会社を辞めて、その年のうちに次へ入らなかった場合。
12月が来ても、誰も年末調整をしてくれません。
この記事でわかること
- 年の途中で辞めた人は、原則として年末調整の対象外だということ
- 放っておくと、多めに引かれた所得税がそのままになること
- 源泉徴収票は、退職から1か月以内に交付する決まりがあること
- 5年前までさかのぼって申告できること
結論:自分で確定申告すると、戻ってくることが多いです
先に結論を書きます。
| どうなるか | |
|---|---|
| 年内に次の会社へ入った | 新しい会社が年末調整をします。前職の源泉徴収票を出すだけ |
| 年をまたいで無職のまま | 年末調整はされません。自分で確定申告します |
| 何もしなかった | 多めに引かれた所得税が、戻らないまま残ります |
毎月の給与から引かれている所得税は、仮の金額です。 1年分の給与が続く前提で計算されているので、途中で辞めると引かれすぎの状態になります。
私が辞めたときに面倒だと感じたのは、保険の切り替えと、社内預金や持株会の手続きでした。税金の話は、そのあとから来ます。 手続きが一段落したころに気づくので、後回しになりやすい部分です。
年末調整はその差額を精算する手続きです。それを受けられないなら、自分でやるしかありません。
辞める日が決まっていないと、この計算も始められません。まず退職日を確定させてください。

年の途中で辞めても年末調整される人が、5つだけいます
例外があります。国税庁が挙げているのは次の5つです。
| 該当する人 | 但し書き |
|---|---|
| 海外転勤などで非居住者になった | |
| 死亡によって退職した | |
| 心身の障害で退職した | 退職後に再就職の見込みがある場合を除く |
| 12月に支給されるべき給与を受け取った後に退職した | |
| パートなどで、その年の給与が123万円以下 | 他の勤務先から給与を受け取る見込みがある場合を除く |
出典は年末調整の対象となる人(国税庁)です。
この5つ以外は、全部「対象外」です。 一般的な自己都合退職は、まず当てはまりません。
なお、123万円という数字は覚えておいてください。以前は103万円でした。 令和7年度の改正で上がっています。古い記事を見て判断すると間違えます。

まず源泉徴収票を手に入れてください
確定申告には源泉徴収票が要ります。これが無いと何も始まりません。

そして、会社には交付の期限があります。
その年において支払の確定した給与等について、(中略)その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)に、(中略)一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない
— 所得税法226条1項
退職から1か月以内です。 年明けの1月31日ではありません。

届かないときは、催促できます
1か月を過ぎても来ないなら、まず会社の担当部署へ連絡してください。「所得税法226条で退職から1か月以内と決まっている」と伝えれば、たいていは動きます。
それでも出てこない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます。 税務署から会社へ行政指導が入ります。用紙は税務署の窓口か国税庁のサイトにあります。
会社とのやり取りそのものが止まっているなら、そこは外に出せます。離職票や源泉徴収票の請求まで含めて頼めるのは、労働組合型と弁護士型です。

なぜ戻ってくるのか
引かれすぎになる理由は単純です。
毎月の源泉徴収は、「この給与が12か月続いたら」という前提で計算されています。8月に辞めれば、実際の年収は見込みの3分の2ほどです。それなのに、12か月分の想定で引かれています。
さらに、年末調整でしか反映されない控除があります。
| 控除 | 内容 |
|---|---|
| 社会保険料控除 | 辞めた後に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料も入ります |
| 生命保険料控除 | 保険会社から届く証明書が要ります |
| 地震保険料控除 | 同上 |
| 扶養控除・配偶者控除 | 年末時点の状況で判定します |
| 医療費控除 | 年10万円を超えた分(もともと確定申告でしか使えません) |
辞めた後に払った国民健康保険と国民年金は、忘れられやすい部分です。 退職後の数か月分でも、まとまった金額になります。領収書や納付証明書を取っておいてください。
私がいた現場でも、辞めた後の手続きを誰かが教えてくれることはありませんでした。会社は自社に関係するところまでしか案内しません。 その先は自分で調べるしかない、という前提で動いたほうが早いです。

いつ、どこで、何を持っていくか
確定申告の期間は2月16日から3月15日までです。
ただし、戻ってくる申告(還付申告)は違います。
| 期間 | |
|---|---|
| 納める申告 | 翌年2月16日〜3月15日 |
| 戻る申告(還付申告) | 翌年1月1日から5年間 |
5年さかのぼれます。 過去に辞めて何もしていない年があるなら、いまからでも間に合います。3月15日を過ぎたから終わり、ではありません。
持っていくものはこれだけです。
・源泉徴収票(辞めた会社のもの。年内に転職していれば全社分)
・国民健康保険料と国民年金保険料を払った証明(納付額のわかるもの)
・生命保険料・地震保険料の控除証明書
・マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
・還付を受ける口座の番号
税務署へ行かなくても、スマホで完結します。 国税庁の確定申告書等作成コーナーで作って、e-Taxで送れます。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
年内に転職した場合は、やることが変わります
同じ年のうちに次の会社へ入ったなら、自分では何もしません。
前の会社の源泉徴収票を、新しい会社へ出すだけです。新しい会社が2社分をまとめて年末調整します。
ただし条件があります。
| 提出の期限 | 新しい会社の年末調整までに(11月から12月上旬が多い) |
| 間に合わなかったら | 自分で確定申告します。手間は増えますが、結果は同じです |
| 前の会社が出してくれない | 上に書いた不交付の届出書を使います |
転職先が決まっている人ほど、源泉徴収票を後回しにしがちです。 辞めるときに「いつ届きますか」と一言聞いておくだけで、11月に慌てずに済みます。
次を探している段階なら、入社日から逆算して動くと、この手続きが1回で終わります。

辞めた後に入るお金の、税金の扱い
まとめて整理しておきます。扱いが3つに分かれます。
| お金 | 税金の扱い |
|---|---|
| 失業保険(基本手当) | 非課税。確定申告に書きません |
| 退職金 | 退職所得。他の所得と分けて計算します |
| 給与(辞めるまでの分) | 給与所得。ここが確定申告の対象です |
失業保険が非課税なのは、雇用保険法12条に書かれています。
租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない
受け取った額を申告書に書く必要はありません。 ここを勘違いして「収入が増えたから税金も増える」と思っている人がいますが、増えません。
退職金は、「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ出していれば、その時点で精算が終わっています。 出していないと20.42%が引かれたままになるので、確定申告で取り戻します。



辞める前にやっておくと、あとが楽です
順番があります。
1. 退職日を確定させる(ここが決まらないと何も始まらない)
2. 源泉徴収票がいつ届くかを、辞めるときに聞いておく
3. 辞めた後に払った国保・年金の納付書を捨てずに取っておく
4. 生命保険の控除証明書は10月ごろ届く。無くさない
1番がいちばん大事です。 退職日が決まらないと、源泉徴収票の期限も、健康保険の切り替えも、住民税の扱いも、全部止まります。
日程の話し合いで止まっているなら、そこは外に出せます。退職日と有給をまとめて話せるのは、労働組合型と弁護士型だけです。
言い出せないだけで止まっているなら、その工程だけ切り出せます。退職代行辞スルは24時間受付で、料金は正社員が税込22,000円、パート・アルバイトが18,000円です(2026年8月時点)。



よくある質問
年の途中で辞めた場合の年末調整について、よく出る疑問に答えます。
- 確定申告をしないと、どうなりますか?
-
多めに引かれた所得税が戻らないまま残ります。罰則はありません。納めすぎているだけなので、しなくても追徴されることはないからです。ただし放置すると損をします。金額は人によりますが、年の途中で辞めた場合は数万円になることも珍しくありません。還付申告は翌年1月1日から5年間できるので、思い出したときにやれば間に合います。
- いくらくらい戻ってきますか?
-
辞めた時期と、その後の収入で変わります。目安として、年の前半で辞めて年内は無職だった場合ほど、引かれすぎの幅が大きくなります。毎月の源泉徴収が「この給与が12か月続く」前提で計算されているからです。加えて、辞めた後に自分で払った国民健康保険料と国民年金保険料は全額が社会保険料控除になります。ここを入れ忘れると、戻る額がその分だけ減ります。
- 源泉徴収票が届きません
-
所得税法226条1項で、年の途中に退職した人には退職の日から1か月以内に交付すると決まっています。まず会社の担当部署へ連絡してください。それでも出てこない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます。税務署から会社へ行政指導が入ります。用紙は税務署の窓口か国税庁のサイトにあります。
- 失業保険をもらっていると、確定申告に影響しますか?
-
しません。雇用保険法12条で、失業等給付には税金をかけられないと決まっているからです。受け取った額を申告書に書く必要もありません。扶養に入るかどうかの判定でも、税法上の扶養では収入に数えません。ただし健康保険の被扶養者の判定では収入として見られることがあるので、そこは加入している健康保険組合に確認してください。
- 退職金にも確定申告が要りますか?
-
「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ出していれば要りません。その時点で正しい税額が計算されて精算が終わっているからです。出していない場合は一律20.42%が引かれているので、確定申告で取り戻すことになります。退職金は他の所得と分けて計算され、勤続年数に応じた退職所得控除があるため、実際の税額はかなり低くなります。
- 年内に転職した場合はどうすればいいですか?
-
前の会社の源泉徴収票を、新しい会社へ出してください。新しい会社が2社分をまとめて年末調整します。自分で確定申告する必要はありません。ただし提出の期限があり、多くの会社は11月から12月上旬に年末調整の書類を集めます。間に合わなかった場合は自分で確定申告することになりますが、戻る金額は変わりません。
- 医療費控除や住宅ローン控除も一緒にできますか?
-
できます。むしろ医療費控除はもともと年末調整では扱えず、確定申告でしか使えません。年間10万円(所得200万円未満の場合は所得の5%)を超えた分が対象です。住宅ローン控除は1年目が確定申告、2年目以降は年末調整で処理できますが、年末調整を受けられない年は確定申告で行います。まとめて1回で済ませられます。
- 5年前の分でも本当に間に合いますか?
-
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます。たとえば2021年に退職して何もしていないなら、2022年1月1日から5年なので2026年12月31日まで有効です。必要なのは当時の源泉徴収票です。無くしている場合は、当時の勤務先に再発行を頼めます。会社が保存している義務があるので、廃業していない限り出してもらえます。
まとめ:放っておくと、戻るはずのお金が残ります
要点を整理します。
- 年の途中で辞めた人は、原則として年末調整の対象外
- 例外は5つだけ。12月分の給与を受け取った後の退職と、パートで年123万円以下など
- 源泉徴収票は退職から1か月以内に交付する決まり(所得税法226条)
- 毎月の所得税は12か月続く前提で引かれているので、途中で辞めると引かれすぎになる
- 辞めた後に払った国民健康保険料と国民年金保険料も控除に入る
- 戻る申告は翌年1月1日から5年間できる
- 失業保険は非課税(雇用保険法12条)
罰則はありません。だから誰も教えてくれません。 気づいた人だけが取り戻しています。


