「即日退職」という制度は、法律にありません。あるのは、申し入れから2週間という期間だけです。
だから問題は「辞められるか」ではなく、その2週間をどう埋めるかになります。
この記事でわかること
- 2週間を埋める4つの方法と、それぞれの代償
- 本命が有給になる理由
- 有給が残っていないときにどうなるか
- 会社の側との、期間の非対称
結論:埋め方は4つです
先に全部出します。

| 埋め方 | 給料 | 会社の同意 | 使える条件 |
|---|---|---|---|
| ① 有給で埋める | 出る | いらない | 残日数が足りていること |
| ② 欠勤で埋める | 出ない | いらない | いつでも |
| ③ 合意で当日に終わらせる | — | 要る | 会社が応じたとき |
| ④ やむを得ない事由 | — | いらない | 期間の定めがある契約 |
明日から行かなくていいのは、①②③④のどれでも同じです。違うのは、給料が出るかどうかと、会社と揉めるかどうかだけです。


本命は、有給で埋める形です
いちばん損が少ない方法です。
民法627条1項により、期間の定めのない雇用は、解約の申し入れの日から2週間で終わります。この2週間に有給を当てれば、出社せずに、給料も出たまま退職日を迎えられます。
有給を取る日を指定するのは、労働基準法39条により労働者側です。会社にあるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に他の日へ変えてもらう時季変更権だけです。
ここで効くのが、退職日という区切りです。変更する先の日が退職日より後にはないので、退職間際は時季変更権が働きにくくなります。
だから理屈のうえでは通ります。問題はそこではなく、言い出せるかどうかです。


残日数が足りるかを、先に数えます
必要なのは、2週間のうちの所定労働日の数です。土日が休みの会社なら、10日前後になります。
自分の残日数が10日あるなら、それで埋まります。5日しかないなら、5日は有給、残りは欠勤という組み合わせになります。
残日数が分からないなら、給与明細か、勤怠システムの有給残高を見てください。会社によっては年度初めに通知しているところもあります。
足りなくても、辞められなくなるわけではありません。次で書きます。


欠勤で埋めても、退職はできます
給料が減るだけの話です。

働いていない日には賃金が発生しません。ノーワーク・ノーペイと呼ばれる考え方で、欠勤した日数分が引かれます。
それでも、2週間が過ぎれば雇用は終わります。欠勤したから退職が無効になる、ということはありません。
注意しておくことが2つあります。
1つめは、就業規則です。無断欠勤が続いた場合の懲戒を定めている会社があります。連絡をしないまま来なくなるのと、退職を申し入れたうえで欠勤するのは、扱いが違います。申し入れは残しておいてください。
2つめは、賞与や退職金の算定です。出勤率で計算する規程があると、そこに響くことがあります。退職金規程を先に見てください。


会社が合意すれば、当日で終わります
いちばん早い形です。
2週間という期間は、会社の同意がなくても辞められる下限を示したものです。会社が「今日で構わない」と言えば、その日に雇用は終わります。合意解約と呼ばれます。
実際、人手に余裕がある職場や、辞めることが分かっている職場では、これで済むことがあります。1日で終われば、有給の残日数を気にする必要もありません。
ただし、こちらから頼む形になるので、条件が悪くなることがあります。有給を放棄させられる、退職金を減らされる、といった話が乗ってくることがあるからです。
合意する前に、退職日、有給の扱い、最終給与の支払日、この3つを書面で確かめてください。労働基準法23条1項により、請求があれば最終給与は7日以内に支払われます。口頭の「後日払います」で終わらせないでください。


期間の定めがある契約なら、628条があります
契約社員や派遣で、契約期間が残っている場合の話です。
民法628条に、こう書かれています。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
「直ちに」と書かれています。2週間も待ちません。ただし「やむを得ない事由」が要ります。

会社の側は、こうはいきません
ここは対称ではありません。


会社が労働者を即日で辞めさせるには、労働基準法20条1項により、30日前の予告か、30日分以上の平均賃金が必要です。予告なしにするには、労働者側に重い落ち度があることについて行政官庁の認定を受けなければなりません。
一方、働く側には予告手当を払う義務も、認定を取る義務もありません。
つまり、辞める側のほうが先に自由になっています。これは条文の作りがそうなっているからで、遠慮する理由にはなりません。


実際に決まるのは、有給が通るかどうかです
ここが要点です。

4つの埋め方を並べると分かりますが、給料が出たまま明日から行かなくて済むのは①だけです。②は減り、③は条件を譲ることがあり、④は事由が要ります。
そして①を通すには、退職の申し入れと、有給の時季指定を、会社に伝えなければなりません。言い出せない人にとっては、ここが最後の壁になります。
自分で言えない場合、代わりに伝える方法があります。ただし、退職代行は運営元によって扱える範囲が変わります。
| 運営元 | できること | 即日退職の場面で |
|---|---|---|
| 民間企業型 | 辞めると伝えるところまで | 有給の交渉ができない |
| 労働組合型 | 退職日・有給・最終給与の交渉まで | 有給を当てる調整ができる |
| 弁護士型 | 請求・訴訟まで | 争いが起きている場合 |
民間企業が運営している場合、会社と条件を交渉すると弁護士法72条に触れるおそれがあるため、伝えるところで止まります。有給を当てて即日にしたいなら、交渉ができる相手が要ります。


よくある質問
- 即日退職は法律で認められていますか
-
「即日退職」という制度は法律にありません。民法627条1項が定めているのは、期間の定めのない雇用は解約の申し入れの日から2週間で終わる、ということだけです。
だから実際には、この2週間をどう埋めるかの話になります。有給で埋める、欠勤で埋める、会社が合意して当日で終わらせる、期間の定めがある契約で民法628条のやむを得ない事由を使う。この4つです。どれを取っても、明日から出社しないこと自体はできます。
- 有給が足りないときはどうなりますか
-
足りない日数は欠勤になります。働いていない日には賃金が発生しないので、その分だけ最後の給料が減ります。
ただし、辞められなくなるわけではありません。2週間が過ぎれば雇用は終わります。5日分の有給しかないなら、5日は有給、残りは欠勤という組み合わせでも構いません。土日が休みの会社なら、2週間のうち所定労働日は10日前後です。まず残日数を数えてください。
- 欠勤したら懲戒になりませんか
-
退職を申し入れたうえでの欠勤と、連絡をしないまま来なくなるのは、扱いが違います。前者は退職の意思表示が残っているので、無断欠勤とは同じに扱えません。申し入れた日付が残る形にしておいてください。
ただし就業規則に欠勤の定めがある場合、賞与や退職金の算定に響くことがあります。出勤率で計算する規程だと、そこに効きます。労働基準法89条1号により、始業終業の時刻や休日は就業規則の記載事項なので、欠勤の扱いも同じ文書に書かれているはずです。退職金規程と合わせて、辞める前に見てください。辞めたあとだと、規程そのものが見られなくなります。
- 会社が「認めない」と言ってきました
-
退職に会社の承諾は要りません。民法627条1項は解約の申し入れとしていて、承諾を条件にしていないからです。申し入れが届いた日から2週間で、雇用は終わります。
大事なのは、申し入れが届いたことを残しておくことです。口頭だけだと「聞いていない」と言われることがあります。メール、内容証明、社内システムなど、日付が残る形にしてください。
- 契約社員でも即日で辞められますか
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期間の定めがある契約なら、民法628条があります。やむを得ない事由があるときは、直ちに契約を解除できると定められています。2週間も待ちません。
ただし「やむを得ない事由」が要ります。それが自分の過失によって生じたものなら、損害賠償の責任を負うとも書かれています。1年を超える契約なら、1年を経過したあとはいつでも辞められる別の道もあります。
- 貸与品はどうやって返せばいいですか
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郵送で構いません。制服、社員証、健康保険証、鍵、PC。出社しないまま辞める場合、これらは宅配便で送ることになります。追跡番号が残る方法にしておくと、届いていないと言われたときに示せます。
送料をどちらが持つかは決まりがないので、先に確認してください。健康保険証は返却が必要ですが、退職日の翌日以降でないと国民健康保険や任意継続の手続きに進めません。任意継続の申し込みは資格喪失日から20日以内という期限があるので、そこから逆算して返す日を決めます。私物が職場に残っている場合は、送り返してもらう方法も一緒に決めておいてください。
- 最後の給料はいつ振り込まれますか
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労働基準法23条1項により、請求があれば7日以内に支払い、預けている金品も返還しなければなりません。次の給料日まで待つ決まりはありません。
ただし請求しなければ、通常の給料日払いのままです。急ぐ事情があるなら、退職の申し入れと一緒に伝えてください。これも交渉が絡むところなので、自分で言えない場合は扱える相手に任せる方法があります。
- 自分で言えないので代行を使いたいです
-
運営元で扱える範囲が変わります。民間企業が運営している場合、会社と条件を交渉すると弁護士法72条に触れるおそれがあるため、辞めると伝えるところまでです。
即日にしたいなら有給を当てる必要があり、それは交渉です。扱えるのは、労働組合が運営している場合と、弁護士が対応する場合だけになります。頼む前に、運営元がどれなのかを確かめてください。
まとめ:先に、有給の残日数を数えます
整理します。
- 法律に「即日退職」はない。あるのは2週間という期間だけ
- 埋め方は4つ。給料が出たまま明日から行かずに済むのは、有給で埋める形だけ
- 有給が足りなければ欠勤になる。減るのは給料で、辞められなくなるわけではない
- 会社が合意すれば当日で終わる。ただし条件を譲ることがある
- 会社が即日で辞めさせるには予告か手当が要る。辞める側にその縛りはない
決まるのは、有給が通るかどうかです。通すには言い出す必要があって、そこが越えられないなら、交渉ができる相手に任せる形になります。

