同じ仕事をしているのに、手当がつきません。賞与も出ません。
その差の理由を、会社は説明しなければなりません。
この記事でわかること
- 差が「不合理」かどうかの見方
- 説明を求められる条文
- 説明を求めても不利益に扱われないこと
- 聞くときの具体的な言い方
結論:不合理な差を設けてはいけません
条文から入ります。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条です。長いので、区切って読みます。
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、(中略)不合理と認められる相違を設けてはならない。
対象になるのは短時間労働者と有期雇用労働者です。パート、アルバイト、契約社員が当たります。比べる相手は「通常の労働者」、つまり正社員です。
「それぞれについて」と書かれています。待遇をひとまとめにして比べるのではなく、基本給は基本給、賞与は賞与、手当は手当ごとに見るということです。


何を考慮して判断するのか
同じ8条に書かれています。
| # | 考慮する事情 |
|---|---|
| ① | 職務の内容(業務の内容と、それに伴う責任の程度) |
| ② | 職務の内容および配置の変更の範囲 |
| ③ | その他の事情 |
そして条文は「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して」としています。
つまり手当ごとに、その手当が何のために払われているかを見るということです。通勤手当なら通勤の費用を補うためのもので、正社員かどうかで通勤の費用が変わるわけではありません。

「同視すべき」場合は、差別が禁止されます
8条とは別に、9条があります。

事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(中略)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(中略)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
条件が2つあります。職務の内容が正社員と同一であること。そして職務の内容と配置の変更の範囲が、雇用関係が終わるまでの全期間で同一の範囲と見込まれることです。
| 条文 | 何を求めているか |
|---|---|
| 8条 | 差はあってよいが、不合理であってはならない |
| 9条 | 条件を満たす場合、差別的取扱いそのものが禁止 |
9条に当たるかどうかは、転勤や異動の範囲で分かれます。正社員だけ転勤があるなら、9条の条件は満たしません。その場合は8条で判断されます。


求めれば、説明しなければなりません
ここが今日から使えるところです。

同じ法律の14条2項です。
事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由(中略)について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
求めがあったときは説明する、と義務の形で書かれています。説明を求めるのは、権利を主張することではなく、条文に沿った手続きです。
説明してもらえるのは、待遇の相違の内容と、その理由の2つです。「正社員だから」では理由になりません。何を考慮してその差にしたのかを示す必要があります。


求めたことを理由に、不利益に扱うことは禁じられています
14条3項です。
事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
聞いたことを理由にシフトを減らす、契約を更新しない、といった扱いは禁じられています。
聞きにくいと感じる人が多い部分ですが、条文がそこまで書いています。求めたこと自体で不利になることは、想定されていません。

聞くときの言い方
具体的に書きます。

漠然と「なぜ違うのか」と聞くと、話が広がって終わります。待遇をひとつに絞ってください。8条が「それぞれについて」としているので、条文の建て付けにも合います。
通勤手当について、正社員との違いの内容と理由を説明していただけますか。
聞いたあとにやることも決めておきます。日付、聞いた相手、回答の内容をメモに残してください。口頭での回答でも、書き留めれば記録になります。
説明の内容に納得できない場合は、都道府県労働局に相談できます。紛争解決の援助や調停の制度が用意されています。


待遇差が変わらないなら
正直に書きます。

説明を求めても、差が縮まるとは限りません。会社が合理的な理由を示せば、その差は不合理ではないという結論になります。
そのときの選択肢は3つです。無期転換を申し込む、正社員登用に応募する、条件の合う職場へ移る。
無期転換は、通算5年を超えていれば労働契約法18条により申し込めます。ただし無期になっても、待遇が正社員と同じになるとは限りません。契約期間が無期になるだけです。
辞める場合、自分から言い出せないなら、退職日や有給の交渉まで扱えるのは労働組合が運営している場合と弁護士が対応する場合だけになります。


よくある質問
- 正社員と待遇が違うのは違法ですか
-
差があること自体は違法ではありません。パートタイム・有期雇用労働法8条は、不合理と認められる相違を設けてはならないとしています。差を禁じているのではなく、不合理な差を禁じています。
判断するときに考慮するのは、職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲、その他の事情です。そのうえで条文は「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して」としています。手当ごとに、何のための手当かを見ることになります。
- どの待遇が対象になりますか
-
基本給、賞与、その他の待遇のそれぞれです。8条が「それぞれについて」としているため、全体をまとめて比べるのではなく、項目ごとに見ます。
通勤手当、食事手当、皆勤手当、賞与、退職金、慶弔休暇なども対象に入ります。たとえば通勤手当は通勤の費用を補うためのものなので、雇用形態で通勤の費用が変わるわけではない、という見方になります。自分の明細と正社員の制度を、項目ごとに並べてください。
- 会社に説明を求められますか
-
求められます。同じ法律の14条2項が、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との間の待遇の相違の内容および理由を説明しなければならないと定めています。
説明してもらえるのは、相違の内容と、その理由の2つです。「正社員だから」では理由になりません。何を考慮してその差にしたのかを示す必要があります。漠然と聞くより、通勤手当なら通勤手当と、待遇をひとつに絞って聞くほうが答えが返ってきます。
- 聞いたら不利益に扱われませんか
-
禁じられています。14条3項が、説明を求めたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めています。
シフトを減らす、契約を更新しない、評価を下げるといった扱いが、求めたことを理由とするものであれば該当します。求めた日付と、そのあとに起きたことを記録に残しておいてください。時期の対応が分かる形にしておくと、後で使えます。
- 9条の「同視すべき」とは何ですか
-
条件が2つあります。職務の内容が通常の労働者と同一であること。そして雇用関係が終了するまでの全期間において、職務の内容および配置が、通常の労働者の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれることです。
この2つを満たすと、短時間・有期雇用労働者であることを理由とする差別的取扱いが禁止されます。8条が「不合理な差の禁止」なのに対し、9条は「差別の禁止」です。正社員だけに転勤があるような場合は9条の条件を満たさないので、8条で判断されます。
- 説明に納得できません
-
都道府県労働局に相談できます。紛争解決の援助や調停の制度が用意されていて、費用はかかりません。
相談する前に、説明を求めた日付、聞いた相手、回答の内容をまとめておいてください。あわせて、自分の給与明細と、就業規則のうち正社員の待遇が書かれた部分を用意すると話が早くなります。就業規則は在職中でないと見られません。
- 無期転換すれば待遇も同じになりますか
-
なるとは限りません。労働契約法18条による無期転換は、契約期間が無期になる制度です。転換後の労働条件は、別段の定めがない限り、転換前と同一の労働条件になります。
つまり無期になっても、賃金や手当が正社員と同じになるわけではありません。ただし有期であることを理由とした差の主張はできなくなるので、そのあとは短時間労働者としての比較になります。週の所定労働時間が正社員と同じなら、法律の対象からも外れます。
- 派遣社員でも同じですか
-
根拠になる法律が変わります。パートタイム・有期雇用労働法の対象は、事業主に雇用される短時間労働者と有期雇用労働者です。派遣労働者については、労働者派遣法に別の規定が置かれています。
派遣の場合は、派遣先の労働者との均等・均衡を図る方式と、労使協定による方式のどちらかが取られます。自分の派遣元がどちらの方式かで、比べる相手が変わります。まず派遣元に確認してください。
まとめ:待遇はひとつずつ見ます
整理します。
- 差そのものではなく、不合理な差が禁じられている(パート有期法8条)
- 判断は待遇ごと。基本給、賞与、手当を項目別に見る
- 考慮するのは職務の内容/変更の範囲/その他の事情
- 条件を満たせば、差別的取扱いそのものが禁止(9条)
- 求めれば説明する義務がある(14条2項)。求めたことでの不利益は禁止(14条3項)
まず、待遇をひとつ選んで聞いてください。通勤手当でも、賞与でも構いません。全部まとめて聞くより、答えが返ってきます。


