辞めるときに、給料と退職金以外にも動かすものがあります。
そして、そのほとんどは自分から言わないと動きません。
この記事でわかること
- 自分から言わないと動かない3つと、黙っていても出る1つの違い
- 確定拠出年金だけは、放置すると実際に減ること
- 持株会と社内預金が「申し出」「請求」で動く仕組みであること
- 退職金の支払時期がどこに書いてあるか
- 辞める前に、誰に何を聞けばいいか
結論:教えてくれる会社と、教えてくれない会社があります
私がいた会社は、辞めるときに全部教えてくれました。だから何も問題は起きませんでした。
ただ、それはたまたまそういう会社だっただけです。

辞めるときに動かすお金は4つあります。そのうち3つは、自分から言わないと動きません。
| 動き方 | |
|---|---|
| 社内預金 | 請求しないと返ってこない |
| 従業員持株会 | 申し出ないと端数が処理されない |
| 確定拠出年金(企業型DC) | 手続きしないと自動移換される |
| 退職金 | 制度があれば、黙っていても計算して支払われる |
上の3つは、会社が黙っていてもルール上は問題になりません。教えてくれない会社に当たった場合、誰も何も言わないまま止まります。
退職金だけは性質が違います。会社が計算して払うものなので、放っておいても出ます。ただし、いくらでいつ払われるかは自分で確認しないと分かりません。

動かないとどうなるかは、4つで違います
止まるだけのものと、放置すると減るものがあります。
| 放置するとどうなるか | 期限 | |
|---|---|---|
| 社内預金 | 預けたまま止まる | なし(請求すればいつでも) |
| 持株会 | 単元未満の分が処理されない | 規約による |
| 確定拠出年金 | 手数料が引かれ、運用が止まる | 6ヶ月 |
| 退職金 | 出るが、金額と時期が合っているか分からない | 就業規則の支払時期による |
期限がはっきりあるのはDCだけです。先にそこから書きます。

確定拠出年金だけは、放置すると減ります
企業型DCに入っていた人は、辞めてから6ヶ月が期限です。

6ヶ月で「自動移換」されます
6ヶ月以内にiDeCo・転職先の企業型DC・確定給付企業年金などへ移す手続きをしないと、国民年金基金連合会へ自動的に移されます。これを自動移換といいます。
自動的に移るなら安全そうに見えますが、そうではありません。
手数料が引かれます
国民年金基金連合会の資料に、金額がそのまま書かれています。
| かかるもの | 金額 |
|---|---|
| 自動移換されるとき(1回) | 4,348円 |
| そのあと毎月 | 98円 |
| 後で他の制度へ移すとき(1回) | 550円 |
入口で4,348円、そのあと毎月98円が資産から引かれ続けます。(2026年8月時点。管理手数料は令和8年4月に改定されたばかりです)
管理手数料は、自動移換された月の4ヶ月後から発生します。年1回まとめて、4月に資産から引かれます。
辞める前に次を決めておけば、移換先も同時に決まります。
いちばん痛いのは、運用が止まることです
手数料そのものより、こちらのほうが効きます。
自動移換された資産は、運用されません。そのまま置かれるだけです。厚生労働省の部会でも、運用されないまま手数料だけが引かれる点が問題として取り上げられています。
引かれ続けるのに、増えません。この状態が、気づくまで続きます。


持株会は「申し出」がないと処理されません
持株会に入っていた人は、退会の手続きが要ります。

日本証券業協会の持株制度に関するガイドラインに、退会処理の原則が書かれています。
売買単位相当に満たない持分については、退会者の申し出により、次のいずれかを選択できるものとする。
イ 時価で売却し、現金で精算する方法
ロ (臨時に拠出して、売買単位まで買い足して受け取る方法)
ハ (自分の株式累積投資口座に振り替える方法)
「申し出により」がすべてです
売買単位(多くは100株)に足りている分は、自分名義に書き換えられます。問題は、単元に満たない端数のほうです。
この端数は「退会者の申し出により」選ぶ、と決まっています。申し出をしなければ、選ばれないまま残ります。会社が勝手に現金にしてくれるわけではありません。
「持株会 退職 放置」で調べている人がぶつかっているのは、ここです。

期日と方法は、会社の規約に書いてあります
ガイドラインが決めているのは原則だけです。実際の期日も、選べる方法も、各社の持株会規約によります。

在職中なら、規約は社内で見られます。辞めてからだと、まず誰に聞くかを探すところから始まります。

社内預金は「請求すれば、遅滞なく」返ってきます
社内預金は、条文がはっきりしています。

労働基準法18条5項です。
使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。
請求しないと動きません。ただし請求すれば止められません
「労働者がその返還を請求したときは」と書かれています。請求が起点です。黙っていれば、預けたままになります。
裏を返せば、請求さえすれば、会社は遅滞なく返さなければなりません。渋られたら、この条文を示せます。
なお社内預金は、預金として管理する場合は利子をつけなければならないと同じ18条に定められています。強制的に貯めさせることは禁止されていて、労使協定と行政官庁への届出も必要です。
退職金は、就業規則に支払時期まで書いてあります
退職金は、法律で必ず払うと決まっているものではありません。
制度がある会社だけの話です
厚生労働省の説明では、退職金は就業規則の相対的必要記載事項とされています。「定めをした場合には記載しなければならない」もの、という位置づけです。
つまり制度がない会社もあります。
定めがあるなら、3つが書かれています
制度がある場合、就業規則には次の3つが必ず書かれています。
- 適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定、計算及び支払の方法
- 退職手当の支払の時期
支払の時期まで書いてあります。だから「いつ振り込まれるか分からない」という状態は、規程を見れば解消できます。厚労省のモデル就業規則も「支給事由の生じた日から◯か月以内に支払う」という形になっています。
在職中に一度見ておいてください。辞めてからだと、就業規則を見せてもらうところから始まります。
在職中に確かめておくことは、他にもあります(退職前にやることリスト)。


辞める前に、1回で聞いてしまってください
4つとも、在職中なら一度に確認できます。

聞く相手は総務か人事です。聞き方は、これで足ります。
- 退職金の規程はどこで見られますか
- 社内預金は、いつ返還されますか
- 持株会の退会手続きと、端数の扱いはどうなりますか
- 企業型DCの移換手続きの案内はもらえますか
4つまとめて聞けば、1回で済みます。教えてくれる会社なら、ここで全部片づきます。

答えが返ってこない場合
「あとで」と言われたまま進まないなら、DCだけは自分で動いてください。期限があるのはDCだけです。
移換先は、転職先に企業型DCがあればそこへ、なければiDeCoへ移せます。6ヶ月を過ぎると、自動移換されて手数料が発生します。
よくある質問
- 持株会の手続きをせずに辞めてしまいました。どうなりますか?
-
売買単位に足りている分は自分名義に書き換えられますが、単元に満たない端数は「退会者の申し出により」処理する決まりなので、申し出がないまま残っている可能性があります。会社の持株会規約に、退会時の期日と端数の扱いが定められているはずです。まず持株会の事務局か、委託先の証券会社に連絡してください。手続き自体は辞めたあとでもできますが、誰に聞くかを探す手間が増えます。
- 確定拠出年金を6ヶ月放置してしまいました。もう戻せませんか?
-
戻せます。自動移換された資産は、あとからiDeCoや転職先の企業型DCへ移すことができます。ただし移すときに移換手数料がかかり、自動移換されたときの4,348円と、それまでの毎月98円は戻ってきません。何より自動移換されている間は運用されないので、その期間の運用機会が失われます。気づいた時点で早く動いたほうが損は小さくなります。金額は2026年8月時点のものです。
- 社内預金を返してもらえません
-
労働基準法18条5項に「労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない」と定められています。まず返還を請求してください。それでも応じない場合は、労働基準監督署に相談できます。社内預金は労使協定を結んで行政官庁に届け出たうえで管理されているものなので、監督署が把握している制度です。請求した日付と、誰に伝えたかは記録に残しておいてください。
- 退職金が振り込まれません。いつまで待てばいいですか?
-
就業規則の退職金規程に支払時期が書かれています。まずそこを確認してください。退職金の定めがある場合、支払の時期は就業規則に記載しなければならない事項とされているので、必ず書いてあります。規定された時期を過ぎても振り込まれないなら、会社に確認してください。なお退職金制度がない会社もあり、その場合は法律上支払う義務がありません。
- 退職金の規程を見せてもらえません
-
就業規則は、労働者がいつでも見られる状態にしておくことが会社に義務づけられています。見せてもらえない場合は、その旨を労働基準監督署に相談できます。ただ在職中に自分で確認しておくほうが、はるかに早く済みます。辞めると決めたら、退職を伝える前に一度見ておいてください。
- 会社が案内してくれるものではないのですか?
-
案内してくれる会社もあります。私がいた会社は全部教えてくれたので、何も問題は起きませんでした。ただ社内預金・持株会・確定拠出年金の3つは、制度として「自分から請求する」「申し出る」ことが前提になっています。会社が黙っていてもルール違反にはなりません。退職金は会社が計算して払うものなので黙っていても出ますが、金額と時期は自分で確認しないと合っているか分かりません。
- 転職先が決まっていなくても手続きは進められますか?
-
進められます。社内預金の返還請求と持株会の退会は、次が決まっているかどうかに関係ありません。確定拠出年金だけは移換先が必要ですが、転職先が決まっていなければiDeCoへ移せます。むしろ次が決まっていないほうが、6ヶ月の期限を忘れやすいので注意が必要です。
まとめ:会社の親切に頼らないでください
私がいた会社は、辞めるときに全部教えてくれました。だから、この4つで困ったことはありません。

ただ、それは会社次第です。4つのうち3つは、自分から言わないと動きません。
- 社内預金 … 請求すれば遅滞なく返さなければならない(労基法18条5項)
- 持株会 … 単元未満は「退会者の申し出により」処理
- 確定拠出年金 … 6ヶ月で自動移換。4,348円+毎月98円が引かれ、運用も止まる
退職金は、制度があれば黙っていても支払われます。ただしいくらでいつ払われるかは、就業規則を見ないと分かりません。金額が合っているかどうかも、規程がなければ判断できません。
期限があるのはDCだけです。他の3つは遅れても消えませんが、DCは待っているあいだに減ります。
在職中なら、総務に4つまとめて聞けば1回で済みます。辞めてからだと、誰に聞くかを探すところから始まります。

