辞めたのに、前の会社から電話が来ます。「あの件、どうなってた?」
応じる義務はありません。
この記事でわかること
- 応じる義務がない理由
- それでも残っている用件
- 連絡を止める伝え方
- それでも続く場合
結論:契約が終わっているので、義務もありません
出発点はここです。

働く義務は、労働契約から生まれます。契約が終われば、その義務も終わります。
労働契約法6条が、労働契約の成立をこう定めています。
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
「労働」と「賃金」が対になっています。退職後は賃金が支払われないので、労働する義務もありません。
引き継ぎの質問に答えることも、資料の場所を教えることも、労働です。無償で応じる義務は、契約が終わった時点でなくなっています。


それでも残っている用件があります
全部を断れるわけではありません。

| 用件 | 応じる必要 |
|---|---|
| 業務の質問、引き継ぎの確認 | なし |
| 「戻ってきてほしい」 | なし |
| 貸与品の返却(制服、PC、鍵、社員証) | あり(借りているもの) |
| 書類の受け渡し(離職票、源泉徴収票) | 受け取る側なので応じたほうが早い |
| 社会保険や住民税の手続き | 自分に関わるので確認する |
貸与品は借りているものなので、返す必要があります。制服、パソコン、鍵、社員証、名刺、業務用の携帯。まとめて送るなら、送った日と中身を控えて、追跡できる方法で送ってください。
健康保険証は、退職の日の翌日から使えません。返却が済んでいないと、資格喪失の手続きが止まることがあります。返したかどうかを最初に確かめてください。
一方、書類はこちらが受け取る側です。離職票と源泉徴収票は、手続きに要ります。連絡を完全に断つと、こちらが困ることがあります。


源泉徴収票には期限があります
所得税法により、退職者への源泉徴収票は退職後1か月以内に交付することになっています。
年末調整や確定申告で使うものです。届いていない場合は、そこだけは連絡する理由になります。
離職票のほうは、会社がハローワークへ手続きをしてはじめて発行されます。こちらは所得税法のような日数の定めではなく、雇用保険の手続きの流れで決まります。
どちらも、辞めてから1か月たっても届かないなら動いてください。源泉徴収票は会社へ、離職票はハローワークへ。窓口が違います。

連絡を止める伝え方
一度で済ませる形です。

曖昧に断ると、また来ます。用件を分けて、一度に伝えるのが早いです。
退職しておりますので、業務に関するお問い合わせにはお答えできません。
貸与品は〇月〇日に返送済みです(追跡番号〇〇〇)。
離職票と源泉徴収票がまだ届いておりませんので、そちらだけご送付をお願いします。
今後のご連絡は、書面でお願いします。
3つを一度に言っています。断る、こちらの義務は果たした、こちらが受け取るものだけ求める。
そして「書面で」と伝えるのが効きます。電話は記録が残らず、その場で判断を迫られます。書面にすると、相手も手間がかかるので減ります。
会社の側にも、聞きたいことが業務上どうしても残っている場合はあります。その場合でも、書面なら要点だけが来ます。断るかどうかを、落ち着いて判断できます。


それでも続く場合
線を越えることがあります。

まず記録です。着信の日時、相手、内容。スマートフォンの着信履歴は残りますが、内容は残りません。かかってきた日付と要件をメモにしてください。
回数がまとまってから相談すると、話が早く進みます。1回や2回では「連絡があった」だけで終わりますが、日付が並ぶと、頻度そのものが材料になります。
深夜や早朝の連絡、家族への連絡、勤務先への連絡が始まった場合は、段階が変わります。その時点で、業務の話ではなくなっています。
止まらない場合の相談先は、内容によって分かれます。
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 未払い賃金や労働条件に関すること | 労働基準監督署 |
| 執拗な連絡、脅しに近いもの | 警察、弁護士 |
| 退職の手続きが進まない | 労働組合が運営する退職代行、弁護士 |


最初から間に入ってもらう場合
先に手を打つ選択もあります。

退職代行を使うと、連絡の窓口がそちらになります。ただし扱える範囲は運営元で変わります。
| 運営元 | できること |
|---|---|
| 民間企業 | 辞めると伝えるところまで |
| 労働組合 | 労働組合法6条により団体交渉ができる。退職日や有給の交渉まで |
| 弁護士 | 未払い賃金の請求や訴訟まで |
「連絡してこないでほしい」と伝えるだけなら、民間企業でも足ります。ただし相手が応じず、条件のやり取りになるなら交渉です。そこは労働組合か弁護士になります。
辞めたあとに頼むこともできます。退職の手続きが済んでいても、貸与品の返却や書類の受け渡しが残っているなら、そこから入ってもらう形です。


よくある質問
- 退職後の問い合わせに答える義務はありますか
-
ありません。労働契約法6条は、労働契約が、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて合意することによって成立すると定めています。
労働と賃金が対になっているため、契約が終わって賃金が支払われなくなれば、労働する義務もなくなります。引き継ぎの質問に答えることも資料の場所を教えることも労働なので、無償で応じる義務は残りません。
- 貸与品はどうすればいいですか
-
返す必要があります。借りているものなので、労働契約が終わったこととは別の話です。制服、パソコン、鍵、社員証、名刺、業務用の携帯などが対象になります。
まとめて送る場合は、送った日と中身を控えて、追跡できる方法を選んでください。返したことを示せる状態にしておくと、あとで「返っていない」と言われたときに困りません。
- 離職票や源泉徴収票が届きません
-
そこは連絡する理由になります。離職票は失業保険の手続きに、源泉徴収票は年末調整や確定申告に必要です。
源泉徴収票については、所得税法により退職後1か月以内に交付することになっています。離職票が届かない場合は、ハローワークで相談すれば会社を通さずに進める方法があります。連絡を完全に断つと、こちらが困る場面があるので、この2つだけは求めてください。
- どう断ればいいですか
-
用件を分けて、一度に伝えるのが早いです。業務の問い合わせには答えられないこと、貸与品は返却済みであること、こちらが受け取る書類がまだ届いていないこと。この3つをまとめて書きます。
あわせて「今後の連絡は書面で」と伝えてください。電話は記録が残らず、その場で判断を迫られます。書面にすると相手も手間がかかるため、回数が減ります。
- しつこく電話が来ます
-
記録から始めてください。着信の日時、相手、内容をメモにします。スマートフォンの着信履歴には日時が残りますが、話した内容は残りません。
深夜や早朝の連絡、家族や次の勤務先への連絡が始まった場合は、業務の話ではなくなっています。内容によって相談先が変わり、労働条件に関することなら労働基準監督署、執拗な連絡や脅しに近いものなら警察や弁護士になります。
- 「損害が出た」と言われました
-
まず、実際に損害が生じたのかを確認してください。退職したこと自体を理由に請求することは、通常認められません。
労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしてはならないとしています。金額があらかじめ決まっている形なら、そこが問題になります。実際の損害についての請求は別の話なので、内容を書面で示すよう求めてください。
- 退職代行を使えば連絡は止まりますか
-
窓口が代行に移ります。ただし扱える範囲は運営元で変わります。民間企業が運営している場合は伝えるところまでで、交渉はできません。
労働組合が運営している場合は、労働組合法6条により団体交渉ができるので、退職日や有給の交渉まで扱えます。弁護士なら未払い賃金の請求や訴訟まで進められます。「連絡しないでほしい」と伝えるだけなら民間企業でも足りますが、相手が応じず条件のやり取りになるなら交渉になります。
- 辞めたあとからでも頼めますか
-
頼めます。退職の手続きが済んでいても、貸与品の返却や書類の受け渡しが残っていれば、そこから入ってもらう形になります。
依頼するときは、いまどこまで済んでいるかを整理しておいてください。退職日、最終出社日、貸与品を返したかどうか、受け取っていない書類。この4つが分かれば、話が早く進みます。会社とのやり取りの記録があれば、それも合わせて渡してください。
まとめ:分けて、一度で伝えます
整理します。
- 契約が終われば、労働する義務もない(労契法6条)。問い合わせに答える義務もない
- ただし貸与品の返却は別。借りているものなので返す
- 離職票と源泉徴収票は受け取る側。源泉徴収票は退職後1か月以内の交付
- 断るときは、3つを一度に。断る/返却済み/こちらが受け取るものだけ求める
- 「今後は書面で」と伝えると減る
着信の日時と内容を、メモにしてください。続いた場合に、それが材料になります。


