会社を辞めると、年金の扱いが変わります。
厚生年金から国民年金へ。手続きをするのは自分です。
この記事でわかること
- 切り替えの期限は、退職の翌日から14日以内であること
- 保険料は月17,920円。会社が半分出していた分がなくなること
- 失業による免除は、前年の所得を見ないこと
- 免除と猶予で、将来の年金額が変わること
結論:14日以内に役所へ。払えないなら免除を申請します
先に順番を出します。
| いつまでに | どこへ | |
|---|---|---|
| 国民年金への切替 | 退職の翌日から14日以内 | 市区町村の年金の窓口 |
| 保険料の免除・猶予の申請 | 切替と同時でよい | 同じ窓口 |
保険料は月17,920円(令和8年度)です。会社員のときは厚生年金で、会社が半分を負担していました。 その半分がなくなります。
出典は国民年金保険料(日本年金機構)です。
そして、この14日は退職日が決まらないと数え始められません。


会社が半分払っていた分が、まるごと乗ります
数字で見ると分かりやすくなります。
| 会社員のとき | 辞めた後 | |
|---|---|---|
| 制度 | 厚生年金 | 国民年金 |
| 保険料 | 給与に応じて。会社と折半 | 月17,920円(定額) |
| 誰が払うか | 給与から天引き | 自分で納付書か口座振替 |
| 手続き | 会社がやる | 自分でやる |
折半がなくなるのが効きます。 給与明細の厚生年金の欄に書かれていた額は、実際に払われていた額の半分です。もう半分は会社が出していました。
私が退職の手続きで面倒だと感じたのも、この種類のものでした。保険と年金の切り替えは、会社が全部やってくれていたぶん、自分でやると手数が見えます。 引き継ぎより時間を取られたのはこちらです。
そのうえで国民年金は定額なので、収入が下がっても保険料は下がりません。 ここが健康保険と違うところです。

失業を理由にした免除は、前年の所得を見ません
ここがこの記事でいちばん大事なところです。
国民年金の保険料免除は、通常は前年の所得で審査されます。 年の途中で辞めた人は、前年は普通に働いていたので、所得だけ見ると通りません。
ただし失業には特例があります。
失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例
出典は国民年金保険料の失業等による特例免除(日本年金機構)です。
去年いくら稼いでいたかは関係ありません。 失業した事実を示せば、そこは審査から外れます。

持っていくのは、この2つだけです
・離職票のコピー、または雇用保険受給資格者証のコピー
・年金手帳か基礎年金番号のわかるもの
離職票が必要になります。 届くまで待つことになりますが、切替の手続きそのものは先にできます。
会社が離職票を出さないと、ここで止まります。離職票は会社を通さずに請求できます。

世帯主と配偶者の所得は見られます
ひとつ注意があります。本人の所得は見ませんが、世帯主と配偶者の所得は審査の対象です。
| 誰の所得 | 失業特例での扱い |
|---|---|
| 本人 | 見ません(失業の事実で足りる) |
| 世帯主 | 見ます |
| 配偶者 | 見ます |
実家に戻った人は、世帯主である親の所得で判定されます。 ここで通らないことがあります。
その場合でも、納付猶予という別の制度があります。50歳未満なら本人と配偶者の所得だけで判定されるので、世帯主の所得は外れます。

免除と猶予は、将来の年金額が違います
同じ「払わなくていい」でも、あとで効いてくるものが変わります。

| 払わなくていい | 受給資格期間 | 将来の年金額 | |
|---|---|---|---|
| 全額免除 | はい | 入る | 半分は反映される |
| 4分の3免除など | 一部 | 入る | 割合に応じて反映 |
| 納付猶予 | はい | 入る | 反映されません |
| 未納 | ー | 入らない | 反映されない |
免除と猶予の差がここです。
全額免除の期間は、保険料を全額納めた場合の2分の1として年金額に反映されます。国庫が半分を負担しているからです。
一方、納付猶予の期間は年金額に反映されません。 受給資格期間には入るので「年金がもらえなくなる」ことはありませんが、金額には乗りません。

いちばん避けたいのは未納です。 手続きをしないまま放置すると、受給資格期間にも入らず、年金額にも反映されません。
払えないなら、未納ではなく免除の申請をしてください。 同じ「払っていない」でも、扱いがまったく違います。
退職代行は運営元によって、できることが変わります。ここを間違えると、お金の話がまったく進みません。
| 運営元 | 退職の伝達 | 有給・未払い分の交渉 | 訴訟の代理 |
|---|---|---|---|
| 民間企業型 | できる | できない | できない |
| 労働組合型 | できる | できる | できない |
| 弁護士型 | できる | できる | できる |
民間企業が会社とお金の交渉をすると、弁護士法違反にあたる恐れがあります。これを非弁行為といいます。資格のない人が法律事務を行うことです。
手続きに行く時間がない人へ
平日の日中しか窓口が開いていないので、次が決まっている人ほど詰まります。
| 状況 | やり方 |
|---|---|
| 平日に行けない | 郵送で申請できます。 市区町村の窓口に送付先を確認してください |
| 引っ越しも重なる | 転入先の市区町村でまとめて手続きできます |
| 何から手をつけるか分からない | 健康保険(20日)→ 年金(14日)の順で期限が短いほうから |
健康保険の任意継続は20日、年金は14日です。 期限が短いのは年金のほうなので、迷ったらこちらを先に済ませてください。
あとから追納できます
免除や猶予を受けた期間は、10年以内なら後から納められます(追納)。
収入が戻ってから納めれば、年金額は満額に近づきます。ただし3年度目以降に追納すると加算金がつくので、早いほうが安く済みます。
2年1か月前までさかのぼれます
すでに何か月か放置している人へ。
免除の申請は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間が対象です。申請した時点から2年1か月前までさかのぼれます。
「もう遅い」と思って放置しているなら、まだ間に合う可能性があります。
私がいた現場でも、辞めた後の手続きを誰かが教えてくれることはありませんでした。会社は自社に関係するところまでしか案内しません。 年金は辞めた翌日から自分の話になるので、そこから先は誰も声をかけてくれません。
| 状態 | できること |
|---|---|
| 辞めてすぐ | 切替と同時に免除を申請 |
| 数か月放置した | さかのぼって申請できる |
| 2年以上放置した | その分は未納として確定します |


手続きの順番
まとめると、こうなります。
1. 退職日を確定させる(ここが決まらないと14日を数え始められない)
2. 退職の翌日から14日以内に、市区町村の年金の窓口へ
3. 同じ窓口で、免除か猶予の申請もする
4. 離職票が届いたら、コピーを提出する
5. 収入が戻ったら、10年以内に追納する
1番が全部の起点です。 退職日が決まらないと、14日も数えられませんし、離職票も出ません。
日程が決まらないまま止まっているなら、そこは外へ出せます。退職日と有給を一度に片付けられるのは、労働組合型と弁護士型だけです。



よくある質問
退職後の国民年金について、よく出る疑問に答えます。
- 14日を過ぎてしまいました。どうなりますか?
-
手続き自体はできます。14日という期限は届出の期限で、過ぎたから加入できなくなるわけではありません。ただし切り替えが遅れると、その間の保険料がまとめて請求されます。厚生年金の資格を失った日にさかのぼって国民年金の被保険者になるので、未納期間が発生している状態です。気づいた時点で市区町村の窓口へ行ってください。免除の申請も同時にできます。
- 保険料はいくらですか?
-
令和8年度は月17,920円です。国民年金は定額なので、収入が下がっても保険料は変わりません。会社員のときの厚生年金は給与に応じた額で、しかも会社が半分を負担していました。給与明細に書かれていた厚生年金の額は、実際に払われていた額の半分だと考えてください。辞めるとその折半がなくなります。
- 失業したら本当に免除されますか?
-
前年の所得は見ません。日本年金機構は「失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例」としています。必要なのは離職票か雇用保険受給資格者証のコピーです。ただし世帯主と配偶者の所得は審査の対象なので、実家に戻った場合は親の所得で判定されることがあります。
- 実家に戻ると免除が通りませんか?
-
世帯主である親の所得が基準を超えていると、免除は通らないことがあります。その場合は納付猶予を検討してください。50歳未満なら本人と配偶者の所得だけで判定されるので、世帯主の所得が外れます。ただし猶予の期間は将来の年金額に反映されません。受給資格期間には入るので、年金そのものが受け取れなくなるわけではありません。
- 免除と猶予はどちらがいいですか?
-
通るなら免除です。全額免除の期間は保険料を全額納めた場合の2分の1が年金額に反映されますが、猶予の期間は反映されません。国庫が半分を負担しているかどうかの差です。ただし所得の条件で免除が通らない場合は、猶予でも未納よりはるかにましです。猶予でも受給資格期間には入るからです。
- 払わないで放置するとどうなりますか?
-
いちばん避けたい状態です。未納の期間は受給資格期間にも入らず、年金額にも反映されません。将来の受給資格は原則10年の期間が必要なので、未納が長く続くと受け取れなくなる可能性もあります。督促や差押えの対象にもなります。払えないなら未納ではなく、免除か猶予を申請してください。同じ「払っていない」でも扱いがまったく違います。
- あとから払えますか?
-
免除や猶予を受けた期間は、10年以内なら追納できます。収入が戻ってから納めれば年金額は満額に近づきます。ただし3年度目以降に追納すると加算金がつくので、早いほど安く済みます。未納のまま放置した期間は原則2年しかさかのぼれないので、この点でも免除の申請をしておくほうが有利です。
- さかのぼって申請できますか?
-
できます。保険料の納付期限から2年を経過していない期間が対象で、申請した時点から2年1か月前までさかのぼれます。数か月放置していても間に合う可能性があります。すでに督促が来ている場合でも、免除が承認されればその期間の納付義務がなくなります。「もう遅い」と決めずに、窓口で確認してください。
まとめ:未納ではなく、免除を申請してください
要点を整理します。
- 切替の期限は退職の翌日から14日以内。市区町村の年金の窓口へ
- 保険料は月17,920円(令和8年度)。会社が半分出していた分がなくなる
- 失業による免除は、前年の所得を見ない。離職票か受給資格者証のコピーで足りる
- ただし世帯主と配偶者の所得は見られる。実家に戻ると通らないことがある
- 全額免除は年金額の半分が反映される。猶予は反映されない
- 未納がいちばん不利。 受給資格期間にも入らない
- 申請は2年1か月前までさかのぼれる
払えないことより、手続きをしないことのほうが損をします。


