契約期間が、まだ半年残っています。
「契約なんだから、満了までは無理だ」と言われました。
この記事でわかること
- 期間の途中で辞められる道が、条文に3つあること
- 「1年働けば辞められる」が正確でないこと
- 違約金を定める契約が禁止されていること
- それでも話が進まないときにできること
結論:出口は3つあります
原則は、期間満了までです。ただし条文に例外が3つ書かれています。

| 根拠 | 条件 | 効果 |
|---|---|---|
| 民法628条 | やむを得ない事由があるとき | 直ちに解除できる |
| 労働基準法137条 | 1年を超える契約で、初日から1年経過後 | いつでも退職できる |
| 労働基準法15条2項 | 明示された労働条件が事実と違うとき | 即時に解除できる |
「契約だから無理」は、正確ではありません。
どれに当てはまるかは、自分の契約書を見ないと分かりません。まず契約期間の長さと、初日の日付を確認してください。

①「やむを得ない事由」があれば、直ちに解除できます
民法628条です。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
期間の定めのない雇用は、申し入れから2週間で終わります。有期契約の場合はそれよりも早く、「直ちに」と書かれています。
ただし「やむを得ない事由」が何を指すかは、条文に書かれていません。
後半に注意してください
条文には続きがあります。その事由が自分の過失で生じたものなら、損害賠償の責任を負うと書かれています。
「やむを得ない事由さえあれば、何をしても賠償されない」ではありません。そこまで含めて条文です。


②「1年を超える契約」なら、1年で辞められます
ここがいちばん誤解されているところです。

労働基準法137条を、そのまま引きます。
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(中略)は、(中略)民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
「その期間が一年を超えるものに限る」と書いてあります。
| 契約期間 | 137条が使えるか |
|---|---|
| 6か月 | 使えません |
| ちょうど1年 | 使えません |
| 1年6か月 | 初日から1年経過後に使えます |
| 3年 | 初日から1年経過後に使えます |
「1年働けば辞められる」という説明を見かけますが、正確ではありません。1年契約を更新している人は、この条文の対象外です。

除かれる人もいます
条文は「第十四条第一項各号に規定する労働者を除く」としています。労働基準法14条1項各号にあたるのは、この2つです。
- 高度の専門的知識等を有する労働者(その業務に就く人)
- 満60歳以上の労働者
この人たちは最長5年の契約が結べる代わりに、137条の対象から外れています。

③ 条件が求人と違うなら、即時に解除できます
見落とされやすい条文です。

労働基準法15条2項です。
労働基準法15条2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。契約書や労働条件通知書に書かれていた内容と実際が違うなら、期間の途中でも即時に解除できるということです。
さらに3項があります。就業のために住居を変更した人が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、必要な旅費は会社の負担になります。ここまで知っている人はほとんどいません。

「違う」と言うには、書いたものが要ります
この条文を使うには、明示された条件と実際を比べることになります。
だから労働条件通知書や雇用契約書が要ります。手元にない場合は、会社に交付を求めてください。求人票の写しやメールも、突き合わせる材料になります。

「違約金」を定める契約は禁止されています
途中で辞めると言うと、こう言われることがあります。

- 「契約違反だから違約金が発生する」
- 「研修費を返してもらう」
- 「損害賠償を請求する」
労働基準法16条です。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
「途中で辞めたら10万円」のような取り決めは、そもそも結べません。
ただし、禁止されているのはあらかじめ額を決めておくことです。実際に生じた損害の賠償請求まで封じる条文ではありません。「絶対にありえない」とは書けません。
現実には、金額を示して脅す形で使われることが多いところです。言われた日付と内容を、その日のうちにメモしてください。

辞めさせない、は通りません
労働基準法5条に、こう書かれています。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
強い言い方で引き止められている場合、この条文の話になります。相談窓口に持っていくときの根拠にもなります。

期間満了で辞めるなら、理由は要りません
途中で辞める話ばかり書きましたが、満了で終える場合はもっと単純です。

有期契約は、期間が来れば終わります。更新するかどうかは、双方の合意です。更新しないと伝えるだけで足ります。
理由を説明する義務もありません。
9月末や3月末は、契約の区切りになりやすい時期です。更新しないつもりなら、いつ伝えるかを先に決めておいてください。
辞めたあとのお金は、請求すれば7日以内です
労働基準法23条です。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
請求すれば7日以内です。「給料は次の給与日まで待って」と言われたときに使えます。積立金や保証金を預けている場合も、同じ条文で戻ります。


よくある質問
- 契約期間の途中でも辞められますか
-
条文に3つの道があります。やむを得ない事由があれば民法628条により直ちに解除できます。契約期間が1年を超えるものなら、労働基準法137条により初日から1年経過後はいつでも退職できます。
明示された労働条件が事実と違う場合は、労働基準法15条2項により即時に解除できます。どれに当てはまるかは契約書を見ないと分かりません。まず契約期間の長さと初日の日付を確認してください。
- 1年働けば辞められると聞きました
-
正確ではありません。労働基準法137条は「その期間が一年を超えるものに限る」と書かれています。1年6か月契約や3年契約なら1年経過後に使えますが、ちょうど1年の契約は対象外です。
1年契約を毎年更新している人も、1回の契約が1年なので使えません。この場合は民法628条か、期間満了を待つかになります。契約書の期間欄を確認してください。
- やむを得ない事由とは何ですか
-
条文に定義は書かれていません。だから具体例を挙げて「これなら大丈夫」とは言えないところです。最終的に判断するのは裁判所になります。
そして条文には続きがあり、その事由が自分の過失で生じたものなら損害賠償の責任を負うとされています。体調や家庭の事情なら、診断書や記録を残しておくと、事由があったことを示す材料になります。
- 途中で辞めたら違約金を払えと言われました
-
労働基準法16条で、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約は禁止されています。「途中で辞めたら10万円」のような取り決めは、契約書に書いてあっても効力がありません。
ただし禁止されているのはあらかじめ額を決めておくことで、実際に生じた損害の賠償請求まで封じるものではありません。言われた日付と金額をメモに残してください。
- 研修費を返せと言われました
-
内容によります。業務命令として受けさせた研修の費用について、辞めたら返せとするのは労働基準法16条に触れる可能性があります。一方、本人が希望した資格取得を会社が立て替えた場合は、扱いが変わります。
契約書や誓約書に何と書かれているかを確認してください。金額が示されている場合は、その紙を持って相談窓口へ行くほうが早く片づきます。
- 更新しないと伝えるのはいつまでですか
-
法律で日数が決まっているわけではありません。契約書に申出の時期が書かれていることがあるので、まずそこを確認してください。
9月末や3月末が満了なら、その1か月前には伝えておくと手続きが滞りません。更新しない理由を説明する義務はないので、意思だけ伝えれば足ります。
- 引っ越して入社しましたが、条件が求人と違いました
-
労働基準法15条2項により、即時に労働契約を解除できます。さらに3項で、就業のために住居を変更した人が契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、必要な旅費は会社が負担すると定められています。
条件が違うことを示すには、求人票や労働条件通知書が要ります。手元になければ会社に交付を求めてください。求人サイトの画面を保存しておくのも材料になります。
- 辞めた後の給料はいつ払われますか
-
労働基準法23条により、請求すれば7日以内です。次の給与支給日まで待つ必要はありません。積立金や保証金、貯蓄金なども同じ7日以内に返還されます。
争いがある場合でも、異議のない部分は7日以内に支払うと定められています。「全部保留」は条文に反します。請求した日を記録に残しておいてください。
まとめ:契約書の期間欄を先に見てください
整理します。
- やむを得ない事由があれば、直ちに解除できる(民法628条)
- 1年を超える契約なら、初日から1年経過後はいつでも退職できる(労働基準法137条)
- 条件が事実と違うなら、即時に解除できる(同15条2項)
- 違約金を定める契約は禁止されている(同16条)
まず見るのは契約書の期間欄です。6か月なのか、1年なのか、1年6か月なのか。ここで使える条文が変わります。
そのうえで、話が進まないなら別の手があります。契約が残っていることと、辞められないことは同じではありません。

