゼロイチ転職、既卒や第二新卒の枠なら【キャリアパーク就職エージェント】が対象です。どちらも無料で面談できます。
辞めると言えないまま、確認だけが残っている人へ
ここまでの話は「辞めると決めたあと」の準備です。
ここで分かれ目になるのが、会社と条件を交渉する必要があるかどうかです。
社内預金の返還や持株会の手続きは、伝えれば進みます。ただし有給を全部使ってから辞めたい、未払い分も一緒に精算したい、となると話が変わります。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
交渉まで必要なら円満退職ユニオンのような労働組合型が対象です。伝えるだけで足りるなら、受付時間の早さで選んで構いません。


よくある質問
同じ手続きでよく出る疑問に答えます。
- 退職したら社内預金は自動で振り込まれますか?
-
自動ではありません。退職手続きの書類で払い戻しの指定をするか、会社に請求する必要があります。空欄のまま出すと止まったままになります。
- 会社が倒産したら社内預金はどうなりますか?
-
社内預金には保全措置の仕組みがあります。ただし個別の状況によって扱いが変わるため、労働基準監督署か総合労働相談コーナー(厚生労働省)に相談してください。
- 持株会の株は現金でもらえますか?
-
単元に満たない端数は売却して現金で受け取ることが一般的です。単元に届いている分は証券口座への移管が基本になります。会社ごとの規約によって扱いが違うため、持株会の事務局に確認してください。
- 証券口座がないと、株は受け取れませんか?
-
単元株を受け取るには自分の証券口座が必要になるのが一般的です。口座開設に日数がかかるため、退職前に用意しておくと手続きが早く進みます。
- すでに辞めてから何年も経っています
-
社内預金は請求すれば返還されます。持株会も手続きは残っています。まずは辞めた会社の総務か、持株会の事務局に連絡してください。
- 利率が0.5%より低いのですが
-
下限を下回る利率を労使協定で定めても無効です。労働基準法18条4項に「その利子が、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは、その厚生労働省令で定める利率による利子をつけたものとみなす」と書かれているので、自動的に下限まで引き上げられた扱いになります。
つまり、会社が0.1%と決めていても、受け取れるのは下限の利率で計算した額です。差額を請求できます。明細に書かれている利率と、実際に付いた利子を突き合わせてください。 合わない場合は労働基準監督署に相談できます。
まとめ:どちらも、自分から動かないと止まったままです
要点を整理します。
- 社内預金は労働基準法、持株会は会社ごとの規約で決まる
- 社内預金の下限利率は年0.5%。下回る協定は無効
- 持株会は証券口座がないと単元株を受け取れないことがある
- どちらも自動では戻らない。請求と手続きが必要
- 確定拠出年金だけは6ヶ月の期限がある
在職中の10分で終わることが、辞めたあとには何時間にもなります。まだ辞めていないなら、今日のうちに残高だけでも見ておいてください。
状況別に、次にやることを整理しておきます。
- 退職金や未払い分の請求までなら弁護士法人ガイアの退職代行サービス(弁護士型・請求まで対応)
- 有給の消化まで交渉したいなら円満退職ユニオン(法適合労働組合・一律22,000円)
- 辞めると言えないままなら退職代行辞スル(LINE完結・当日対応)
- 手元にお金がないなら即ヤメ(完全後払い)

辞めたあとに必要になるのは、この2つだけではありません。


参考にした公的機関のページ
本文の数字と条文は、次のページで確認しています。
